ネットショップの売上向上や顧客体験の改善に効果的な施策の一つがレコメンド機能です。ユーザーごとに最適な商品を自動で提案することで、購入率の向上やリピート促進に大きく貢献します。特に近年は、機械学習や予測モデルを活用したAIレコメンド機能によって、より精度の高い商品提案を行うサイトも増えています。
本記事では、レコメンド機能の仕組み、具体的な種類、ECサイトでの効果的な活用方法までをわかりやすく解説します。
レコメンド機能とは

レコメンド機能とは、ネットショップやECサイトなどにおいて、ユーザーごとに興味を持ちそうな商品や情報を自動で提案する仕組みです。
提案をパーソナライズするための条件には、閲覧履歴・購入履歴・行動パターンや、年齢・職業といった属性など、さまざまなデータが利用されます。また、この機能を自動化するため、膨大なユーザーデータやコンテンツ情報を処理するのが、「レコメンドエンジン」と呼ばれるソフトウェアです。
レコメンド機能は導入することで必ず売上が伸びるわけではありませんが、ユーザーが新しい商品と出会うきっかけをつくり、購買意欲や満足度を高める上で重要な役割を果たします。
レコメンド機能を導入するメリット

販売数と収益を増やせる
レコメンド機能を導入する最大のメリットは、販売数と収益の向上につながる点です。
レコメンド機能はユーザーが必要とする商品を推測して提案することで、上位モデルへの変更や関連商品のついで買いといったアップセルやクロスセルの発生率が高まります。また、パーソナライズされた提案は、ユーザーが「欲しい商品を見つけやすい」状態を作るため、購買行動を後押しする効果も期待できます。
ユーザー体験を向上させられる
レコメンド機能は、ネットショップ全体のユーザー体験を向上させる効果もあります。
商品数が多いECサイトでは、ユーザーが欲しい商品にたどり着くまでに時間がかかり、「探すストレス」が生まれがちです。レコメンド機能があれば必要な商品をスムーズに見つけられるほか、普段は目に留まらなかった商品との出会いも生まれ、ショッピング体験そのものの満足度が向上します。結果として、サイト内の回遊性が高まり、離脱防止や購入意欲の向上につながる点も大きなメリットです。
リピート率を高められる
レコメンド機能を効果的に活用すれば、リピート率の向上にも効果を発揮します。
ユーザーは、ECストアで自分の好みやニーズに合った商品を継続的に提案されることで、「このサイトは自分に合っている」という安心感や信頼感を抱きやすくなります。こうした体験は再訪や再購入を促す要因となり、長期的な顧客維持やファン化にも貢献します。つまり、一人ひとりに合わせたパーソナライズ施策を行うことは、ブランドロイヤリティの向上にも直結するといえるでしょう。
マーケティング施策を効率化できる
レコメンド機能の導入は、さまざまなマーケティング施策の効率化にもつながります。
例えば、商品提案のためユーザーの閲覧履歴や購入履歴、興味関心を把握することで、「どの商品をどのターゲットへ訴求すべきか」といった戦略設計がしやすくなります。また、過去にサイトを訪れたユーザーへ、閲覧した商品に絞った広告を配信できるため、リターゲティング施策の精度が向上します。さらに、蓄積した顧客データを基に商品選定やキャンペーン設計を最適化することもできます。
改善に役立つデータを取得できる
レコメンドエンジンを活用すると、顧客の行動データや好みだけでなく、サイト内での人気傾向や商品トレンドといった貴重なデータも取得できます。これらのデータを分析することで、ECサイトの商品ラインナップの見直しや、レコメンドに使用する機械学習アルゴリズムの精度向上にもつなげられます。
また、ユーザーの嗜好パターンを踏まえた商品企画や、新商品の開発に活かすことも可能です。データを軸にした改善を継続することで、より精度の高いレコメンドが実現し、顧客満足度や売上向上にも寄与します。
レコメンドエンジンの種類

コンテンツベースフィルタリング
コンテンツベースフィルタリングとは、あらかじめ設定した商品のカテゴリや特徴をもとに関連性の高いアイテムをおすすめする手法です。
例えば、特定のブランドのスニーカーを閲覧したユーザーに対して、同じブランドの別モデルや、近いデザイン・素材を採用したスニーカーを表示することができます。ユーザーのデータが少なくても、レコメンドできる点が特徴です。
協調フィルタリング
協調フィルタリングでは、ユーザーの行動データを比較し、類似点をもとに商品を提案します。
そのなかでも、購入履歴や商品への評価が似ているユーザーを比較し、「この商品を見た人はこっちにも興味を持っています」といった提案を行う手法は「ユーザーベース協調フィルタリング」と呼ばれます。一方、ユーザーの行動データから商品の類似度を分析し、「この商品に似たアイテムはこちら」とおすすめする手法が「アイテムベース協調フィルタリング」です。トレンドが反映されやすく手間なく運用できますが、データが集まるまでは精度が低いというデメリットもあります。
パーソナライズドレコメンド
パーソナライズドレコメンドとは、ユーザー一人ひとりの嗜好や行動データにもとづいて最適な商品を提示する手法です。
閲覧履歴・購入履歴・検索キーワード・カート投入状況・滞在時間など、ユーザーの行動パターンを総合的に分析し、その人に最もマッチするアイテムを提案します。例えば、過去にアウトドア用品をよく購入しているユーザーには、新商品のキャンプギアや関連するアクセサリーを優先的に表示します。個人の興味関心をダイレクトに反映できるため、購買意欲を引き出しやすい点が特徴です。
ルールベースレコメンド
ルールベースレコメンドとは、事前に設定した条件やルールにもとづいて商品をおすすめする手法です。
特定のカテゴリの商品を閲覧したら関連商品を表示する、季節に合わせて売れ筋商品を出す、一定金額以上の購入者にセット商品を提案するなど、明確なルールを企業側が設定して運用します。ユーザーの行動データを深く分析するタイプではありませんが、意図したタイミングで確実に特定の商品を訴求できるため、キャンペーン施策や新商品の露出強化に活用しやすい点が特徴です。設定内容を変えるだけで手軽に運用でき、導入コストも抑えられるため、ECサイトの初期段階でも取り入れやすいレコメンド手法といえます。
ハイブリッドレコメンド
ハイブリッドレコメンドとは、複数のフィルタリングを組み合わせ、それぞれの弱点を補完しながらより精度の高い提案を行うレコメンド手法です。
例えば、あるユーザーと嗜好が似ている他のユーザーを協調フィルタリングで特定してから、コンテンツベースフィルタリングで幅広い関連アイテムを抽出し提案するといったことができます。複数の手法を掛け合わせることで、ショップ独自の仕組みを構築することも可能になります。
レコメンド機能をECサイトで活用するコツ

