美容通販は成長し続けています。まずは数字を見てみましょう。2023年に日本のオンライン美容市場は約1兆2,900億円のEC売上を生み出すと予測されました。この数字は、2026年には1兆4,100億円を超える見込みです。
最近の調査によると、世界のヘルス・美容カテゴリーにおけるEコマース売上は、2027年に67兆円に達すると予測されています。スキンケア、ヘアケア、グルーミング、フレグランス、生理用品など、美容ブランドにとって多くの機会が待っています。
次に何に注力すべきか迷っている方のために、この記事では成功している美容通販サイトの9つの事例を詳しく見ていきます。大きなマイルストーンを達成するために彼らが使用しているツール、戦略、ミッション、製品をご紹介します。
美容通販サイトのベスト事例9選
1. Hismile:インフルエンサーが牽引するグローバルEコマースの巨人
Hismileは、世界的なヒットとなったホワイトニングキットで知られるブランドです。2014年に2人の創業者が2万ドル(約300万円)を投じてスタートし、わずか6年で2億ドル(約300億円)規模の売上へと成長させました。
立ち上げ初期のHismileは、オーストラリアのマイクロインフルエンサーとのコラボレーションを通じて成長し、やがてカイリー・ジェンナーやケンダル・ジェンナーといったセレブリティとのパートナーシップへと発展していきました。
「こうした大物インフルエンサーにアプローチする前に、ビジネスの他のすべての要素が100%で回っている状態でなければなりません」と、Hismileの共同創業者ニック・ミルコビッチ氏はCollabstrのインタビューで語っています。
Hismileの成長に伴い、常時2,000人ものブランドアンバサダーが製品を宣伝する体制が整いました。さらにInstagramやSnapchatでの有料広告も組み合わせることで、Hismileのウェブサイトは「すべての人が快適に使える」状態であることが必須条件となったのです。
それは、単に大量アクセスに耐えられるというだけでなく、どの国・地域から見てもデザインや表示が最適化されている必要がある、という意味でもあります。Hismileは時間をかけて、6つのストアフロントを構築し、それぞれで異なる通貨や配送条件に対応するグローバルEコマース戦略を実装しました。

配送情報ページも、情報過多や混乱を避けるよう設計されています。訪問者の国を自動検出し、その国に応じた価格と配送目安のみを表示することで、ユーザーにとってわかりやすい情報提供を実現しています。
Hismileは、世界の90%以上の国へ製品を出荷しつつ、主要市場での売上をさらに強化しています。
「当初は1つのウェブサイトでグローバル展開していましたが、オーストラリアドル、米ドル、ユーロ、英ポンドでそれぞれ商品を販売するようにしたところ、各市場での売上は10倍に伸びました」と、ニック氏は振り返ります。
2. ILIA Beauty:オンライン美容ショッピングを簡単にするツール
ILIA Beautyは、肌を守りながら本来の美しさを引き出す製品で知られるクリーンビューティブランドです。ILIAの製品は、SephoraやNordstromといった小売店でも販売されています。ILIAのCEOであるリンダ・バーコウィッツ氏はGlossyのインタビューで、「自社サイトを通じたD2C売上が、全体の約50%を占めている」と語っています。
これは、オンラインショッピング体験を楽しく、ストレスなくするために、意図的に取り組んできた結果です。ILIAでは、顧客が自分にぴったりの色を見つけられるよう、スキンティントシェードファインダー(英語)というツールを用意しています。自撮り写真をアップロードしてILIAのチームに色を選んでもらうこともできますし、シェードマッチの質問に回答して、自分で最適なシェードを見つけることも可能です。
シェードファインダーには、どのページからでも上部メニューから簡単にアクセスできます。また、関連する商品ページから直接開くこともできます。商品ページには「実際の使用イメージ」というセクションもあり、認証済み購入者が投稿した写真とレビューが掲載されています。
これにより、ILIAの顧客は、自分の肌タイプ、トーン、アンダートーン、悩みに合った製品を選べるだけでなく、その製品でどんな仕上がりが期待できるのかを、具体的にイメージできるようになっています。
