アメリカ発祥のブラックフライデーは、11月末からのホリデーシーズンを代表する大規模なセールイベントの一つです。その次の週にあたるサイバーマンデーと合わせて「BFCM」とも呼ばれる年末商戦は、日本でも年々なじみ深くなりつつあります。多くの企業やブランドがこの時期に合わせて入念な準備やブラックフライデー・サイバーマンデー対策を行い、売上拡大に直結しやすい重要な時期となっています。
この記事では、これまでのブラックフライデーで実際に実施されたキャンペーンを10選紹介します。ブラックフライデーセールの戦略やアイデアに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. Amazon(アマゾン)|ポイントアップキャンペーン
Amazonで毎年11月の末から数日間にわたって開催される「Amazonブラックフライデー」は、ネットスーパーや日用品、美容・コスメなど幅広い商品を対象とする大規模セールです。そのなかでも注目すべきは、販売促進に直結する仕掛けです。

まず第一にあげられるのが「ポイントアップキャンペーン」です。合計1万円(税込)以上の購入で最大12%(最大1万ポイント)のポイントが還元される仕組みを導入し、特定の商品を購入すると還元率が高まるという条件を設定しました。これにより、Amazonは注力したい商品に消費者の購買意欲を集中させることに成功しています。この方法は、利益率の高い商品や在庫を動かしたい商品への購入に誘導する方法として利用できるでしょう。
さらに、ヒット商品やヘアケアのお試しセットなど、ブラックフライデーだけの特別パッケージを用意しました。「1年頑張った自分へのご褒美」や「大切な人へのプレゼント」といった印象的なコピーによりSNSで拡散されやすくなり、大きな認知を獲得しています。その結果、Amazonは幅広い消費者層への接点を確保し、高いマーケティング効果を発揮しています。
2. 楽天市場|買いまわり・2時間限定の50%オフクーポン
楽天市場のブラックフライデーセールは、ポイントアップ制度やクーポン施策を組み合わせて消費者を惹きつけています。最も消費者の購買意欲を刺激しているのが「ショップ買いまわり」です。事前エントリーを済ませたユーザー限定で1,000円以上購入した商品を対象に、最大10倍(獲得ポイント上限7,000)のポイントが還元されます。この仕組みにより、消費者は「買うならブラックフライデーが始まるまで待とう」「最大の10倍までこの機会にまとめ買いしよう」と、アップセルやクロスセルの動機づけが可能になり、セールへの参加率を高めることができます。
また、ブラックフライデー開催直後の2時間のみ利用できる50%オフクーポンも人気で、セール開始に合わせて購入できるようにスタンバイしている消費者も多くいます。目玉商品や人気商品が対象になることが多いため、開始数分で完売することも珍しくありません。時間を区切った時限性のある施策は購買の即決を促し、消費者の熱量を一気に高められます。
ほかにも、各ショップごとに1,000円オフ、ポイントアップ、選べるおまけなど、ブラックフライデー独自のクーポン配布や特典を提供できるのも楽天市場ならではの特徴です。ECモールとしての強みを活かし、店舗ごとの個性を前面に打ち出すことで、消費者は「掘り出し物を探す楽しさ」を体験でき、顧客維持や購買意欲の持続にもつながる結果となっています。ECモールに限らず、自社サイトでも限定性や参加条件、個性のある特典などを組み合わせることで、売り上げを向上させられるでしょう。
3. Tentree(テンツリー)|グリーンフライデー
Tentreeは、商品が1点売れるごとに10本の木を植えることを約束するアパレル会社です。Tentreeではブラックフライデーに代わり、サステナブルな事業や環境への消費者の意識を高めるための「グリーンフライデー」と銘打ったキャンペーンを行ないました。ブランドの理念と購買を直結させ、顧客ロイヤルティを高めるアイデアといえます。
グリーンフライデーの期間は割引セールを実施するだけでなく、ミステリーボーナスギフトや新製品の発表、送料無料などの日替わり特典を用意し、購買体験に変化と楽しさを加えています。また、リピート顧客には独占セールなどを提供することで、顧客維持にも力を入れています。
キャンペーン期間中は25万本の植樹を目標に掲げており、その進捗を示す「目標到達メーター」がオンライン上で公開されます。加えて、購入者には専用コードが発行され、どの地域に木が植えられたのかを確認できる仕組みが整えられています。こうした工夫により、消費者は単なる買い物ではなく、自らの行動が地球環境改善につながっていることを実感でき、ブランドへの共感を高めることに成功しています。
4. AEON(イオン)|駆け込み需要を喚起するキャンペーン
AEONでは、実店舗とECサイトの双方で大規模なブラックフライデーキャンペーンを開催しています。セール期間が冬休み・クリスマス・年末年始といった消費需要のピークと重なっているため、食品や日用品のまとめ買いはもちろん、クリスマスプレゼントや年末年始のご馳走・ギフトなど、シーズン特有の需要を取り込む絶好のタイミングとして、セールに力を入れています。
また、セール終盤には「ファイナルセール」と題し、さらに割引率を強化した企画を実施することもあります。これにより、期間中に購入を迷っていた顧客に「今が最もお得」という強い購買動機を与え、駆け込み需要を取り込む効果を発揮します。リアル店舗とECの両方で同時に展開することで、オンライン利用者・来店者双方の利便性を高め、オムニチャネル戦略の一環としても大きな成果を上げています。
5. ZOZOTOWN(ゾゾタウン)|最大95%オフ・日替わりセール

