商品やブランドの魅力を正確に伝えるには、情報量の多い高画質の画像を豊富に使用するのは効果的です。一方で高画質な画像データは容量が大きくなることから、多用しすぎると読み込みが遅くなりユーザーが離脱しやすくなる原因となり得ます。
また、画像ばかりで情報が少ないサイトは、検索エンジンの表示順位に悪影響を及ぼす可能性もあります。コンバージョン率や顧客満足度を向上させるためにも、こうしたリスクを抑える画像の最適化は欠かせません。
この記事では、画像を最適化する方法やコツについて紹介します。画像最適化のメリットや役立つツールについても解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
画像最適化とは

画像最適化とは、ウェブサイト上で使用する画像を「見やすく」「容量を軽く」「SEO対策を向上させる」ように調整することです。画質は維持しながら画像そのもののファイルサイズはできる限り縮小させ、サイトのパフォーマンス向上を目指します。ほかにも、画像にわかりやすいファイル名を付ける、画像の代替テキストであるalt属性(altタグ)を適切に設定するといった対策も含まれ、ウェブサイトにおける顧客体験と利便性の向上へ密接につながる重要な施策といえます。
画像を最適化する理由

サイトスピード改善
高画質の画像を多用するサイトは、画像を最適化することにより、サイトスピードの改善が可能です。特にEC撮影においては、商品の全体画像や詳細、使用感のわかるものを何枚も用意することが多く、画像の容量が大きいことでサイトスピードが遅くなりやすい傾向にあります。サイトスピードが重要な理由は主に以下のものが挙げられます。
- コンバージョン率向上を狙える:動作が速いサイトはコンバージョン率が高い傾向にあります。ユーザーの離脱を避け、ECサイトの購入率を上げることにもつながります。
- 良い顧客体験が提供できる:スムーズに閲覧できるサイトは、閲覧する際のストレスが少ない良い顧客体験を提供できます。顧客が安心して様々なページを閲覧できることは、リピーター獲得にも重要です。
SEO対策
画像の最適化は、SEO対策としても重要な施策のひとつです。画像の概要がわかるファイル名やalt属性を設定することで、検索エンジンが画像の情報を把握できるようになり、検索結果に表示されやすくなります。画像検索からのサイト流入も期待できるでしょう。
また、画像のデータ容量を軽くすることもSEO対策に効果を発揮します。Google(グーグル)公式が発表している通り、モバイル検索のランキング要素にページ読み込み速度が含まれていることから、ページの読み込み速度の改善はSEO評価を上げることにもつながります。
サーバー負荷の軽減
大量の画像を扱うサイトや、商品画像を数多く扱うECサイトの場合、画像の最適化によりサーバー負荷を軽減することができます。ユーザーに商品の特徴やポイントを伝えるために高画質の画像を多用していれば、サーバーの容量をより大きなものへとアップグレードする必要もでてきます。運営コストを抑えるためにも、あらかじめ画像のサイズや容量を軽量化しておくことが重要となります。
データ通信量の削減
総務省の「令和5年通信利用動向調査ポイント」によると、インターネット閲覧時の利用機器はスマホが72.9%、タブレット型端末が25.5%と、モバイル端末からのアクセスが増加しており、モバイル環境でサイトを閲覧するユーザーのアクセシビリティへの配慮はますます重要となっています。モバイル環境では通信環境が安定していないこともあるため、画像の最適化を行っていないと表示速度が遅くなる傾向にあります。また、データ通信量が多すぎるとユーザーに不信感を与えるきっかけになることもあります。
画像を最適化する7つの方法とコツ

