小規模ビジネスは、利益率を損なうことなく、迅速かつ手頃な配送を実現するという課題に直面しています。配送の遅れは売上機会の損失につながることが多く、オンライン購入者の約半数が、配送予定の遅さを理由にカートを放棄しているとも言われます。消費者の90％以上は2〜3日での配送を標準と考えており、30％は当日配送を期待するようになっています。
配送は単なるコストや物流上の障害ではなく、カスタマーサービス向上の機会でもあります。購入者は、適正な配送料、正確な配送予定、丁寧な梱包を求めています。小規模ビジネスの経営者にとって最適な配送オプションとは、収益を守りながら顧客満足度を高めてくれるものです。
この記事では、小規模ビジネス向けの主要な配送ソリューション、人気の配送業者オプション（日本郵便やヤマト運輸など）、そしてサービス品質を犠牲にすることなく配送コストを削減するための戦略について解説します。
小規模ビジネスの配送で押さえるべきポイント
配送戦略を策定する際は、次の点を念頭に置きましょう。これらの要素は、配送コストや顧客満足度、あるいはその両方に影響を与える可能性があります。
配送料金と手数料
配送業者の料金には、基本料金に加えて、追加料金や燃料費が含まれている場合があります。配送業者と直接交渉して割引料金を獲得するか、Shopify配送のような事前交渉済み割引を提供する配送ソフトウェアを利用することで、配送費用を削減できます。
配送スピードとサービスレベル
顧客は、通常配送から即配まで、幅広い配送オプションを期待しています。標準的な配送スピードを無料で提供し、より速いオプションを有料で用意することも検討してみてください。利用する配送業者が、提示している配送日数やお届け予定をしっかり守れるかどうかも重要です。なお、すべての業者が週末や祝日にも配送するわけではない点にも注意しましょう。
荷物の重量とサイズ
ほとんどの配送業者は、荷物の容積と重量に基づく容積重量制を採用しているため、箱の中に余分な空間があるとコスト増につながります。各注文に適したサイズの梱包を行い、軽量な梱包材を使用しましょう。アパレル商品であれば、箱ではなく宅配ポリ袋を使うことで、容積とコストの両方を削減できます。
梱包材
適切な梱包材は商品を守るだけでなく、コストと顧客体験の両方に影響します。配送業者が提供する無料の配送資材を有効活用しましょう（例：日本郵便は定額配送用の箱を無料提供、ヤマト運輸はアカウント保有者に配送資材を無料提供）。ブランドの価値の一つがサステナビリティである場合は、環境に配慮した梱包を採用することで、その姿勢を顧客に示すことができます。
追跡と保険
主要な配送業者は、基本的な追跡機能と一定額までの保険を提供しています（例：日本郵便のゆうパックは標準で30万円まで補償）。顧客は追跡番号の提供を期待しているため、ECプラットフォーム上で追跡情報が自動送信されるよう設定しておきましょう。高額商品や特注品などに配送保険が必要な場合は、追加の補償を購入するか、第三者の保険会社の利用も検討できます。
国際配送
国際配送を行う場合は、関税や税金、海外取引手数料、税関申告書などが関わってきます。配送先の国ごとのルールや費用を事前に調査し、国際手数料を自社と顧客のどちらが負担するのかを明確にしておきましょう。顧客に予期せぬ費用負担が発生しないよう、チェックアウト時に関税を自動計算できる決済プロセッサーの利用も検討してみてください。
返品と返品物流
ECにおける返品処理の方法をあらかじめ計画しておきましょう。たとえば、荷物に返品用の送料前払いラベルを同封し、返金手続きの流れをわかりやすく説明しておくことで、顧客のスムーズな返品対応をサポートできます。「無料」返品のコストは自社負担になりますが、その分、顧客満足度が高まり、リピート顧客の獲得にもつながります。
小規模ビジネスに最適な配送オプション
ビジネスに最適な配送オプションは、荷物の重量やサイズ、配送先、求める配送スピードによって変わります。状況に応じて最も安い料金を確保するために、複数の配送業者を使い分けるのが最善だと考える小規模ビジネスもあります。
日本郵便
2025年1月時点で、日本郵便は日本のShopifyマーチャントに最も多く利用されている配送業者です。日本郵便は、国内で小型・軽量の荷物を配送する小規模ビジネスにとって最適な配送業者オプションのひとつです。30kg未満の商品に対して競争力のある料金を提供しており、無料集荷サービスも利用できます。国際配送については、国際小包やEMSなどのサービスで世界各国への配送に対応しており、2kg未満の小型荷物であれば、民間配送業者と比べてより経済的な場合が多くなります。
