「アクセスはあるのに商品が思うように売れない」これは多くのEC事業者が抱える課題です。
ネットで買い物をすることが当たり前になった今、顧客は数多くのショップや商品を比較しながら、どこで購入するかを検討しています。ただ商品を掲載しているだけでは競争力が弱く、選ばれる可能性は低くなります。
購入率を上げるためには、プロダクトページそのものを最適化し、ユーザーに「この商品を選ぶべき理由」を明確に伝えることが重要です。商品画像のクオリティ、商品説明の書き方、レビューの見せ方など、ほんの小さな違いが売上を大きく左右します。ページを丁寧に作り込むことで、購買意欲を高め、コンバージョンにつなげることができます。
この記事では、プロダクトページの最適化に焦点を当て、売れるページを作るための具体的な方法をストア事例と共に紹介します。選ばれるショップづくりにぜひお役立てください。
プロダクトページとは

プロダクトページとは、ECサイトの商品ページのことです。商品画像、説明文、価格、在庫状況など、購入判断に必要な情報が集約されています。ECサイトにおいては、顧客が最終的に購入を決める重要な接点であり、売上を左右するページといえます。
プロダクトページ最適化とは

プロダクトページ最適化とは、商品ページを見やすく整理し、必要な情報を適切に配置して改善する取り組みです。たとえば、商品の魅力が伝わる画像を掲載したり、説明文をよりわかりやすくしたり、購入ボタンなどのCTAをわかりやすい位置に配置したりします。このような改善を行いページを最適化することで、ブランドや商品の訴求力が高まり、CVR(コンバージョン率)の向上につながります。
売れるプロダクトページの5つの要素と実例
1. 心をつかむファーストビュー
訪問者の大半はファーストビュー(商品ページを開いた直後に表示される最初の画面)で商品を購入するか決めるため、商品の魅力とブランドの世界観が瞬時に伝わる設計が必要です。メイン画像、キャッチコピー、メリットやセール情報などを明確に配置し、スクロール無しでも理解してもらえるファーストビューを目指しましょう。
最適化のポイント
- 開いて3秒で商品の強みを伝える:ファーストビューの範囲で、商品の魅力や価値が直感的に理解できる構成にする。
- ブランドロゴやカラーを統一する:ロゴ、CTAボタン、アクセントカラーなどに一貫性を持たせ、ブランドの世界観を表現する。
- 購入すべき理由(ベネフィット)を示す:ユーザーが「なぜこの商品を選ぶべきか」を明確に伝え、行動を促す。
たとえば、コーヒーの製造販売を営むブルーボトルコーヒーのファーストビューは、左側に商品のメイン画像、右側には価格と購入ボタンがすぐに目に入る位置に配置されており、スクロールしなくても購入が可能です。商品名の上部には「新商品」や「シングルオリジン」といったタグがあり、購買すべき理由が一目でわかる設計になっています。また、ブランドカラーをタグやCTAボタンなどECサイト全体で用いることで、ブランドアイデンティティを反映した統一感のあるデザインに設計されています。
2. 高品質な商品画像
商品の写真は、顧客が商品の細部や質感を視覚的に理解するための重要な要素です。ECサイトでは実際に商品に触れたり、試着したりできないため、画像でその体験を補う必要があります。6〜8枚を目安に商品の魅力が伝わる写真を掲載し、購入後のイメージギャップを防ぎましょう。動画や360度ビュー、AR(拡張現実)も有効です。
最適化のポイント
- 6〜8枚以上の画像を掲載する:商品の全体像や特徴を十分に伝えるために、正面写真だけでなく、さまざまな角度からの写真、パーツの拡大写真、使用イメージ写真などをそろえる。
- バリエーション選択に合わせて画像を切り替える:色やサイズを選択した際に対応する画像が切り替わるよう設定し、購入後のイメージギャップを防ぐ。
- 背景やライティングにこだわる:EC撮影の基本を押さえて物撮りする。必要に応じて画像編集ソフトで補正し、品質を維持する。プロへの依頼も検討する。
たとえば、ストリート系アパレルブランドを扱うYZ STORE(ワイジーストア)は、メイン画像に4種類の商品バリエーションを並べた写真を使用し、各バリエーションの素材感や色の違いを一目で比較できるようにしています。背景には余計な装飾を入れず、商品の色と質感が際立つ構成になっているのもポイントです。また、モデル着用カットを掲載することで、スタイリングのイメージを具体的に伝えています。さらに、商品ページ右側にはカラー別のサムネイルを配置し、バリエーション選択がスムーズに行える設計になっています。
3. 説得力のある商品説明文
商品説明は、単に仕様を列挙するのではなく、顧客が得られるメリットを伝えることが大切です。長くなりすぎないよう、要点を簡潔にまとめましょう。どうしても情報量が多くなる場合は、ページ全体が雑然とした印象にならないよう、レイアウトを工夫したり、ドロップダウンのタブを活用したりしましょう。また、ページのアクセス数を増加させ、商品販売につなげるには、SEOライティングを意識することも重要です。
