ネットショップを開いたばかりのオーナーにとって、どうやって集客するかは大きな課題です。オーガニック検索やSNSマーケティングでの流入を待つのでは時間がかかってしまうため、着実に顧客を集めて売上を伸ばすには有料広告を出すというのも有効な手段のひとつです。
オンライン広告の中でも代表的なのが、 Google広告とFacebook広告(現Meta広告)です。どちらも有力な集客手段になりますが、いざ広告を出そうとすると、何が違うのか、どちらを使うのがいいのか、迷う人も多いのではないでしょうか。
この記事では、Google広告とFacebook広告の特徴を比較し、それぞれの成功事例を紹介します。
Google広告とFacebook広告の特徴

Google広告の特徴
Google広告の特徴は、日本国内で検索シェアの8割程度を占めるといわれる検索エンジンに連動して、広告を表示できることです。ユーザーが実際に探している言葉に合わせて広告を出せるので、特定の商品やジャンルに関心が高い層へピンポイントで届けることができ、購入などの成果につながりやすい仕組みといえるでしょう。
また、Google広告にはリマーケティング機能があります。これは一度サイトを訪れたユーザーに再度広告を表示できる仕組みで、検索意図のあるユーザーに加えて「過去に興味を示したユーザー」にも継続的にアプローチ可能です。Google広告は検索結果、YouTube、Googleディスプレイネットワーク (GDN)の提携サイトなどをまたいで追いかけることができます。
Facebook広告の特徴
Facebook広告の特徴は、SNSプラットフォーム上でユーザーの属性や興味、行動データをもとに広告を配信できることです。Facebook広告はターゲット層を設定できるため、「まだ商品を知らないけれど興味を持ちそうな人」にリーチできる仕組みといえます。
Facebook広告にはリターゲティング機能があります。一度自社サイトを訪問した顧客や、商品をカートに入れたまま購入せずに離脱した「カゴ落ち」状態の顧客に対して、SNSへアクセスした際に広告を表示できる仕組みです。これにより「買うかどうかを迷っている層」に再アプローチできます。
また、Meta(メタ)広告マネージャーを使うことで、同時にInstagram(インスタグラム)でのマーケティングも可能になる点が大きな特徴です。日本ではInstagramの利用率が高く、特に若い世代に強く定着しています。両方の媒体特性に合わせたターゲティングや広告制作を行なうことで、さらに効果を高めることができます。
Google広告とFacebook広告の比較

