オンラインショップで成功するためには、他社にはない強みを持つニッチ商品を扱うことが効果的です。ニッチ市場で高いシェアを確保できれば、売上や利益の安定化が期待できます。また、製品やサービスを通じて顧客の課題を解決したり、社会に貢献したりする点でも、ニッチ市場に特化することは有効な戦略です。
この記事では、ニッチ商品の見つけ方を具体的な手順とともに解説します。見つけるための実践的な方法や商品例も紹介するのでぜひ参考にしてください。
ニッチ商品とは

ニッチ商品とは、特定の客層への需要や特殊な用途・目的といった限定的なニーズがあるにも関わらず、まだ十分に満たされていない「隙間」を埋める商品のことを指します。限られた人や特定のニーズに向けた商品であるため、関心のない人にとっては購買の対象になりにくいことから、潜在顧客の絶対数が少なく市場が小さいという特徴があります。
本来「隙間」という意味を持つ「ニッチ(niche)」は、マーケティングの文脈では、「特定分野に特化し、大手が参入してこない小規模マーケット」や「ニーズがあるにも関わらず他社が進出していない隙間市場」といった意味で使われています。eコマースの分野でも、こうしたニッチ市場に特化することで成功を収めている例が少なくありません。
ニッチ商品を扱う主な目的は、競合が少ない市場で高いシェアと利益を確保しやすいことにあります。さらに、ターゲットを絞ることで製造や販促のコストを抑えられる点も魅力です。そのため、ニッチさだけに注目するのではなく、こうした目的に適した市場かどうかを見極める視点が重要です。
ニッチ商品を見つける方法:7つのステップ

1. 顧客課題の解決を考える
ビジネスの本質は、顧客の課題を解決し、その対価を得ることにあります。ニッチ商品を見つける際も、まず「その商品でどのような顧客課題を解決できるか」を考えることから始めます。
顧客課題を発見する確実な方法は、顧客の声を聞くことです。すでに何らかの商品やサービスを提供している場合、クチコミを確認してみましょう。顧客からの追加要望や不満は、出回っている定番商品にどんな課題があるのかを把握できるため、ニッチ商品を見つけるヒントになります。たとえば、自社のECサイトでスマートウォッチを取り扱っているとしましょう。クチコミ欄に70代の方から「文字が小さくて読みづらい」という声が挙がっています。この意見をもとに、シニア層向けスマートウォッチの販売を検討してみるのもいいでしょう。スマートウォッチは若年層向けのものが多いため、シニア層向けのスマートウォッチは特定のニーズが見込める可能性があります。
このように、顧客の声に注目することで、定番商品に潜む「隙間」を見つけることができます。また、自社に寄せられた声に限らず、ECモールなどに投稿された同業他社の商品に対する口コミや不満も、商品選定のヒントとして有効です。
一方で、まだ顧客の声として明確に表れていない潜在的なニーズについては、自ら想定していく必要があります。特に自社のビジネスに関連する領域では、日ごろからアンテナを張り、「どこに改善の余地があるか」を意識し続ける姿勢が重要です。ときには逆転の発想も取り入れてみましょう。たとえば、商品の仕様や用途を思い切って変えた場合に、「どんな顧客課題の解決につながるか」を考えてみることで、ニッチ商品の特定につながる可能性があります。
2. ニーズの有無を確認する
顧客の声に基づいた課題や要望であれば、一定のニーズが存在することは明らかです。しかし、自分で想定した顧客課題の場合は、そのニーズが実際に存在するのかを確認する必要があります。
最も手軽な方法は、想定した課題を表すキーワードでウェブ検索を行うことです。たとえば、左利きの子供用のはさみにニーズがあるのではないかと考えたとします。「はさみ 使いづらい 左利きの子供」といったキーワードを検索してみると、商品のクチコミや質問サイトなどで関連した投稿が見つかるかもしれません。こうしたキーワード検索は、想定した課題が実在するのかを確認するのに効果的です。
ウェブ検索以外にも、既存顧客へのヒアリングやアンケートを通じて、直接ニーズを確認する方法も非常に有効です。
3. 市場規模を予測する