主な特徴：
- 郵便・配送サービス。日本郵便は幅広い価格帯と配送期間を提供し、追跡、保険、法人割引料金などの機能を備えています。
- オンラインラベルによる小規模ビジネス割引。日本郵便のオンラインツール（またはShopify配送）を通じてラベルを印刷すると、通常の窓口価格よりも安い割引料金が適用されるサービスがあります。配送量の多い企業は、さらなる節約のために日本郵便の法人契約を選択することもできます。
- 無料梱包材と集荷。日本郵便はゆうパック用の包装用品を販売しています。また、荷物を無料で集荷してくれます。
ヤマト運輸
ヤマト運輸は、国内配送における信頼性とスピード、国際航空配送で広く知られています。小規模ビジネス向けにも幅広いサービスを提供しており、コストを抑えた通常配送から、翌日配送保証のサービスまで柔軟に選択できます。小規模ビジネスでは、配送日時の指定・保証が必要な場合や、大型荷物の配送でヤマト運輸の料金が競争力を発揮する場合に、ヤマト運輸を選ぶことがあります。
主な特徴：
- 小規模ビジネス向け割引配送。ヤマト運輸は法人契約プログラムを通じて大幅な割引を提供しています。
- 迅速で保証された配送サービス。宅急便は全国で日時指定配送が可能で、中距離では日本郵便よりも早く届くケースが多く見られます。
- 定額料金と梱包の利便性。ヤマト運輸には宅急便コンパクトという専用BOXを使った定額制のサービスがあり、ビジネスアカウント向けには送り状ラベルなどの資材提供や集荷サービスも用意されています。
佐川急便
佐川急便は、時間帯指定配送における競争力のある料金と、充実した国際配送オプションで知られています。世界中の顧客に商品を届ける企業にとって、通関サポートや国際配送を円滑にする書類作成ツールを世界各国に提供しています。
主な特徴：
- 組み込み法人配送割引。無料の佐川急便法人アカウントを開設すると、発送量が少ない場合でも、各種サービスで自動的に割引運賃が適用されます。
- 速達と翌日配送の専門性。佐川急便は即日や翌朝の配達サービスを提供しており、飛脚宅配便ではおおむね2営業日以内のスピード配送に対応しています。
- 信頼性の高い通常配送。佐川急便の通常配送は、多くの地域で全国1〜3日程度で届き、時間通りの配送実績にも定評があります。土日配送も追加料金なしで利用できます。
DHL
DHLは国境をまたいで荷物を迅速に輸送できることで知られており、日本郵便やヤマト運輸、佐川急便よりも速く配送されるケースも少なくありません。提携を通じて国内配送サービスも提供していますが、特に輸出向け配送でよく知られています。ヨーロッパ、アジア、オーストラリア市場に注力するマーチャントにとって、DHLは非常に強力なサービスを提供しており、多くの国際配送先への配送日数は1〜3日と、非常にスピーディです。
主な特徴：
- グローバル速達配送。DHL Express Worldwideは、配送先の国でDHLが独自に通関手続きを行うため、配送が迅速化され、短いリードタイムで国際顧客に好印象を与えることができます。
- 小規模ビジネスアカウント割引。DHLの小規模ビジネス向けパートナーシッププログラムでは、配送量が増えるほど1個あたりのコストが下がるボリュームディスカウント型の料金設定が提供されています。
- 通関の専門知識とサポート。DHLは国際配送において、通関書類の作成サポートや通関手続きの代行を含めたサービスを提供しています。必要な書類についてアドバイスし、通関プロセスの大部分をDHL側で処理するほか、追加料金を請求する他社と異なり、通関仲介サービスを配送料金の中に含めている点も特徴です。
Shopify配送
Shopify配送は、小規模ビジネスが1か所で複数の配送業者の割引送料にアクセスし、そのままラベルを印刷できる組み込み型の配送サービスです。ストアをShopifyで運営している場合、Shopify配送を利用することでフルフィルメントワークフローを簡素化し、配送コストの削減にもつなげられます。日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便、DHLなどの配送サービスをひとつの屋根の下にまとめて管理でき、Shopify管理画面を離れることなく配送業務を完結できます。
主な特徴：
- 複数の配送業者とサービスを一箇所で。日本では日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便、DHL Expressなどを通じて配送でき、注文ごとに最適な料金を選択できます。Shopify配送は海外への配送も可能で、注文処理時に配送業者間の料金をその場で比較することもできます。