最適化のポイント
- 冒頭3行で重要点を伝える:顧客が最初に目にする3行で、商品の魅力や要点を明確に示す。
- メリットを具体的に示す:機能や仕様の説明にとどまらず、使用によって得られるメリットを具体的に伝える。商品の性能や価値を数値やデータで裏付けるのも有効。
- 顧客の目線に合わせる:専門用語はわかりやすい表現に置き換え、誰でも理解できる内容にする。想定される質問にはあらかじめ答えたり、商品別のFAQを設けたりするのも効果的。
たとえば、革製品ブランドの土屋鞄製造所の説明文は、機能を直感的に理解できる表現が使用されています。商品スペックは「スマートに脇に収まる縦長デザイン」「ノートPCやA4ファイルをすっきり収納」など、実際の使用シーンを想起できる言葉で紹介することで、説得力の高い商品説明になっています。
- スマートに脇に収まる縦長デザイン
- ノートPCやA4ファイルをすっきり収納
- 使い込むほどにつやを重ねる経年変化
4. 購入を促すCTAボタン
CTAボタンはページの中でひと目で見つけられる位置に配置し、購入までの導線をスムーズに設計することが重要です。また、送料無料や特典などを明示しておくことで、購買への心理的ハードルを下げられます。
最適化のポイント
- 明確なCTAボタンを設計する:色、サイズ、配置を工夫し、「カートに追加する」「今すぐ購入する」などの具体的な文言を使用して、アクションを明確にする。
- CTAの配置を工夫する:購買意欲が高まるタイミングを意識した配置を心がける。Fの法則やZの法則など、視線の動きも考慮するとさらに効果的。
- 行動を後押しする要素を沿える:送料無料、ノベルティ、返金保証など、購入を後押しする要素をCTAの近くに配置する。
たとえば、PAUL & JOE(ポール&ジョー)公式オンラインストアでは、メインのCTAボタン「カートに追加」にブランドカラーのピンクが採用されています。また、ボタンを視認性の高い右下に配置することで、購買へスムーズに誘導できるよう設計されています。さらに、「サブライム クリーム ファンデーションをお求めの方にノベルティをプレゼント」といった特典をCTAボタン近くに配置することで、購入で得られるメリットを視覚的に訴求しているのも特徴です。
5. 信頼を生む口コミやレビュー
口コミやレビューは、顧客からの信頼を生み出し、商品購入を後押しする重要な要素です。販売者の説明よりも、実際に使った人の感想のほうが購買判断に影響しやすく、消費者庁の調査でも70%以上の人が口コミ評価の高い商品を選ぶことがわかっています。レビュー数や評価スコアを見やすい位置に配置し、レビュー投稿をタブ形式で整理するなど、顧客が読みやすい構成を意識しましょう。また、投稿を促す仕組みを設けることで、レビュー数の増加が図れます。
最適化のポイント
- 評価スコアやレビュー件数を上部に表示する:信頼感を与え、購入前の不安を軽減する。
- 投稿を促す仕組みを用意する:レビュー投稿でポイントや特典を付与することを事前に知らせておくことで、投稿を促進する。
- レビューの見やすさを工夫する:5つ星評価、投稿の添付写真、顧客の属性などを表示して、参考になる情報をわかりやすく掲載する。
たとえば、ガジェット製品を販売するAnker(アンカー)の商品ページは、商品名のそばに5つ星評価とレビュー件数が表示されており、ひと目で信頼性が伝わる設計になっています。さらに、「レビュー投稿で500マイル付与」といった特典を設け、購入者が自発的にレビューを投稿したくなる仕組みを導入しています。レビューの一覧では「参考になった」ボタンが設置されており、ユーザーは他のレビューの信頼性を評価できます。この仕組みにより、実際に役立つレビューが上位に表示され、購入検討中の顧客は信頼性の高い情報を得やすくなっています。
プロダクトページ最適化の注意点

- キーワードを詰め込みすぎない:SEO(検索エンジン最適化)を意識しすぎて不自然にキーワードを入れると、読みにくくなり、検索評価も下がります。自然な流れの文章を心がけましょう。
- 低品質な画像を使わない:商品画像が暗かったり、ぼやけていたり、解像度が低かったりすると、商品の印象を損ないます。明るく鮮明で、ブランドの世界観に合った写真を掲載しましょう。
- 情報を省きすぎない:素材、サイズ、価格、配送条件など、購入判断に必要な情報を省くと顧客の不安を招きます。FAQやドロップダウンタブも活用し、すべての情報を見やすく整理して掲載しましょう。
- コストや手数料を隠さない:送料や追加料金を後から提示すると、顧客は不信感を抱きます。かかる費用は最初に明示しましょう。
- モバイル対応を怠らない:ECサイトの多くはスマホ経由で閲覧されます。文字サイズやボタンの押しやすさ、読み込み速度を複数デバイスで確認し、快適に操作できるようにしましょう。
プロダクトページ最適化の成果を高める方法