1. 適切なファイル形式を選ぶ
画像が写真なのかイラストなのか、背景の透過やアニメーションの有無などにより、画質を落とさずに効率よく圧縮できるファイル形式は異なります。ウェブサイトで使用する主なファイル形式は以下の通りです。
JPG/JPEG(ジェイペグ)
JPG/JPEGは、デジタル画像に広く使用されているファイル形式です。ファイル容量が比較的軽いうえに1,680万色の表示が可能なことから、高画質な画像にも活用されます。一方で、データが部分的に失われる非可逆な圧縮処理が行われるため、画像のサイズを変更した際などに画質が低下したりノイズが現れたりすることに注意が必要です。
- 拡張子:.jpg、.jpegなど
PNG(ピング)
背景が透明または半透明な画像やイラストを保存する際に使用されるPNGは、1,600万色に対応しており、背景が透明なロゴやグラフ、チャートなどによく使用されます。また、圧縮の際にデータが失われないため、高精細なグラフィックを掲載する際にも適しています。
- 拡張子:.png
GIF(ジフ)
GIFは、はっきりとした線や色の画像を表現するのに適した形式です。対応色は256色と少ないため、高精細の写真には向いていません。一方で、複数の画像を結合して単純なアニメーションを表現できるという大きな特徴があります。
- 拡張子:.gif
WebP(ウェッピー)
2010年にGoogleが開発した、比較的新しい画像のファイル形式です。ウェブ上で使用することを前提としており、画質を保ちながら容量を小さくできるという特徴を持ちます。背景の透過やアニメーションにも対応しているため、効率良くファイル容量を小さくしたい場合に適しています。ただしWebP非対応のブラウザもあるため、使用時は注意が必要です。
- 拡張子:.webp
2. 簡潔でわかりやすいファイル名にする
画像のファイル名も最適化を行う上で重要な要素のひとつです。ウェブサイトの情報を収集する検索エンジンのクローラーは、画像の情報を取得しデータベース化しています。しかし、クローラーは画像の内容までを把握することはできないため、たとえば「IMG20251010.jpg」など意味のない文字列だけのファイル名では、検索結果に反映されません。そこで画像の内容を簡潔に説明したファイル名にすることで、検索エンジンがどの画像を検索結果に表示すれば良いかを判断しやすくすることができます。
3. alt属性を設定する
画像の代替テキストであるalt属性を設定すれば、ユーザーの利便性向上だけでなく、SEO対策にもなります。alt属性に入力した内容は、画像が表示されない場合にテキストが表示されたり、ウェブページの読み上げ機能を使っている時に読み上げられます。
また、前述の検索エンジンのクローラーはalt属性に設定された内容からも情報を取得しているため、SEO対策のためにも忘れずに入力することが重要です。
4. 画像サイズを縮小する
画像サイズが大きいとファイル容量も重くなり、サイトスピード遅延のリスクがあります。高画質にしたいからといって不必要に大きな画像ファイルをそのまま使用するのではなく、表示する場所に合わせて適切なサイズへ縮小させましょう。
サイズを縮小する際には、画質を落としすぎないよう注意が必要です。ファイル容量を軽くするために画質を犠牲にしてしまうと、商品やブランドの魅力が伝わりにくくなり、ユーザーも不便と感じてしまう可能性があるため注意が必要です。
5. 画像を圧縮する
適切な画像サイズに縮小ができたら、次に容量だけを小さくする圧縮という作業を行います。画像の圧縮には非可逆圧縮と可逆圧縮の2つの方法があります。
- 非可逆圧縮:データの一部を取り除くことで容量を小さくする圧縮する方法で、一度圧縮すると元の画像の復元ができません。容量を大幅に圧縮できる反面、画質の劣化も大きくなる傾向にあるため、調整しながら圧縮する必要があります。
- 可逆圧縮:保存の際には圧縮されていても、ブラウザなどで表示する際には元のデータに戻すことができる方式です。画質を落とさずに圧縮できる反面、非可逆圧縮に比べて圧縮率が低い傾向にあります。
一般に画像の圧縮には、画像編集ソフトを使う方法と画像最適化ツールを使う方法があります。編集ソフトでは、ファイル形式を指定して保存する際に圧縮率も設定することができます。画像を見ながら細かい調整ができるため、画質にこだわって圧縮したい場合に適しています。画像最適化ツールは特別な操作を必要としないため、初めて圧縮をする人も簡単に操作ができるでしょう。
6. CDNを利用する
CDNは、世界各地に分散された複数のサーバーに一時的に保存されるデータ(キャッシュ)を置いておき、地理的に最もユーザーに近いサーバーからデータを届ける仕組みです。物理的距離が短くなることにより表示速度が速くなるだけでなく、一か所のサーバーにアクセスが集中して表示速度が遅くなるといったトラブルを避ける効果も期待できます。
7. 画像の遅延読み込み設定をする
画像の遅延読み込み設定は、ユーザーに表示されている部分のみブラウザで画像を読み込むようにするものです。ページ全体を読み込んで表示する方法に比べて、より速くページを表示させることができます。特に画像を多く含むページの場合、遅延読み込みを設定していないとページを表示するまでに時間がかかってしまう可能性があります。
おすすめの画像最適化ツール
TinyPNG(タイニーピング)