- 事前交渉済み割引。Shopify配送の大きなメリットの一つは、Shopifyが主要配送業者と事前に交渉して確保している割引送料です。こうした割引は自動的に適用されるため、個別の料金交渉や配送業者ごとのアカウント開設は不要です。
- 統一されたラベル印刷と追跡。Shopify配送はShopify管理画面をフルフィルメントの司令塔に変え、注文数が増えてきたときに特に力を発揮します。ラベルを購入すると注文は処理済みとしてマークされ、追跡番号が自動的に顧客へメール送信されるため、コミュニケーションがスムーズになります。複数注文のラベルを一括印刷できるほか、インターフェースから配送業者の集荷をスケジュールすることもできます。
配送コスト削減戦略
適切な配送業者とツールを揃えていても、配送は小規模ビジネスにとって大きな出費になる可能性があります。ここでは、コスト削減に役立つ3つの戦略をご紹介します。
すべての割引を活用
窓口での小売価格で配送していないか、今一度確認しましょう。窓口価格は、たまに荷物を送る個人向けの料金であり、ビジネス向けではありません。配送業者のインセンティブプログラムや配送ソフトウェア、利用可能なパートナーシップを活用して、送料を引き下げましょう。具体的には、発送量が増えたタイミングで配送業者の担当者と直接交渉したり、即座に割引が適用されるShopify配送のようなサービスを利用したりすることが挙げられます。
梱包の最適化
梱包は商品の保護だけでなく、無駄なスペースと重量を減らして配送料を下げることにもつながります。まずは箱や袋のサイズを見直すことから始めましょう。商品にぴったり合う（適切な緩衝材を入れた）パッケージを使い、容積重量を増やしてしまう大きすぎる箱は避けてください。不要な充填材（余分なエアキャップ、発泡スチロール、二重梱包など）は、重量と容積を増やす原因になるため、できるだけ減らしましょう。
また、よく使う重量のしきい値を意識して梱包を軽く保つことも有効です。たとえば、1kg以下に抑えることで日本郵便の定形外郵便料金を利用できたり、5kg以下にすることで通常配送でより良い料金を得られたりする場合があります。軽量の紙テープを使う、小さめのラベルにするなど、数十グラム単位の小さな工夫でも、何百件という配送が積み重なれば大きな差になります。
スマートな配送オプションの提供
顧客向けの配送オプションの構成方法も、最終的な配送コストに影響を与えます。よく使われる戦略のひとつが、送料無料となる注文金額のしきい値を設定することです。たとえば「7,500円以上のご注文で送料無料」といった形です。これにより、顧客はもう少し商品を追加しやすくなり（平均注文金額が増加）、自社が配送料を負担する際にも、十分な注文額（と利益率）がそのコストを吸収してくれます。配送でやや利益率が下がっても、追加で販売できた商品の利益でカバーするイメージです。
もうひとつの戦術は、国内に顧客基盤がある場合に、店頭受取や地域配送を積極的に案内することです。店頭受取や地域限定の自社配送・宅配便配送などを提供することで、これらの注文では配送業者への手数料を完全に回避できます。Shopifyには地域受取・配送の組み込みオプションがあり、簡単に設定可能です。顧客が自分で受け取ってくれる注文はすべて、送料の節約につながり、さらに対面での追加販売のチャンスにもなります。
小規模ビジネスにおすすめの配送サービスに関するよくある質問
小規模ビジネスにとって最も安い配送方法は何ですか？
日本郵便は通常、国内で5kg未満の軽量荷物を配送する小規模ビジネスにとって最も手頃な料金を提供しています。より重い荷物や時間指定が必要な配送については、法人アカウントを設定してヤマト運輸や佐川急便の割引料金を比較すると、距離や荷物サイズによっては、より適したオプションが見つかる可能性があります。
小規模ビジネスはどの配送業者を使用していますか？
多くの小規模ビジネスは、荷物のサイズや配送先、緊急度に応じて複数の配送業者を使い分けています。軽量な国内配送には日本郵便、より重い商品や配送日時の保証が必要な荷物にはヤマト運輸や佐川急便、国際配送にはDHLを利用するケースが一般的です。
Shopifyは小規模ビジネスの配送コスト削減にどのように役立ちますか？
Shopifyは、Shopify配送機能を通じて日本郵便・ヤマト運輸・DHLなどの割引送料を自動的に提供します。プラットフォーム上でチェックアウト時のリアルタイム料金計算ができるほか、配送ラベルも直接印刷できるため、別途送料ソフトウェアを導入したり、配送業者ごとに個別アカウントを開設したりする必要がありません。
