2025年12月1日、大阪のインターコンチネンタルホテル大阪にて、関西発のブランドと事業者を対象とした完全招待制イベント「Commerce Connect in Kansai」が開催されました。本イベントでは、ミキハウス様とワコール様という関西を代表する2つのブランドをゲストに迎え、Shopifyを活用したデジタル戦略と成長への取り組みについて、貴重な実体験を共有いただきました。
イベント概要
関西ローカルの事例とグローバル視点を交差させ、セミナーとネットワーキングを通じて本質的な対話を生み出すことを目的とした本イベント。Shopify Japanカントリーマネージャーの馬場道生によるオープニングキーノートに続き、2つの特別セッションが行われました。
ミキハウス×Shopify Special対談:「アクセス障害ゼロへの挑戦」
導入のきっかけと背景
三起商行株式会社のEC営業部・朝倉淳様は、約20年間にわたり自社ECや楽天市場を担当されてきました。2021年10月のShopify移管は、当時のECシステム提供企業がEC事業から撤退することとなり、新しいシステムを検討する必要が生じたことがきっかけでした。
新しいECシステムを検討する中で、パートナー企業からShopifyを強く推薦され、まずはキャンペーン特設サイトでテスト導入を実施しました。その結果、3万足の子ども靴を販売するキャンペーンにおいて、AM10:00の販売開始からピーク時には1分間で1,300件の注文が発生し、約30分で完売するという成功を収めました。
Shopify導入前の課題と導入後の劇的な変化
導入前、ミキハウスは大規模キャンペーン時のアクセス集中によるサーバー負荷に悩まされていました。この問題により想定売上が未達成となり、新規ユーザー獲得の機会を逸するだけでなく、悪いユーザー体験がリピート率の低下を招いていたのです。さらに、クレーム対応などの本来不要な業務が通常業務を圧迫する状況が続いていました。
しかし、Shopify導入後の変化は劇的でした。朝倉様は「1度もサーバーで問題が発生しなくなった」と明言されます。この技術的な安定性により、社内の意識にも大きな変化が生まれました。
「導入前と比べて、積極的にマーケティングに取り組めるようになりました。大規模なキャンペーンを躊躇なく企画できるようになり、回数が圧倒的に増えました。チームメンバーそれぞれのやりたいことのアイディアが増え、実行できるようになったのです」

Shopifyの豊富な機能活用
ミキハウスでは、Shopifyのデフォルト機能を最大限に活用しています。特に注目すべきは、さまざまな業務を自動化できる「Shopify Flow」とギフトカードシステムの導入です。朝倉様によると、自社で開発しようとすると相当な工数が必要な機能が、Shopifyにはデフォルトで装備されており、無料で使えることに驚かれたそうです。
さらに、サードパーティアプリを活用してe-ギフト機能や会員ランクシステムも実装しています。一から開発すると相当な工数が必要な機能も、各種サードパーティアプリで対応できます。興味深いのは、有効なアプリはShopifyが買い取ってデフォルト機能にする傾向があり、気がついたらデフォルト機能になっているという点で、Shopifyのエコシステムの進化の速さを実感されています。
正直な課題と総合評価
一方で、インフラは強固である一方でアプリ側の開発が一部で追いついていない部分がある点など、朝倉様は正直な課題についても率直に語られました。
しかし、「売り上げって本当に上がるのか?」という問いに対して、朝倉様は「確実に上がる。様々な施策を数多く実行できるので、導入前と比較すると大幅に事業が拡大している」と明言されます。導入前と導入後でマーケティング活動に大きな変化があり、開発コストの削減もできたとのこと。デメリットもしっかりあるものの、総じてリプレイスに対する満足度は非常に高いと評価されています。
ワコール:『世界のワコールの確立』に向けた海外展開戦略
グローバルミッションと成長戦略
株式会社ワコールホールディングスの原雅史様からは、同社のグローバル展開におけるShopify活用について詳しくお話いただきました。
ワコールのグローバルミッションは、商品・サービスを提供するその国・地域で最も信頼されるメーカーとなり、その地域の従業員が成長し働きがいを感じられる会社を目指しています。
そして、成長戦略は「EC事業の拡大」です。これまでワコールは実店舗でのコンサルティング接客を大きな強みとして取り組んできましたが、お客様の購買行動は変化し、ECの重要性は増々高まっています。それは海外市場においても同様で、その成長戦略を推進するうえでShopifyが重要な役割を担う、と考えられています。
アジア展開でのShopify活用状況
2025年よりアジアを中心にShopifyへのリプレイス開発を開始。ベトナム、香港はリプレイス完了し、シンガポールは開発中、フィリピン、マレーシアの順でリプレイスを進めています。
導入前の課題と決め手
ワコールがShopify導入を決断した背景には、2つの大きな課題がありました。まず、以前のシステムでは保守メンテナンスやサーバー費用などのランニングコストがEC売上規模に対して過剰になっていたこと。そして、サイトの利便性向上などのアップデートを行う際には専門的知見を持つ外部ベンダーへの委託が必要で、現メンバーでは扱いきることが困難だったことです。
これらの課題を解決するため、Shopifyの導入を決定しました。最大の決め手となったのは、以前のシステムと比較して1/3~1/4程度にランニングコストを抑制できる見込みがあったこと。加えて、現メンバーでも扱えるシンプルなシステム構造であり、決済面の改善やページ読み込み速度の向上などユーザビリティ観点でも改善が見込まれる点が評価されました。