Google広告とFacebook広告は、得意分野が異なります。セールスファネルでいうと、Google広告はすでにある程度の接点を持つファネルの下部のターゲット、Facebook広告はまだ接点のない上部のターゲットへのアプローチに適しています。
それぞれの広告の要素の違いは次のとおりです。
ターゲティング方法
- Google広告:検索キーワードに基づいて広告を配信できるため、「フライパン IH対応」など具体的なニーズを持ったターゲットを設定できます。また、地域や年齢といった属性を設定することもできます。
- Facebook広告:ユーザーの興味や行動データを活用し、ライフイベントや趣味嗜好に基づいて広告を配信することができます。たとえば「子育て中で旅行好きな30代女性」のように、ターゲット層の具体的な人物像を設定することで、より効果的な広告配信が可能となります。
課金形式と費用相場
課金形式はどちらのプラットフォームでも、広告をユーザーがクリックするごとの「クリック課金(CPC)」と、1,000回程度表示されるごとの「インプレッション課金(CPM)」が基本です。また多くの場合、単価を高く設定した広告が優先的に表示される「入札方式」が採用されています。そのため競合が多いと、表示されづらかったり、すぐに予算上限に到達してしまったりします。
このほか、動画広告では十数秒以上視聴されるごとの課金、SNS上でのリアクションやアプリインストールといった成果ごとの課金といった形式もあります。
- Google広告:競合も多いため入札単価が上がりやすく、一般的には1クリック当たり50〜100円ですが、業界によっては1000円を超えるケースもあります。インプレッション課金は、1,000回表示あたり10〜500円程度です。いずれも効果を出すには、月額20万円以上の予算が必要といわれています。
- Facebook広告:クリック課金は100~250円、インプレッション課金は1,000回表示あたり100~500円が相場といわれています。最低出稿金額は100円から、かつ1日単位で予算を設定できることもあり、1日1,000~1万円程度の少額からでも広告を運用しやすいという特徴があります。
リーチ
- Google広告:検索エンジンとして世界での検索シェアは2025年の段階で約90%、日本でも約80%と圧倒的1位をほこり、ほぼすべてのインターネットユーザーが対象となる分、ターゲティング設定を調整する必要があります。
- Facebook広告:FacebookとInstagramに広告を配信できます。SNSユーザーに限られるものの、世界の月間利用者数は30億人以上もの規模があり、ユーザー属性でターゲティングしやすい特徴があります。
フォーマット
- Google広告:検索結果画面にでるテキスト広告がメインとなります。ショッピング広告や提携サイトのディスプレイ広告では画像も表示されますが、サイズが小さかったりと自由度は低めです。Youtube広告の場合は、動画を利用することができます。
- Facebook広告: SNS上で目を引くビジュアルを活用した広告を配信することができます。画像サイズなどの自由度が比較的高く、動画やスライドショー形式のカルーセル広告などを選択することもできます。
Google広告の成功事例
柳井商店
大分県佐伯市にある、とらふぐ販売の老舗である柳井商店は、Google広告を活用することでオンラインショップの売上を前年比で最大5倍に伸ばすことに成功しました。
もともと柳井商店は卸売や店舗販売を行ってきましたが、オンライン販売を始めても顧客は地元中心で、全国への認知拡大に課題がありました。そこでGoogle広告を導入し、検索広告を軸にキーワードの最適化や予算配分をAIと専門サポートのアドバイスを取り入れながら改善していきました。
特に「一度も冷凍せずに生のとらふぐを届ける」という新商品を打ち出した広告キャンペーンでは、広告経由でのサイト訪問が大幅に増加し、2023年12月には前年の5倍の売上を達成し、ブランドの全国的な知名度も大きく向上しました。
成果
- オンラインショップの売上が前年比で最大5倍に増加
- 購入者のうち約9割が大分県外からの顧客に拡大
- 季節需要に依存しない、通年販売体制の構築を達成
LOWYA
家具・インテリアブランドのLOWYA(ロウヤ)は、ショッピング広告を中心にGoogle広告を活用し、大きな成果を出しました。LOWYAが特に力をいれたのは、ショッピング広告において、商品情報をわかりやすく整えることです。
画像やタイトル、商品説明を整備し、広告の品質を高めていった結果、検索結果に表示されるショッピング広告のクリック率は飛躍的に向上し、費用対効果も向上しています。
成果
- クリック率(CTR)が42%増加
- インプレッション数が45%増加
- 広告費用対効果(ROAS)が17%改善
ワンダーマーク
雑貨の企画・販売を行うワンダーマークは、自社ブランドの「Ambiance Paper(アンビアンスペーパー)」という撮影用の背景紙のオンライン販売を強化するために、Google広告を導入しました。専任サポートのアドバイスを受けながら少額予算からスタートし、GoogleのAIによるキーワード提案を取り入れ、潜在層にまでリーチを広げることに成功しました。
特に「撮影」や「写真」といった直接的なキーワードに加え、「ファンシー」のような新しいキーワードをAIが提案したことで、これまで想定していなかった層からのアクセスも増加しました。その結果、広告運用開始からわずか1週間で効果が現れ、1年後にはオンライン売上が大きく成長しました。
成果
- オンラインショップの売上が前年比150%に増加
- コンバージョン数が8.4%増加
Facebook広告の成功事例
PAL CLOSET
ファッション通販サイトPAL CLOSET(パルクローゼット)は、Facebook広告を活用して新規顧客の獲得に成功しました。従来は紙媒体中心のマーケティングを行っていましたが、オンライン販売の拡大にあわせてデジタル広告へ注力をはじめ、効果的にリーチを広げました。
キャンペーンでは、ブランドの魅力を伝える動画広告を中心に活用し、Metaの自動最適化機能(Advantage+ ショッピングキャンペーン)を導入しています。複数のクリエイティブの中から成果につながるものをAIが自動で選ぶため、効率的な配信の実現に成功しています。
結果として、広告経由での新規顧客獲得コストは大幅に改善し、売上効率も高まりました。
成果
- 顧客獲得単価(CPA)が50%削減
- 広告費用対効果(ROAS)が2.1倍に向上