- カテゴリーページにレコメンド機能を取り入れる
- 関連商品を提案してクロスセルを促す
- レビュー評価を商品提案に取り入れる
- ECサイトと実店舗のデータを連携させる
- 効果を検証し、継続的に改善する
- 競合ブランドの提案手法を研究する
カテゴリーページにレコメンド機能を取り入れる
カテゴリーページから、レコメンド機能で抽出されたおすすめ商品をまとめたページへ誘導するのも効果的です。顧客の行動データをもとにした「ベストセラー」や「高評価アイテム」のカテゴリーを配置することで、ユーザーが購入しやすい商品を目立たせることができます。
関連商品を提案してクロスセルを促す
ショッピングカートページや各商品ページで、関連のある商品をあわせて提案するクロスセル戦略を取り入れるのも一つの手です。例えば「この商品を購入した人はこんな商品も購入しています」や「一緒に購入されることが多い商品」といったセクションを設けて、平均注文金額(AOV)の向上を狙いましょう。
レビュー評価を商品提案に取り入れる
ユーザーから寄せられたレビューや評価は、レコメンド機能の信頼性を高めるうえで大きな助けになります。高評価の商品やポジティブなレビューが多いアイテムをおすすめ枠に反映すれば、初めて訪れたユーザーでも安心して商品を選びやすくなり、コンバージョン率の向上につながります。
ECサイトと実店舗のデータを連携させる
ECサイトと実店舗の両方を運営している場合は、双方で得られた顧客データを連携させることで、より精度の高いアプローチが可能になります。例えば、実店舗のショールームでソファを購入した顧客の連絡先や商品情報が取得できていれば、ECサイト側ではクッションやラグ、メンテナンス用品など相性の良いアイテムを提案できます。
効果を検証し、継続的に改善する
レコメンド機能の効果を最大化するには、定期的な検証と改善が欠かせません。例えば、A/Bテストを活用すれば、おすすめ内容の違いや表示位置の変化が売上やユーザー行動にどのような影響を与えるかを明確に把握できます。継続的な最適化を行うことで、ユーザー体験とコンバージョンの向上につながります。
競合ブランドの提案手法を研究する
競合ブランドがどのように商品提案を行っているかを調査することも、レコメンド機能を改善するうえで重要です。競合サイトのレコメンド表示位置や提案パターン、文言の工夫などを観察することで、自社サイトに活用できるヒントが得られます。
まとめ
レコメンド機能は、単に商品を表示する仕組みではなく、顧客一人ひとりの体験価値を高め、ECサイト全体の成長を後押しする強力な武器です。購入履歴や閲覧データなど、すでに自社が持っている情報を活かすだけでも、提案の質は大きく変わります。
ECサイトにレコメンド機能を導入したいと考えているなら、Shopify(ショッピファイ)の利用を検討してみてください。Shopifyには、レコメンド機能を導入できるアプリが複数あるため、eコマース事業者のニーズに応じて最適なものを選ぶことができます。無料体験も実施していますので、ぜひお気軽にご活用ください。
よくある質問
レコメンド機能を導入すると必ず売上は上がる?
レコメンド機能は売上向上に寄与しますが、必ず上がるわけではありません。サイト設計や導線、表示位置、精度の高さなどが大きく影響します。効果や精度を高めるには、定期的な検証と改善が重要です。
ECサイトにおけるレコメンド機能の例は?
レコメンド機能とは、ユーザーの購買行動や嗜好データをもとに最適な商品を提案する仕組みです。代表的な例としては、「この商品を購入した人はこんな商品も購入しています」「一緒に購入されている商品」「あなたへのおすすめ」といったセクションがあげられます。
商品のおすすめは何に基づくべき?
商品をおすすめする際は、顧客ごとの行動データに基づいたパーソナライズが重要です。購入履歴・閲覧履歴・検索キーワード・カート投入状況などを分析し、「そのユーザーが今興味を持ちそうな商品」を自動で提示することで、購入率や満足度の向上につながります。
レコメンド機能のメリット・デメリットは?
メリット
- 販売数と収益を増やせる
- ユーザー体験を高められる
- 顧客ロイヤリティを高められる
- マーケティングを効率的に行える
- 改善に役立つデータを取得できる
デメリット
- ECサイト上の商品数が少ないと効果が薄い
- ECサイトの利用者が少ないと提案の精度が低い
- 導入にあたって初期費用がかかる
Shopifyにレコメンド機能はある?
Shopifyには、オンラインストアにレコメンド機能を組み込めるアプリが複数存在します。詳細は、Shopifyのアプリストアで確認できます。
文:Takumi Kitajima