具体的な活用方法と運営の工夫
ワコールでは、Shopify Plusプランを中核として複数国の自社ECを包括的に管理し、実績の分析や成功事例の水平展開をシームレスに実行できる環境の構築を現在進めています。また、先行してShopifyを利用するグループ内企業との連携強化についても今後進められる計画です。
また、生成AI(Shopify提供のSide Kick)も活用し、分析の精度向上と簡易化を図るとともに、バナーやコンテンツなどクリエイティブ面での活用も計画されています。
導入効果と成果
Shopify導入による効果は数値にも明確に現れています。CVRは大幅に改善し、ベトナムでは40%の向上、香港でも30%の向上を実現しました。また、詳細な顧客情報の把握が可能になり、RFM分析を通じてより精緻なマーケティング戦略を展開できるようになりました。
さらに、マーケティングオートメーションの導入により既存顧客向けのリソースを効率化し、その分を新規顧客向け施策へのリソース配分に回すことで、全体的なマーケティング効率の向上も実現しています。
今後の展望
今後の取り組みとしては、システムの一元化・簡易化を目指しています。Shopify POS展開可能国においては、Shopifyをハブシステムに据え、リアル店舗とECのシステム共通化を推進し、シームレスな情報管理体制 / お客様とのコミュニケーション体制の構築を計画しています。
まとめ:関西ブランドの次なる成長への示唆
今回のイベントでは、ミキハウス様とワコール様から、それぞれの実体験に基づく貴重なインサイトを共有いただきました。異なる業界・規模でありながら、両社が直面した課題とShopifyによる解決策、そして得られた成果について、率直にお話しいただいたことで、参加者にとって非常に学びの多い内容となりました。
特に印象的だったのは、両社とも技術的な安定性を確保することで、マーケティング活動により積極的に取り組めるようになったという共通点です。また、Shopifyの豊富な機能とアプリエコシステムを活用することで、開発コストを抑えながら高度な機能を実現している実例も、多くの示唆に富んでいました。
両社が惜しみなく共有してくださったリアルな体験談から、関西発のブランドが「次の成長」を掴むためには、安定した技術基盤があってこそ積極的なマーケティング活動に取り組めるという重要な学びを得ることができました。
ネットワーキングパーティでは、参加者同士やShopifyチームとの活発な交流が行われ、関西エリアでのコマース業界のさらなる発展への期待が高まる一日となりました。

Shopifyを活用したECサイトの構築や運営についてご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。