Oisix
Oisix(オイシックス)は、Facebook広告のターゲティングを活用することで、お試しセットの購入を前年比で7.6倍に増やすことに成功しました。さらに、ECサイトへの新規訪問者も1.7倍に伸び、定期会員への転換率も改善しています。
取り組みの中で特に効果的だったのは、Facebook広告の「コアオーディエンス」機能を使用し、30〜50代の主婦層をターゲットオーディエンスに設定したことです。このとき、年齢や性別だけでなく興味関心もターゲティングに含めました。
広告クリエイティブには、食材がたっぷり入った箱や、たくさんならんだ料理などの写真を使い、価格を明示することで、”おトク感”をわかりやすく伝えています。
成果
- お試しセットの購入数が前年比 7.6倍に増加
- ECサイトの新規訪問者数が70%増加
- 定期会員への転換率も改善

北欧、暮らしの道具店
生活雑貨やアパレルの人気ECサイト、「北欧、暮らしの道具店」は、自社アプリの利用者を増やすためにFacebook広告を活用しました。アプリをインストールしてもらうのが目的だったため、Facebook広告の自動最適化機能を使って、誰にどんな広告を出すかをAIに任せる方法を選びました。
その結果、手作業で広告を出していたときよりも効率が大きく改善され、より多くの人に広告を見てもらえるようになりました。しかも、広告費用は下がりながら、アプリのインストール数はしっかり伸びるという成果が得られました。
成果
- アプリインストール単価が23%削減
- 広告表示コストが44%削減
- 広告クリック単価が26%削減

まとめ
Google広告とFacebook広告は、どちらも代表的なWeb広告ですが、それぞれ効果的な場面が異なります。Google広告は検索キーワードに連動して「今すぐ買いたい」顧客に届きやすく、短期的な売上につながる力があります。一方、Facebook広告は、ユーザー属性によるターゲティングでこれからファンになりそうな人にアプローチできるため、認知拡大や長期的な顧客づくりに効果的です。
実際の運用では、たとえばFacebook広告でブランドを知ってもらい、その後にGoogle広告で検索してきた顧客を取り込む、といったように両方の広告を組み合わせることも考えられます。
広告の出稿を検討している人は、今の自分のビジネスには、どちらの広告が合っているかを見極めるところから始めてみましょう。
Google広告とFacebook広告でよくある質問
Google広告とFacebook広告、どちらを選ぶべき?
短期的な売上を狙うならGoogle広告、認知拡大や新規顧客獲得を狙うならFacebook広告が適していると考えられます。両方を組み合わせることでさらに効果を高めることも可能です。
Google広告とFacebook広告を自分で運用することはできる?
Google広告もFacebook広告も自分で運用することは可能です。Facebook広告なら「投稿を宣伝」で簡単に出稿でき、Google広告にも自動運用してくれる機能や詳細なFAQが用意されています。
Google広告のリマーケティングとFacebook広告のリターゲティングの違いは?
Google広告のリマーケティングとFacebook広告のリターゲティングは、どちらも「一度自社サイトに訪れたユーザーに再び広告を表示する仕組み」ですが、配信できる場所やアプローチの方法に違いがあります。
Google広告のリマーケティングは、検索結果に加えてYouTubeや提携サイト(Googleディスプレイネットワーク)にも広告を配信できるのが特徴です。ユーザーが他のサイトを見ているときにも再接触できるため、比較・検討段階のユーザーを逃さず購買意欲を高めることができます。
一方でFacebook広告のリターゲティングは、FacebookやInstagramといったSNS上で配信されます。日常的に利用されるタイムラインやストーリーズに広告が表示されるため、視認性が高く、ブランドの想起や購買を迷っているユーザーの背中を押すのに効果的です。
文:Taeko Adachi