投入を検討している商品やサービスに一定のニーズがあることを確認したら、次にその市場規模がどの程度あるかを予測します。いくらニッチ市場とはいえ、ビジネスとして成り立たないほど小規模な顧客層に向けて販売しても、十分な成果は期待できません。
ターゲット層を年齢や地域などで絞り込んでいる場合は、国勢調査や自治体の人口統計資料などを活用して、潜在顧客数を把握できます。この数に、一般的な購入頻度やサービスの利用頻度を掛け合わせることで、概算の市場規模を見積もることができます。
また、Googleトレンドに関連するキーワードを入力し、検索ボリュームの増減を調べることで、ニッチ市場の成長性を読み取ることも可能です。Googleトレンドは、特定キーワードの検索動向を地域別に表示できるため、市場の拡大傾向を判断したり、ヒット商品を予測したりする際に役立ちます。
4. 商品化の方法を検討する
顧客課題を解決するための商品を想定したら、それをどのように商品化するかを検討します。
自社のビジネスモデルによって、自社で商品を開発・製造するか、既存の商品を仕入れて販売するかに大きく分かれます。自社開発を行う場合は、想定した顧客ニーズにぴったりと合致した商品を作ることができますが、その分、人・モノ・カネといったリソースの投入が不可欠です。
一方、既存の商品を仕入れて再販する場合も、ニーズや市場をしっかりと調査し、売れるニッチ商品を特定・販売することで、競合が少ない市場でビジネスを展開できます。商品の見せ方や販売チャネルを工夫したり、コンテンツマーケティングを取り入れたりすると、他社との差別化が期待できます。
それ以外でも、商品の開発者が意図していなかった用途や使用方法を提案することで、新たな価値を生み出せることもあるでしょう。ただし、使用時の安全性や耐久性については、事前に十分な検証が必要です。
5. 収益性を予測する
ニッチ商品を選定する段階では、精緻な収益予測は必ずしも必要ありませんが、販売に踏み切るかどうかを判断するために、概算で収益性を把握しておくことは重要です。
まず、想定される商品の販売価格と、製造コストや仕入コストを仮定します。次に、市場規模と目標シェアをもとに販売数量を予測します。さらに、販売管理費などの諸経費も加味して、ニッチ商品による収益性を試算しましょう。
6. 販促方法を検討する
ネットショップを開業しECサイトなどの販売チャネルにニッチ商品を登録したら、次にプロモーションを行います。特定の顧客課題を解決することを目的としたニッチ商品では、商品の用途や、開発の背景にあるストーリーを顧客にしっかり伝えることが重要です。
プロモーションには、SNSの活用が非常に効果的です。たとえば、X(旧Twitter)は短い告知に向いており、Instagramは写真を活かしたビジュアル訴求に強みがあります。若年層をターゲット層にしている場合は、TikTokも効果的でしょう。特にInstagramやTikTokはショップ機能がついているため、かご落ちを防ぎながら購入までの導線を簡素化できます。
また、自社専用のECサイトであれば自由にページをカスタマイズできるため、新商品がどのように顧客課題を解決するかを、より詳しくアピールすることが可能です。Shopifyなら、さまざまなテーマのテンプレートを豊富に提供しているので、自社の世界観を反映した商品ページを簡単に作成できます。
7.リスクを検討する
ニッチ商品を販売するうえでの第一のリスクは、「商品が売れないこと」です。この場合、商品の準備にかかった費用や工数が無駄になってしまいます。たとえば、自社で製造する場合は設備投資が、他社製品を取り扱う場合は長期的な販売代理店契約が、それぞれ大きなリスクとなります。
このリスクを避けるには、スモールスタートを意識し、最初は小規模に販売を始めるのが安全です。在庫リスクを避けたり、設備投資などの事前コストを抑えたりするには、ドロップシッピングやオンデマンド印刷サービスの活用が効果的です。
第二のリスクは、「商品に問題が生じること」です。顧客課題の解決を目指して開発・販売した商品が、期待通りの機能を果たさなかったり、安全性に問題があったりすれば、販売不振以上の損失を招く可能性があります。このリスクを回避するには、予期しない使われ方も想定しながら、多くのテストケースを事前に検証することが重要です。また、ユーザーに対して正規の使用方法を文書で明確に伝えることも、有効なリスク対策になります。