ZOZOTOWNのブラックフライデーキャンペーンは、最大95%オフという大幅な値引きキャンペーンで消費者の興味を惹きつけることに成功しています。さらに、セール中毎日実施される「6時間限定」のタイムセールは、日替わりで新作アイテムや人気ブランドの商品を対象にして、ユーザーに常に新しい掘り出し物を探す楽しみを与えています。
また、対象ショップで2点以上購入すると、購入金額の30%分がポイント還元されるキャンペーンも実施することで、まとめ買いを促進して、AOV(平均注文額)の向上につなげています。
このように、ZOZOTOWNは「大幅割引×タイムセール×ポイント還元」を戦略的に組み合わせることで、セール期間中に何度もサイトを訪れるリピーター需要を喚起し、顧客エンゲージメントを最大化しています。
6. JAL|ロイヤル顧客の満足度向上

航空会社のJALでは、旅行需要を喚起するためにブラックフライデーでは多角的なキャンペーンを実施しています。キャンペーン期間中は、国内線・国際線ともに通常よりもお得な運賃や必要マイル数でサービスが提供され、さらに航空券と宿泊を組み合わせたパッケージ商品も特別価格で販売されます。これにより、「普段は高額で諦めていた旅行」を実現できるチャンスとして多くの利用者に注目されます。
また、対象ホテルの予約でポイントが付与される企画など、旅行準備の段階からお得感を演出しています。特にマイル利用者からは通常よりも効率的にマイルを活用できる絶好の機会として認知されており、ロイヤル顧客層の満足度を高める仕掛け作りに成功しています。
さらに、豪華賞品が当たる抽選キャンペーンや、通常より多くのマイルが貯まるマイルアップ施策、マイルをお得に利用できるキャンペーンなど、多角的な施策が用意されているのも特徴です。旅行業界特有の「非日常体験」と「お得感」を結びつけることで、JALはブラックフライデーを通じて利用者の購買意欲を高めています。
7. LUSH(ラッシュ)|バスボムキャンペーン
自然派化粧品ブランドのLUSHのブラックフライデーは、単なる値引きセールではなく、環境保全や社会課題への意識を高めるためのキャンペーンとして活用しています。過去には、絶滅の危機にあるオランウータン保護のための「オランウータンバスボムキャンペーン」や、ビッグテック依存からの「Esc(脱却)」をテーマにした「ザ・クラウドバスボムキャンペーン」などのユニークな取り組みを実施してきました。
オランウータンバスボムキャンペーンの収益はすべてSOSおよびOrangutan Information Centerに寄付され、スマトラ島ブキス・マスのルセル生態系周辺で原生林を復元する活動に充てられました。購入がそのまま自然環境の再生支援につながる仕組みで、消費行動を通じて社会にインパクトを生み出すモデルといえます。
また、ザ・クラウドバスボムキャンペーンでは、LUSHがInstagram(インスタグラム)やTikTok(ティックトック)など一部SNSの利用をやめた背景を踏まえ、アルゴリズム依存や有害コンテンツ、エコーチェンバーから自由なインターネット社会を目指すメッセージを発信しました。危険のないインターネット社会を目指すための活動に、ザ・クラウドの売り上げで貢献し、ブランドメッセージを強化しています。
このように、LUSHのブラックフライデーは環境保全や社会的メッセージと結びつけられており、単なる商戦イベントではなく、ブランドの理念を体現するキャンペーンとして位置付けることに成功しています。
8. FABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)|ホワイトフライデー

FABRIC TOKYOは、ブラックフライデーとは対照的な「WHITE FRIDAY(ホワイトフライデー)」を同時期に実施しています。ブラックフライデーで衝動的な買い物や過剰消費が目立つなか、あえてその逆を行い、廃棄予定の生地を利用して顧客一人ひとりの体型に合わせたオーダーメイド服を提供するというユニークな取り組みです。
背景には、近年関心が高まっているサステナブルファッションがあります。調査では約32%の人がサステナブルな取り組みに興味を示しており、FABRIC TOKYOはこの層をターゲットにしています。オーダーメイドの服には「特別感」が強く、セールで購入した既製服に比べて長く大切に着られる傾向があるため、結果的に衣類廃棄の削減にもつながります。
さらに、販売金額の10%を能登半島地震や豪雨災害の復興支援に寄付し、北陸地域の未来につながる支援に活用しています。単なるイベントではなく、購入が社会貢献にも直結する仕組みを作ることで、消費者に「意味のある買い物体験」を提供しているのが大きな特徴です。
9. Kuradashi(クラダシ)|グリーンフライデー