プロダクトページの最適化は一度きりではなく、データをもとに改善を重ねていくことが重要です。次のような、限られたリソースでも取り組みやすい施策を積極的に取り入れていきましょう。
ヒートマップで顧客行動を分析する
Clarity(クラリティ)などのヒートマップツールを導入することで、顧客がどの位置をクリックし、どこで離脱しているかを可視化できます。クリック率の低いボタンや、スクロールされにくい要素があれば配置やデザインを見直します。特にスマホでの操作性を重点的に確認するようにしましょう。
A/Bテストで最適な表現を見つける
同じページ要素を2パターン用意して成果を比較するA/Bテストで、CTAボタンの色や文言、画像構成などを1つずつ検証しましょう。小規模サイトでも、期間を区切った簡易的なテストで十分に効果を得られます。
成功しているECサイトから学ぶ
売上好調な他社サイトを研究するのも有効です。情報の配置方法や画像構成、説明文のトーンなどを参考にしましょう。競合分析や競合調査も、自社ページの改善点を探るうえで効果的です。
顧客アンケートで改善点を見つける
購入者に「どの点がわかりづらかったか」「どんな情報が不足していたか」などを質問して、改善のヒントを得ましょう。短時間で回答できるアンケートを活用し、クーポンやポイントなどの特典を付与すると回答率を向上できます。
プロダクトページ最適化の成果を測る方法

プロダクトページ最適化の効果を正しく把握するには、次のような指標を定期的にモニタリングしましょう。
- CVR(コンバージョン率):訪問者のうち実際に購入に至った割合で、最も重要な指標です。上昇していればプロダクトページ最適化が成果を上げていると判断できます。
- 離脱率:商品を購入せずにサイトを離脱した訪問者の割合です。高い場合は、訪問者がページの読み込み速度やファーストビューなどに満足していない可能性があります。
- ページ滞在時間:訪問者が商品ページに費やした時間で、滞在時間が長いほど商品への関心が高いと判断できます。反対に短すぎる場合は、情報が不足していたり、構成がわかりづらかったりする可能性があります。
- CTR(クリック率):ボタンやリンクがクリックされた割合です。CTAボタンを改善することで、CTRが向上する可能性があります。
- AOV(平均注文額):1注文あたりの平均購入金額で、サイトへの信頼度を測る指標として活用できます。
- 返品率:注文全体に対する返品の割合です。返品率が高い場合は、商品画像や説明文が実際の商品と乖離している可能性があります。
まとめ
プロダクトページ最適化は、単にデザインを整える作業ではなく、顧客が購入を決断する瞬間を設計する取り組みです。ファーストビューの構成、画像や説明文の質、CTAボタンの配置、レビュー表示まで、すべての要素が購買意欲やサイトへの信頼感を左右します。
最適化は一度で完了するものではありません。ヒートマップやA/Bテストを活用して顧客行動を分析し、CVRや離脱率などの指標を定期的に見直すことが、長期的な成果につながります。また、プロダクトページの改善を積み重ねることで、ECサイト全体のCRO(コンバージョン率最適化)が図れ、売上の向上と事業成長を後押しできます。
プロダクトページ最適化に関するよくある質問
プロダクトページとは?
プロダクトページとは、ECサイトで商品ごとに設けられたページのことです。商品の画像や価格、説明文、レビュー、購入ボタンなど、購入判断に必要な情報をすべて掲載します。顧客が買うかどうかを決める最終地点であり、ECサイトの中で最も重要なページのひとつです。
プロダクトページ最適化はなぜ重要?
プロダクトページの最適化は、顧客体験(UX)を向上させ、購入率を改善するための重要な取り組みです。ページ構成を工夫したり商品説明を魅力的にしたりすることで、ユーザーの購入意欲を高め、売上増加につなげることができます。
プロダクトページのSEO対策は?
商品ページのSEO対策では、検索エンジンとユーザーの両方にとって理解しやすい構成を意識しましょう。押さえるべきポイントは次の通りです。
- タイトルタグとメタディスクリプション:商品名や特徴を正確に反映させ、検索結果で内容が一目でわかるようにする。
- 見出し(Hタグ)と本文:自然な形でキーワードを含める。
- 画像の最適化:代替テキスト(alt属性)を設定し、画像検索でも見つけやすくする。
- 構造化データの活用:レビューや価格を検索結果に表示させ、CTRを向上させる。
文:Hisato Zukeran





