オンライン販売が当たり前になった今、どの「販売チャネル」を活用するかが売上に大きく影響します。自社サイトだけでなく、モールやSNS、実店舗との連携など、チャネルの選び方次第で顧客との接点も広がり、機会損失を防ぐことが可能です。
この記事では、EC事業者が押さえておきたい販売チャネルの種類と、それぞれの特徴・活用ポイントそしてチャネルの増やし方を実例と共に解説します。
販売チャネルとは

販売チャネルとは、商品、サービスを販売するための経路や方法のことを指します。ECにおいては、自社オンラインストア、AmazonなどのECモール、SNS、実店舗、さらにはポップアップストアやイベント販売など、さまざまなチャネルが存在します。
それぞれのチャネルには特徴や強みがあり、ターゲットや商材によって最適な組み合わせは異なるため、複数のチャネルを組み合わせたマルチチャネル販売が好まれています。
販売チャネル一覧

1. 自社ECサイト
消費者に直接販売(D2C)することができる直販の自社ECサイトは、ブランドが独自に構築・運営するオンラインストアです。Shopifyなどのサービスを使って開設される、ブランドに合ったデザイン、ターゲットに合ったコンテンツなどすべてを自由に設計できるのが最大の強みです。
また、購入履歴やアクセス状況などの顧客データを自社で蓄積・活用できるため、リピーター施策や購入履歴に基づいた商品のレコメンドが可能になります。他のチャネルに比べて初期集客には時間がかかるものの、中長期的にブランド力と収益性を高めやすいチャネルとして位置づけられます。
2. モバイルアプリ
モバイルアプリは、顧客のスマートフォンに直接インストールされる販売チャネルです。アプリ経由での購入は、アクセス性が高く、リピート率が向上しやすいという特徴があります。プッシュ通知を活用すれば、キャンペーン情報や新商品の告知を即時に届けることができるため、メールよりも高い反応率が期待できます。
また、アプリ限定クーポンやポイント制度を組み合わせることで、ファンとの関係構築や囲い込み施策にもつながります。一方で、開発や保守には一定のコストと技術が必要なため、既存顧客の規模や購入頻度が見込める場合に効果的です。
中長期的にロイヤル顧客を育てたいブランドにとって、有力なチャネルの一つです。
3. メーカー直販の小売店
メーカー直販の小売店は、自社ブランドが直接運営する実店舗やショールームのことを指します。オンラインだけでは伝えきれない商品の質感、サイズ、使用感を実際に体験してもらえるのが最大の強みです。
スタッフとの対話を通じてブランド理解を深めてもらいやすく、高単価商品や説明が必要な商品との相性も良好です。また、オンラインとの連携(例:店頭受け取り、来店予約、会員情報の連動)を行うことで、オムニチャネル戦略の中核として機能します。
初期投資や運営コストはかかりますが、顧客との信頼関係を築き、ブランド価値を高める場として活用できます。
4. SNS経由の販売
SNS経由の販売とは、Instagram(インスタグラム)、TikTok(ティックトック)、Facebook(フェイスブック)、Pinterest(ピンタレスト)などのプラットフォーム上で商品を紹介・販売することです。ユーザーとの距離が近く、投稿やストーリーズ、ライブ配信を通じて自然に購買へつなげられるのが大きな魅力です。