食品ロス削減を目的に廃棄予定の食品を格安で販売する通販サイトKuradashiでは、数年前からブラックフライデーの時期に「グリーンフライデー」を展開しています。これは、割引によるお得感と同時に、環境保全につながる購買体験を提供するサステナブルな取り組みです。
毎年、支援団体への寄付内容は変わる傾向にありますが、過去の事例では、対象商品の購入1点につき20円、あるいはクーポンを利用した買い物1回につき50円が環境保護団体に寄付される仕組みを導入しています。
このように、単なるセールではなく消費行動を環境保全に転換する仕組み化が実現されており、共感マーケティングとしてファン化と売り上げ向上に成功しています。
10. Cartier(カルティエ)|返品期間の延長
高級ジュエリーブランドのCartierは、ブラックフライデーにおいて盛大な割引ではなく、返品ポリシーの拡大というユニークな施策を打ち出しました。返品期間を通常より長い3か月に延長し、ホリデー期間に購入した商品は翌年の1月15日まで返品可能とする条件を提示しました。また、この返品ポリシーはカルティエ公式サイトの全ウェブページ上部にバナーを設置して告知され、訪問者全員がわかるように強く訴求しました。
この取り組みは、価格競争に頼らず、安心感と信頼性を重視するラグジュアリーブランドらしい戦略といえます。特にブラックフライデーは新規顧客の流入が増える時期であり、返品条件の柔軟さを示すことで、初めてブランドに触れる消費者に「安心して試せる」という心理的ハードルを下げる効果を発揮しました。
このように、Cartierはブラックフライデーを「値下げ」ではなく、顧客体験を高める契機として活用し、ブランド価値を維持しながら新規顧客の獲得と関係構築につなげています。
まとめ
ブラックフライデーのキャンペーンを決める際は、単なる値引きにとどまらず、企業・ブランドのイメージやコンセプトを反映させることが重要です。たとえば、Kuradashiのように食品ロス削減を理念とする企業が、売り上げの一部を環境保護団体に寄付する取り組みは、ブランドの姿勢と強く結びついており、顧客に自然な共感を生み出します。
また、告知方法についても、顧客層に合わせて最適なチャネルを選ぶことが効果的です。SNSマーケティングによる拡散や、メールキャンペーンによる継続的なアプローチなど、顧客の行動特性に合った方法を活用することで、キャンペーンの効果を最大化できます。
ブラックフライデーは売上拡大の大きなチャンスであると同時に、ブランド価値を高める発信の場でもあります。割引の種類や方法を工夫するだけではなく、自社の理念に沿ったメッセージの発信やイベントを実施することが、長期的な顧客との信頼関係構築につながるでしょう。
ブラックフライデーキャンペーンに関するよくある質問
ブラックフライデーキャンペーンとは?
ブラックフライデーキャンペーンとは、アメリカの感謝祭の翌日金曜日に開催される大規模なセールです。この時期に世界中の企業やブランドが特別オファー、割引、商品やサービスの取引を促進するマーケティング戦略を行います。
ブラックフライデーセールはいつ?
ブラックフライデーセールは、アメリカの感謝祭の翌日である金曜日に開催されます。感謝祭は毎年11月の第4木曜日にあたるため、2025年の場合は11月27日が感謝祭の日となり、その翌日の11月28日がブラックフライデーになります。
ブラックフライデーキャンペーンが成功するポイントは?
ブラックフライデーキャンペーンが成功するポイントは、魅力的な割引や限定オファー、高品質で目を引く画像や動画、複数のマーケティングチャネルの組み合わせ、期間限定オファー、シームスレスなユーザー体験などです。
Shopifyでブラックフライデーキャンペーンを作成する方法とは?
Shopifyでブラックフライデーキャンペーンを作成するには、次の手順に従います。
- 割引などのキャンペーン内容を決める
- 魅力的なバナー、グラフィック、商品画像を作成する
- Shopifyのブラックフライデーアプリや割引機能を使用して、特定の商品やコレクションにブラックフライデーのキャンペーンを適用する
- ブラックフライデーキャンペーンに合わせてストアのテーマを変更し、カウントダウンタイマーを追加したり、専用のブラックフライデーランディングページを作成したりする
- 決済までのステップを簡素化し、複数の支払いオプションの提供、明確な配送および返品ポリシーを提示する
- メルマガやSNS、有料広告などのマーケティングチャネルを利用して、ターゲット層にリーチする
SNSでブラックフライデーを効果的に宣伝する方法は?
SNSでブラックフライデーを効果的に宣伝する方法は、以下のとおりです。
- ブラックフライデー期間中に投稿するコンテンツカレンダーを作成する
- 事前にブラックフライデーの予告をSNSのフォロワーに宣伝する
- #BlackFriday、#Deals、#Saleなどの関連ハッシュタグを利用したコンテンツを投稿する
- コメント、メッセージ、問い合わせに迅速に応じて、フォロワーとの信頼を築いておく
- Facebook広告やInstagram広告などの有料広告を利用し、ターゲット層に向けてブラックフライデーを宣伝する
- インフルエンサーやブランドアンバサダーと提携し、彼らのフォロワーにブラックフライデーキャンペーンを宣伝してもらう
文:Momo Hidaka