ニッチ商品の実践的な見つけ方

ニッチ商品を見つけるための実践的な方法として、「顧客課題の解決」、「市場のセグメンテーション」、「製品のイノベーション」に分類し、これらの方法をベースにどのようにニッチな商品を特定できるのかを解説します。
顧客課題の解決
まず顧客が困っている問題点を発見し、その解決策を考えることからニッチ商品を見つけます。大きな問題点から派生して、さまざまなニッチ商品を発想することも可能です。
たとえば「猛暑対策」を顧客課題として想定してみると、次のようなさまざまなニッチ商品が考えられるでしょう。
男性用日傘
現状では日傘を使うのは圧倒的に女性が多く、男性用日傘はニッチな商品と言えます。男性が抵抗感なく使えるよう、装飾を抑えたシンプルなデザインや、晴雨兼用の日傘が良いでしょう。
デザイン性の高い空調ベスト
デザイン性を取り入れた空調ベストは、暑さ対策をしながらスタイリッシュにコーディネートできるため、これまでリーチできなかった若年層や女性の顧客を獲得できるニッチ商品です。カラーバリエーションを豊富にしたり、コーディネートの例を紹介したりするなど、工夫をこらすことで購買意欲を高めることができます。
夏冬兼用ネッククーラー
今や夏の定番アイテムとなったネッククーラーですが、暖房機能も搭載された商品も登場しており、一年中利用できるのが特徴です。大容量バッテリーや強力ファン、AI機能が搭載されたハイエンドタイプもあり、価格よりも利便性や機能性を重視した層向けのニッチな商品として展開できる可能性があります。
市場のセグメンテーション
ニッチ商品を生み出すためにターゲット市場をセグメント化するのも有効です。以下のような切り口で考えてみることで、ニッチ商品を特定できる可能性があります。
- 個人向け、法人向け
- 性別(男性向け、女性向け、ジェンダーレス)
- 年代(子供向け、学生向け、大人向け、高齢者向けなど)
- 地域(特定地域、都市部、地方など)
- 職業(会社員、公務員、個人事業主など)
- 価値観(高級志向、大衆向けなど)
ここでは、洗濯機という大きな商品カテゴリーを例に、ターゲット層のセグメンテーションによって市場をニッチ化してみましょう。
シニア層向け洗濯機
シニア層向けに設計された洗濯機は、衣類の出し入れ時の身体的負担の軽減や、操作のわかりやすさを重視しています。シニア層の単身世帯が増加していることを考えると、今後ますます注目を集めるニッチ商品と言えるでしょう。
一人暮らし向け洗濯機
一人暮らし向けの洗濯機はカテゴリーとしては一般的ですが、静音性や乾燥機能、女性向けのデリケート洗浄機能、おしゃれなデザインなど付加価値が高い商品は、さらに細かいセグメントに対応するニッチ商品として展開できる可能性があります。
ミニ洗濯機
汚れがひどい衣類を分けて洗えるミニ洗濯機は、子育て世代に一定のニーズがあると想定できます。子供服やベビー服に限らず、マスク、ペット用品、上履き、雑巾など「少量だけ別に洗いたい」というニーズに応える、ニッチ商品として展開できる可能性があります。
製品のイノベーション
自社製品を販売している場合、既存商品の仕様・特性を大胆に変えることで、これまでになかった特定のニーズを生み出すことができる可能性があります。商品のサイズ、素材、価格、品質、機能、デザイン、パッケージングなどを切り口として、仕様・特性が変更できないかを検討してみましょう。
商品特性の大幅な変更でイノベーションを起こしたニッチ商品には、次のようなものがあります。
- サイズの変更:既存の扇風機を極端に小型化した「ハンディファン」
- 価格の見直し:安価な商品を高級化(高級ティッシュ)、高級品を低価格で提供(回転寿司)
- 機能数の変化(単機能化または多機能化):温め直しに特化した単機能電子レンジ、多機能な4色ボールペン
- 本来の機能を削除:意図的に機能を削除した「消せるボールペン」
- 耐久性や消耗性の変更:長寿命のLED電球、使い捨て前提のカメラ