近年は、InstagramショッピングやLINEミニアプリ、TikTok Shopなど、SNS内で完結する購入機能も充実しており、スムーズな購入体験が実現されています。また、フォロワーやファンとの継続的なコミュニケーションによって、ブランドロイヤルティを高めやすいという利点もあります。
SNS経由の収益に関する調査(英語)によると、SNSプラットフォーム経由での購入は増加しています。2023年のSNSプラットフォーム経由での総売上高は全世界で5,700億ドルでしたが、2028年には1兆1,000億ドルに達すると見られています。
5. ECモール
ECモールは、Amazon、楽天市場、Etsy(エッツィ)、eBay(イーベイ)などの大手オンラインマーケットプレイスに出店して販売するチャネルです。最大の利点は、すでに大量のユーザーが集まっている集客力の高さで、新規顧客との接点を短期間で得やすいのが特徴です。
価格やレビュー、ランキングなどの要素を重視する顧客が多く、比較検討中のユーザーにリーチしやすいという点でも優れています。また、販促イベントや広告枠を活用することで、露出の拡大や売上の加速も期待できます。
一方で、競合が多く、価格競争に巻き込まれやすいことや、顧客データの取得・活用が限定的である点はデメリットです。自社ECと並行運用し、顧客獲得の入り口として活用する戦略が有効です。
6. 卸売店
卸売店は、商品を小売業者にまとめて販売し、その小売業者が最終顧客に販売するというBtoB型の販売チャネルです。メーカーによっては、卸売店を唯一の販売チャネルとする場合もあれば、オムニチャネル販売戦略の一手段として活用する場合もあります。自社で直接販売するのではなく、流通パートナーを通じて販売網を広げられるのが大きな特徴です。
一度にまとまった数量で取引ができるため、在庫の回転率向上や売上の安定化につながるメリットがあります。また、販路拡大や地域展開を加速したい場合にも有効です。
その反面、ブランドや価格設定が難しくなることや、マージン率が下がる点には注意が必要です。信頼できる取引先を選定し、契約条件や販売方針を明確にすることが重要です。
7. リセラー経由販売
リセラー経由販売とは、自社商品を第三者の販売代理店「リセラー」に提供し、そのリセラーが顧客に再販する形態の販売チャネルです。ECモール出店者やセレクトショップ、インフルエンサーが運営するオンラインストアなどがリセラーになることもあります。
リセラーの販売力や既存の顧客基盤を活用できるため、自社ではリーチできない市場や層への拡販が可能です。また、自社のリソースを抑えながら販路を拡大できるのも利点です。
一方で、販売価格やブランディングの管理が難しくなる場合もあるため、契約や条件の明確化、商品説明・素材提供などのサポート体制を整えることが成功の鍵となります。
8. ポップアップストア
ポップアップストアは、期間限定で出店する実店舗やイベントスペースのことで、リアルな場で商品を直接見てもらいながら販売できるチャネルです。主にブランド認知や体験価値の提供を目的とし、オンラインでは伝えにくい質感や世界観を体感してもらう場として活用されます。
短期集中での出店が多く、出店コストも常設店舗に比べて抑えやすいため、新商品のテストマーケティングや、新エリアでの需要調査にも効果的です。また、SNS連動や来店キャンペーンなどを組み合わせることで、話題性のある販促施策としても機能します。
一方で、準備や運営に手間がかかるため、目的とターゲットを明確にした上での企画設計が成功のポイントとなります。
販売チャネル多様化の成功事例