ILIAがオンラインショッピング体験の向上に注力してきたことは、離脱率の低下や直帰率の改善につながり、ECとしての成功を支える大きな要因となりました。あなたのサイトでも、顧客の選択を助けるツールの導入や、実際の使用感が伝わるリアルなレビューや写真の掲載を検討してみてください。
3. Beauty Heroes:オンラインとオフラインで顧客を第一に考える
Beauty Heroesは、ヘルシーな美しさの発見をコンセプトにしたサービスブランドです。主力商品は、毎月特定のブランドの製品が届くサブスクリプションサービスで、会費は月額40〜59ドル(約6,000〜8,850円)ですが、毎月のボックスには少なくとも100ドル(約15,000円)相当のアイテムが含まれています。
今月の特集ブランドはトップページ上部で大きく紹介されており、「今すぐ参加」ボタンはページをスクロールしても常に表示されるようになっています。
会員になると、スキンケア、メイクアップ、ヘアケア、ライフスタイル製品など、美容ストア内のほぼすべての商品を15%オフで購入することもできます。
2019年、Beauty Heroesはオンラインで築いた事業をオフラインにも広げる決断をしました。北カリフォルニアにオープンした実店舗では、オンラインの美容サイトと同じキュレーション基準、成分へのこだわり、ブランド哲学をそのまま体現しています。
実店舗を構えるということは、顧客がどこで買い物をしても一貫した体験を提供するために、購買情報を効率的に管理する必要があるということでもあります。

「私たちの大きな要件は、顧客がオンラインでも店舗でも買い物でき、かつ1つのプロファイルで管理できるようにすることでした」と、Beauty Heroesの創設者兼CEOであるジーニー・ジャーノット氏は語ります。同社は現在、Shopify
POSを活用し、顧客プロファイル、購入履歴、連絡先情報を一元管理しています。
こうしたキュレーション型のサブスクリプションとオムニチャネルでの展開により、Beauty Heroesは高い顧客ロイヤルティとリテンションを実現しています。
4. 100% PURE:顧客フィードバックと報酬制度の活用
100% PUREは、天然・オーガニック化粧品を扱う小売ブランドです。米国に2つの実店舗を構え、30か国以上でグローバルにEコマース展開を行っています。
100% PUREのウェブサイトは顧客のお気に入りに焦点を当てています。具体的には、レビュー数が多い商品、受賞歴のある商品、購入数の多い商品などを前面に押し出しています。
100% PUREは、ロイヤルカスタマーへの報酬にも積極的です。エステティシャンやメイクアップアーティスト向けのPurist Proプログラムでは、ほとんどの製品を35%オフで提供し、新商品の発売に優先的にアクセスできる特典も用意しています。また、Purist Perksロイヤルティプログラムには、季節ごとのお得なキャンペーン、誕生日ギフト、送料無料、購入金額に応じて貯まるポイントなどが含まれます。

実店舗と国際ECの両輪によって、同社は「誰にとってもストレスのないショッピング体験」を実現することを目標としています。その中でも、国と言語・通貨を簡単に切り替えられる仕組みが大きな役割を果たしています。
さらに、ウェブサイトの表示速度が速いこと、在庫が正しく同期されていること、商品情報が常に最新であることも欠かせません。
そこで同社はShopifyを導入し、大きな改善を実現しました。「Shopifyは、各国の顧客向けポータルとして機能し、非常に効果的なプロモーションをカスタムコーディングで実装できるようにしてくれました」と、100% PUREの共同創設者兼CEOであるリック・コスティック氏は語ります。
顧客レビューやフィードバックを重視する姿勢と、スムーズなEコマース運営。この2つを組み合わせたことが、100% PUREの大きな成功要因となっています。
5. The Skin Nerd:教育を第一に、製品を第二に
The Skin Nerdは、スキンケアに特化した総合プラットフォームで、教育、厳選されたブランド、オリジナル製品の提供を柱としています。
ウェブサイトでは、肌悩みを改善したい人が求める「ヒント」と「製品」への入口がわかりやすく整理されています。具体的には、スキンコンサルテーション、The Skin
Nerdの書籍、教育記事(「スキンフォメーション」と呼ばれるコンテンツ)、最新製品などが主要エリアとして配置されています。