TinyPNG(英語)は、無料で1度に20枚までの画像を圧縮できるツールです。サイトは英語で表記されていますが、ドラッグ&ドロップの単純な操作のため多くの日本人にも親しまれています。画質を落とすことなく画像の圧縮ができ、有料プランに加入すれば同時に圧縮できる画像枚数の上限がなくなります。
サルワカ道具箱

サルワカ道具箱は、「サルワカ」という生活に役立つ情報やインターネット知識を解説するサイトが提供する無料ツールです。サイト上で画像のサイズを変更したり、PNGをJPEGへ変換したり、さらにはJPEGやPNG画像をWebPに変換したりすることが可能です。画像サイズ変更機能では、縦横比を保ったままサイズを調整できるため、誤操作による変形を防ぐことができます。
Optimizilla(オプティミジラ)

Optimizillaは、画質の劣化を抑えながら圧縮ができる無料ツールです。圧縮したい画像をアップロードすると圧縮率が表示されるため、どの程度ファイル容量が圧縮できたかがひと目でわかるようになっています。圧縮率を調整することも可能で、画質と圧縮率のバランスを見ながら調整できるのが最大の特徴と言えるでしょう。
iLoveIMG(アイラブアイエムジー)

iLoveIMGは、画像のリサイズや画像の圧縮だけでなく、切り抜きや透かしなどさまざまな画像編集機能が使えるオンライン無料ツールです。ログインやアカウント作成をしなくても利用できるだけでなく、画質を維持しながら拡大する機能も付いています。
画像編集に慣れている人は、上記ツールを使用しなくても自分で画像編集ソフトから画像の最適化ができるでしょう。また、CMSを使っている場合、ウェブサイトやECサイトのプラットフォーム側が自動で最適化を行ってくれたり、画像最適化用のアプリやプラグインを入れることで自動化したりすることも可能です。
まとめ
画像最適化とは、ウェブサイト上で使う画像の質を維持しつつファイルサイズを最小限にすることを指します。また画像そのものだけでなく、閲覧するユーザーの利便性を考慮し、わかりやすいファイル名やalt属性を設定するといったことも含まれます。
画像最適化を行うと、ウェブサイトのサイトスピードの改善が見込めるほか、SEO対策としての効果も期待できます。画像の最適化を行う際には、適切なファイル形式を選ぶだけでなく、画像によってはサイズを縮小させたり、圧縮したりすることも検討しましょう。無料で画像最適化に活用できるツールも紹介していますので、この記事を参考にウェブサイトの画像最適化を行い、コンバージョン率向上やトラフィック増加を目指しましょう。
画像の最適化に関するよくある質問
画質を維持したまま画像を最適化する方法は?
可逆圧縮を行うと、画質を維持したまま画像を最適化しやすくなります。非可逆圧縮の場合、高圧縮してしまうと画質が劣化するため、圧縮の際は少しずつ調整しながら行うと良いでしょう。画像編集ソフトを使って最適化をすることもできますが、アップロードするだけで画質を維持したまま画像を圧縮してくれる画像最適化ツールもたくさんあります。
画像の最適化におすすめのツールは?
- TinyPNG(タイニーピング)
- サルワカ道具箱
- Optimizilla(オプティミジラ)
- iLoveIMG(アイラブアイエムジー)
Shopify(ショッピファイ)で使う画像も最適化すべき?
Shopifyでは画像をアップロードする際に自動で最適化してくれるため、画像そのものの圧縮やリサイズと言った作業は必要ありません。ただし、アップロード時には画像のファイル名と、alt属性を正しく設定する必要があります。
画像の最適化で画質が悪くなってしまった場合の対応策は?
AIを使った画像高画質化ツールを使って画質を改善することができるかもしれません。以下のようなツールを活用して、画像の高画質化を試してみてください。
文:Masumi Murakami