ここでは、Shopify(ショッピファイ)を活用して直販のネットショップを構築したブランドが、販売チャネルを多様化したことでどのようなメリットを得ているか、例をいくつか紹介します。
カキモリ:メーカー直販のネットショップ + 小売店
文具メーカーのカキモリは、ネットショップと小売店の両方で販売を行うマルチチャネル戦略をとっています。販売チャネルを直接販売のもののみに絞ることで、メーカーの特色を前面に打ち出すブランディングを実現しています。

Tomofun株式会社:メーカー直販のネットショップ + ECモール
Tomofunは、Furbo(ファーボ)と呼ばれるペットカメラを販売する企業で、直販のネットショップだけでなく、Amazonでも販売を行っています。ブラックフライデーなどのセールイベントを通じて売り上げを大幅に伸ばした実績があります。

販売チャネルの増やし方

販売チャネルを増やすことは、一つのチャネルに頼らず安定した売上を維持し、顧客接点の多様化とリスクの分散につながります。
ここでは、販売チャネルの多様化を進め方をご紹介します。
1. 既存チャネルの役割を整理する
販売チャネルの多様化を効果的に進めるためには、まずは現在利用しているチャネルごとの強みや課題・成果を把握し、自社に不足している接点を明確にします。
- ターゲット層との接点は十分にあるか/li>
- 実店舗によって、売上に繋がるか
- 競合他社が活動している場所はどこか
この分析により、たとえば若年層との接点が弱いのであれば、SNS経由販売、または今使っているSNSとは違うプラットフォームを加えるなど、具体的な対策が考えられます
2. 販売チャネルごとに異なる戦略を立てる
どの販売チャネルでも成果を上げるためには、チャネルごとに異なる戦略が必要になります。たとえば、自社ネットショップに顧客を誘導する場合と、実店舗に顧客を呼び込む場合では、アプローチが異なってくるでしょう。
さらに、サイトごとに商品の説明やマーケティングメッセージを多少変えていく必要があります。たとえば、Shopifyで構築したストアでは発送の早さをアピールしている場合も、Amazonに出店したショップでは、別のアピール方法をとる必要があるでしょう。Amazonでは買い物客がスピーディーな配送に慣れているからです。
3. 在庫と発送プロセスを管理する
販売チャネルの数を増やすにつれ、在庫の管理と発送プロセスの整備が重要となってきます。販売チャネルの増加に伴う売り上げ増に対応できるだけの在庫を、確保する必要が生じるでしょう。
また大切なことは、あらゆる注文に対応できる体力や時間の確保です。対応しきれない場合は、注文処理をサポートする人員の雇用を検討するべきでしょう。サポートがあれば販売チャネルを増やしても、業務を滞らせることなく事業を拡大できます。
4. 全販売チャネルにおいてカスタマーサポートの充実を図る
ビジネスの成長に伴い、顧客対応が増える可能性もありますが、その場合もカスタマーサポートの品質を維持できるよう、手を打つ必要があります。カスタマーサポート担当者の雇用や、Shopifyアプリストアで選べる、カスタマーサポート用のアプリの導入などを検討してください。
Shopifyでネットショップを構築している場合、ビジネスの拡大期に入ったところでサイトにライブチャットを導入するのも一案です。顧客からの問い合わせや苦情に対処しやすくなります。アプリを携帯電話やコンピュータにインストールしておけば、どんな問い合わせにもただちに対応できます。
5. 売り上げと分析に常に注意を向ける
チャネルごとの売上高にも目を向けましょう。新しいチャネルを軌道に乗せるには時間がかかることもありますが、そのチャネルで確実にコスト回収が進み、さらには利益を生み出せるようにするために、売り上げを常に意識するのが大切です。
特定のチャネルで十分な売り上げが上がっていないことがわかったら、そのチャネルに特化したマーケティングキャンペーンを実施して売り上げアップを目指しましょう。ブランド認知度を少々上げるだけで新しい販売チャネルの認知が進むということもあるでしょう。
まとめ
販売チャネルとは、商品、サービスを販売するための経路や方法のことで、メーカー直販のネットショップや小売店、モバイルアプリや、ECモール、卸売店などさまざまな種類が存在します。
販売チャネルを複数持つことで、顧客にとっての利便性が高まり、企業としての信頼感やブランド価値も向上します。中でも、自社ネットショップを事業の中心に据えることで、注文から発送までの流れを効率化し、予期せぬ変化にも柔軟に対応できる体制をつくることができます。
Shopifyを使えば、複数の販売チャネルを一つの管理画面でまとめて扱うことが可能です。これにより、どのチャネルでも一貫したブランド体験を提供でき、顧客との関係をより深く築くことができます。
続きを読む
販売チャネルについてよくある質問
販売チャネルを増やすには?
- 収益性に基づいてチャネルの優先順位を決める
- 販売チャネルごとに異なる戦略を立てる
- 在庫と発送プロセスを管理する
- 全販売チャネルにおいてカスタマーサポートの充実を図る
- 売り上げと分析に常に注意を向ける
販売チャネルと流通チャネルの違いは?
販売チャネルとは、商品、サービスを販売するための経路や方法のことを指すのに対し、流通チャネルは製品が販売者から消費者に届くまでの物理的な経路を意味します。実際に配送・輸送を行う物流業者や小売・卸売業者などが流通チャネルにあたります。