The Skin Nerdは、「教育ファースト」の姿勢を貫くEコマース企業の代表例です。Aboutページには、「The Nerd Networkは、世界初のオンラインスキンコンサルタンシーである可能性があります」と説明されています。提供しているサービスには、初回およびフォローアップのスキンコンサルテーション、ブライダルブートキャンプ、妊娠中のスキンコンサルテーション、ティーン向けスキンコンサルテーション、デモデーなどが含まれます。
コンサルテーションを予約した顧客は「Skin Nerd Network」のメンバーとなり、限定コンテンツやイベントへの招待、長期的なスキンケアのサポートを受けられます。
コンサル後には、The Skin Nerdの自社ブランド「Skingredients」を含む数十のブランドから、顧客ごとにカスタマイズされた推奨製品リストが提供され、そのすべてをThe Skin Nerdのオンラインストアから購入できる仕組みになっています。
6. Beard & Blade:無料返品を「究極の品質保証」に
Beard & Bladeは、オーストラリア発のメンズグルーミング用品専門の小売ブランドです。2007年の創業以来、30万人以上の顧客にサービスを提供し、シェービング、ヘアケア、ひげケア、フレグランスなどの製品を扱っています。
Beard & Bladeが重視しているのは、「分かりやすく、スピーディな」オンラインショッピング体験です。午後3時までの注文は当日発送され、希望すれば支払いからわずか15分で、ビクトリア州クレイトンにある倉庫で商品を受け取ることもできます。
このような顧客体験へのこだわりを象徴しているのが、「注文日から1年間の無料返品」という大胆な保証です。
「私たちは、ラインナップを増やすためだけに商品を増やしているわけではありません。ヘア、シェービング、ひげケアといった、私たちがもっとも得意とするカテゴリーに絞り込んでいます」と、Beard & Bladeの共同創業者マイケル・ムスカット氏はAustralia Postの取材に語っています。「だからこそ、取り扱うすべての商品が高品質であると自信を持って言えますし、創業当初から無料返品を提供することができたのです。」
さらに共同創業者のベン・チディアック氏は、同じくAustralia Postにこう話しています。「私たちのコミュニティは、必要なグルーミング用品はすべてBeard & Bladeで揃うと信頼してくれています。市場のリーダーであり、メンズグルーミングの権威として強い評判を築いてきました。顧客は、私たちとの接点や口コミを通じてそれを実感しているはずです。」
Beard & Bladeにとって、買い物のしやすさは、消費者としてもビジネスとしても欠かせない要素です。そのこだわり抜いた戦略は、確かな成果となって表れています。
7. Boie:強力なブランディングで勝負するミニマルな製品ラインナップ
Boieは、パーソナルケアとオーラルケア製品を扱うエコフレンドリーな小売ブランドです。オンラインストアは、印象に残るカラーパレットと、クリーンで余計な装飾のないデザインが特徴で、一目でBoieとわかる統一感のあるビジュアルになっています。
Boieの製品ラインナップは非常に絞り込まれており、オーラルケア、スキンケア、アクセサリー、バンドルの4カテゴリーのみ。しかも各カテゴリーあたりの商品数は4点以下です。各商品は、同じ6色展開で統一されています。
2018年、Boieの売上は110万ドル(約1億6,500万円)に達しましたが、コンバージョン率は業界平均を下回っており、オーガニック検索での存在感を高める必要がありました。。
そこで行った改善のひとつが、「一貫したブランディング」の徹底でした。もうひとつの施策は、ソーシャルプルーフ(社会的証明)の強化です。
「大きかったのは、サイトにレビュー機能を追加したことです。他のお客様のリアルな使用感を見ることが、コンバージョン率の向上にかなり役立ったと思います」と、Boieの共同創設者マヌエル・デ・ラ・クルス氏は語っています。
これらの戦略によって、Boieは1年以内に売上を100%伸ばすことに成功しました。明確なフォーカスと、それを支えるシンプルでわかりやすいウェブサイト構成により、収益目標を達成しつつ、「パーソナルケアを、よりサステナブルで地球に優しいものにする」というミッションにも忠実であり続けています。
8. Soft Services:自分の肌を好きになれるよう支援するリソース
Soft Servicesは、肌悩みを抱える人のために、製品やガイド、デジタルツールを提供しているブランドです。そのミッションは、この業界と世界における「物理的な廃棄物」と「デジタルなノイズ」の両方を減らすことにあります。