このように、製品の一部の特性を少しだけ変えるのではなく、極端に変化させることがイノベーションの出発点になります。まずは机上で「思い切って変えたらどうなるか」をシミュレーションしてみてください。
ニッチ商品の例

注目を集めるニッチ商品の具体例を、カテゴリー別にご紹介します。
サステナブルな商品
- 折り畳み式タンブラー
- オーガニック洗剤
- 金属製ストロー、ガラス製ストロー
気候変動や生態系の破壊、資源の枯渇といった問題を受け、環境に対する世間の関心は今後もさらに高まっていくと見込まれます。サステナブル(持続可能)な商品は、繰り返し使える、リサイクル可能、天然素材を使用、省エネ設計といった特徴を持ち、環境への配慮を心がけている一定の消費者から根強いニーズがあります。
ペット関連商品
- 介護用品
- 健康食品
- デンタルケア商品
日本では犬・猫の飼育数が15歳未満の子供の数を上回るなど、ペット市場は現在も拡大を続けています。ペットを「家族の一員」として捉える人が増えており、その意識の高まりが商品ニーズにも表れているのがわかります。これまで人間向けだった製品カテゴリーをペット用に置き換える発想は、ニッチ商品の開発・販売において効果的と言えるでしょう。
子供向け商品
- ジェンダーレスのランドセル
- プログラミング玩具
- アレルギー配慮食品
少子化により子供の数は減少していますが、一人の子にかける教育費や生活関連支出は増加傾向にあります。また、多様性を重視する社会的な流れも追い風となり、個性や関心に応じた子供向けのニッチ商品には大きな可能性があります。
メンズ向けスキンケア商品
- 化粧水・洗顔などの基礎化粧品
- 日焼け止め
- 美容液やパック
メンズ向けスキンケア市場は、女性向けコスメ市場と比べると小規模なものの、現在注目が高まっているニッチ市場です。自分磨きの一貫としてスキンケアを実施している男性が増えているほか、SNSやインフルエンサーの影響も大きいと考えられます。
まとめ
特定の客層や用途・目的・趣味に特化したニッチ商品は、競合が少ない市場で高い利益を追求できる可能性を秘めています。ニッチビジネスを成功に導くには、顧客課題の解決や市場のセグメンテーションを糸口として、一定のニーズが見込める商品を特定することが鍵となります。
自社のECサイトでニッチ商品を販売したいと考えている場合、商品準備にかかるコストなど、リスクとなり得る要因を事前に検討しておきましょう。ドロップシッピングを利用するなど、事前コストを抑えながらビジネスを運営するのもひとつの手です。その場合、ドロップシッピングで売れるニッチ市場を見つけることが大切です。
Shopifyでは顧客セグメンテーション機能を提供しており、ECショップに蓄積された顧客データを基に、より効果的な販売施策を展開できます。顧客の属性や行動データに応じたフィルターを設定することで、マーケティング戦略に沿ったターゲットセグメントを構築し、タイムリーかつパーソナライズされたメール配信で購入促進につなげることが可能です。
ニッチ商品の見つけ方に関するよくある質問
ニッチ商品とは?
ニッチ商品とは、特定の客層への需要や特殊な用途といった限定的なニーズがありながらも、十分に満たされていない「隙間」を埋める商品を指します。競合が少ない市場に特化することで高いシェアを目指すことができます。
ニッチ商品を見つける手順は?
- 顧客課題の解決を考える
- ニーズの有無を確認する
- 市場規模を予測する
- 商品化の方法を検討する
- 収益性を予測する
- 販促方法を検討する
- リスクを検討する
ニッチ商品の例は?
- サステナブルな商品(折り畳み式タンブラー、オーガニック洗剤、金属・ガラス製ストローなど)
- ペット関連商品(介護用品、健康食品、デンタルケア商品など)
- 子供向け商品(ジェンダーレスのランドセル、プログラミング玩具、アレルギー配慮食品など)
- メンズ向けスキンケア商品(基礎化粧品、日焼け止め、美容液・パックなど)
ニッチ商品のアイデアを得るコツは?
ニッチ商品のアイデアを得るには、顧客課題をどう解決するかを探ったり、セグメンテーションにより市場を細分化したりする方法が効果的です。また、製品特性を大胆に変えるイノベーションの視点を持つこともひとつの手です。
文:Norio Aoki