Soft Servicesチームは、自分たちを単なる「モノを作るブランド」や「企業」とは考えていません。自分たちの取り組みそのものを「サービス」と捉えており、それがブランド名の由来にもなっています。
Soft Servicesのウェブサイトは、型にはまらないレイアウトとデザインでひときわ目を引きます。
独自性は商品ページにも現れています。中でも特徴的なのが、その商品が「適している肌状態」と「適していない肌状態」のリストを明確に示している点です。
これは、Soft Servicesが運営するリソースMass Index(英語)とも連動しています。Mass Indexには、専門記事、ケア方法に関する情報、さまざまな肌状態のビジュアルライブラリが集約されています。
Mass Indexは、体のニキビや毛穴詰まりから、真菌感染症、乾癬に至るまで、幅広い肌状態について、スキンケア業界や医療分野の間に残された知識のギャップを埋めることを目的としています。
「体の悩みによって落ち込むのではなく、そこから力を得られるようになってほしいのです。それを、製品と、文化的タブーを打ち破ることによって実現したいと考えています」と、Soft Servicesの共同創設者レベッカ・ジョウ氏はByrdieの取材に語っています。
Mass Indexとブランドのミッションは、Soft Servicesの製品そのものよりも大きな存在です。ブランドサイトでは、次のように説明されています。「Mass Indexは、私たちのリサーチを記録し、それが自社製品でなくても、解決策を求める人々と共有するための場所として作られました。」
こうした取り組みによって、Soft Servicesは「肌悩みとその解決策」に関する信頼できる情報源としてのポジションを確立し、多くの人との間に強い信頼関係を築いています。
9. Blume:大胆なミッションで業界の常識に挑む
Blumeは、クリーンで肌にやさしい成分にこだわったスキンケア、ボディケア、生理ケア製品を展開するブランドです。セルフケアルーティンや毎日の習慣をアップデートしたい、あらゆる年齢の女性をターゲットにしています。
「100年以上ほとんどイノベーションが起きてこなかった業界に変化を起こし、真っ向から挑むためにBlumeを立ち上げました。私たちの79%は、母親と同じ製品を使っています」と、共同創業者のタラン・ガトロラ氏とバニー・ガトロラ氏はEcommerce Magazineに語っています。「つまり、若い頃に勧められたというだけの理由で、多くの人が時代遅れで、場合によっては問題を引き起こす可能性のある製品を使い続けているということなのです。」
Blumeの製品ラインには、ナチュラルデオドラント、オーガニックのタンポンやナプキン、クレイマスク、保湿クリーム、ニキビ用オイルなどのフェイスケアアイテムが含まれます。
各商品ページには、使用頻度、香り、対応する肌タイプ、使い方、主要成分(とその効果)、そして一緒に使うと相性の良いBlumeの他製品といった重要な情報が整理されて掲載されています。
Blumeは、生理やからだの悩みにまつわるスティグマをなくすことを目指しており、そのために、クリーンなプロダクトの提供だけでなく、タブーを壊し大切な対話を生み出す性教育コンテンツの発信にも力を入れています。
美容業界の最前線に立つ
クリーンな製品づくりや地球環境の保護、顧客教育、そして自分の体や使用する製品に前向きな気持ちを持ってもらうことまで、これらの美容通販ブランドとオンラインストアは、あなたの次の行動のヒントになります。美容はパーソナルなものだからこそ、カスタマージャーニーも一人ひとりに寄り添ったものにしていきましょう。
これらのインスピレーションあふれる事例に加えて、Shopifyストアを利用する8億7,500万人以上の買い物客データという、大規模な内部データセットから得られたインサイトを組み合わせることで、さらに強力な戦略を描くことができます。健康・美容業界は、総注文数のランキングでトップクラスの業界であるだけでなく、平均注文数で見ても、直販やアフィリエイトといった健康・美容に強い主要販売チャネルによって成長を後押しされています。
これは、主要トレンドと必要なツールやテクノロジーをまとめた、Shopifyの「Eコマース成長ガイド」に掲載された情報のほんの一部です。これらすべてを備えることで、持続可能な成長を推進する長期戦略を構築する準備が整います。





