卸値で商品を仕入れる方法がよくわからない方もいるでしょう。実際に調べたとしても、卸売業者から誰でも購入できるのか、仕入れに許可は必要なのか、どこで商品を買えるのかなど、さらに疑問が増えてしまうケースも珍しくありません。
誤った判断で無駄にコストをかけてしまわないために、必要な情報をきちんと理解しておく必要があります。本記事では、商品を卸値で仕入れるうえで欠かせない知識と信頼できるサプライヤーを紹介します。
卸値での仕入れとは?

卸値とは、メーカーや卸売業者が、商品をまとめて購入する小売業者向けに設定した取引価格のことです。大量に仕入れることを前提として1点あたりの価格が抑えられており、その後個別に販売する際に小売業者が利益を上乗せすることで、消費者が手に取る際の小売価格となります。
小売業者が消費者へ販売するまでの一般的な流れは、次のとおりです。
- 製造業者が商品を生産し、卸売業者へ大量に販売する
- 卸売業者が小売業者に対して、比較的小規模の単位で商品を販売する
- 小売業者が消費者に向けて商品を1点ずつ販売する
もっとも、上記の流れが常に当てはまるわけではありません。小売業者が製造業者から仕入れる場合もあれば、製造業者や卸売業者が消費者に直接販売するケースもあります。また、Apple(アップル)のように自社で製品の生産から代理店向けの卸売業者、さらに直営店で販売する小売業者としての役割までもっている企業もあります。
卸売業者の種類

卸売業者は、大きく分けて次の3種類に分類されます。事業を成功させるためにも、それぞれの違いを理解しましょう。
一次卸業者(仲買・元卸)
一次卸業者は、生産者やメーカーから商品を直接仕入れて卸売を行う業者のことです。販売先は主に市場や大きな卸売業者で、食品分野では、青果や水産物といった第一次産業の生産物などが対象となります。小規模な生産者も取引相手として商品を「集める」役割を担い、産地と市場をつなぐ業種といえるでしょう。
二次卸業者(仲卸)
二次卸業者は、一次卸業者から商品を仕入れて事業者に販売する業種です。例えば、市場で買い付けを行う業者などが該当し、流通に載せるための「中継役」を担います。なかには自社で加工や小分けをして、付加価値をつけてから流通させるケースもあります。
三次卸業者(問屋)
三次卸業者は「最終卸」とも呼ばれ、二次卸業者から商品を仕入れて地域のスーパーや商店といったリセラーに「届ける」役割を果たしています。消費者が実際に手に取る形となった商品を取り扱っているため、生活にも関わりの深い業種です。
卸値で商品を仕入れるまでの流れ

1. 必要な資格や保険を確認する
卸値で商品を仕入れて販売するにあたって、資格や許認可が必要となる場合もあります。たとえば、食品を販売する場合は食品衛生責任者の資格や営業許可、酒類を取り扱う際には通信販売酒類小売業免許、化粧品を扱う場合は製造販売業の許可が必要です。中古品の販売では古物商許可が求められるため、転売ビジネスやせどりを行う際には必須となるでしょう。また、輸入品については国内規制や国際条約の対象となる場合もあります。
また、予想外のトラブルに備えて保険に加入することも検討してみてください。事業全体で起こりうるトラブルに備える「商業保険」や、配送中に商品が壊れたり紛失したりしたときに補償してくれる「貨物保険」などがあります。保険に加入しておけば、不測の事態で生じた損害を最小限に抑えられるでしょう。
2. 仕入れる商品を決定する
仕入れる商品を決定する際には、顧客の嗜好や求めているものを正確に把握する市場調査が欠かせません。GoogleトレンドやSNSなどを活用すれば、人気の商品や注目されていない分野を把握できます。また、競合がどのような商品を扱っているかを確認し、それより安価に、あるいは品質面で優れたものを扱えるかをあわせて検討するとよいでしょう。
市場調査を踏まえて、商品ラインナップのコンセプトや専門分野を明確にすることも大切です。専門分野を決めることで仕入れや販売の方向性が定まり、マーケティングを効率的に進めやすくなります。
3. 仕入れ先を決める
仕入れ先を決める際は、取引先候補の運営方針が明確であるか、不透明な取引や不誠実な行為がないかを必ず確認し、疑問点があれば遠慮なく質問しましょう。既存顧客の評価やレビューサイトも有効な判断材料となります。可能であれば、既存顧客から直接話を聞いてみましょう。取引先候補のサポート体制も、判断材料のひとつとなります。知識や経験を活かして販売促進のサポートを行ってくれる業者であれば、事業を軌道に乗せやすくなります。
加えて、決済に関する情報もあわせて調べておく必要があります。卸値で商品を仕入れる場合、 手続きが複雑なケースも考えられます。取引の仕組みがシンプルかどうかもあわせて確認しましょう。
なお、海外の卸業者と取引する際は関税や輸入税、送料なども考慮に入れる必要があります。国や品目によって税率が異なるため、事前に調べて採算に影響が出ないようにしましょう。
4. 仕入れ先に連絡する
取引したい仕入れ先をいくつか選んだあとは、詳細を確認するために連絡を取ります。その際、下記について質問すれば、自社のビジネスに適しているかどうかを判断できるでしょう。
- 商品の製造場所
- 商品の納期
- 遅延が発生した際の対応
- 最低注文数量
- 会社の運営年数
- 消費者に対する直接販売の可否
- サンプル購入の可否
- 不良品・破損品などの返品条件
- 注文方法
なお、卸売業者やサプライヤーによっては、ウェブサイトのFAQページで上記について回答している場合もあります。問い合わせる前に、各社サイトを確認しておきましょう。
5. 商品を仕入れる
卸業者から商品を仕入れる前に、取引先と商品の仕様や数量、納品時期、契約条件などをすり合わせます。そのうえで、商品の数量や品名、卸売価格、納品予定日を詳細に記載した発注書を作成しましょう。
支払い条件は、前払いや翌月末払いなどがあります。キャッシュフローを考慮し、自社にとって負担の少ない条件になるよう交渉することも必要です。輸送を自社で手配する場合は、通関や輸送書類を含め、複雑な物流を扱える運送業者に依頼すると手間を減らせます。
また、注文した商品が届いたら、すぐに状態を確認しましょう。数量に誤りがないか、破損や欠陥がないかを丁寧に点検します。問題が見つかった場合は、発注書や契約条件をもとに取引先へ連絡し、返品や交換について相談してください。
卸売商品の仕入れ先を見つける方法

商品を卸値で仕入れる際、どこで仕入れ先を探せば良いかわからないというケースも多いでしょう。ここでは、信頼できるサプライヤーに出会いやすい方法を紹介します。
仕入れサイトやBtoBマーケットプレイスを利用する
さまざまな商品を卸値で購入できる仕入れサイトや、販売店とブランドのマッチングを担うBtoBマーケットプレイスを利用するのもよいでしょう。利用できるサイトには、次のようなものがあります。
- orosy(オロシー):小規模なメーカーやブランドなど、他では見つからない商品の取り扱いをコンセプトとするBtoBマーケットプレイス
- 商材王:家具やインテリアに特化した卸サイトで、オリジナル商品を自社企画で製造しているのが強み
- スーパーデリバリー:アパレルや雑貨を中心に扱う事業者専用の仕入れサイトで、200万点を超える商品を掲載
- シイレル:食品分野に特化しており、無在庫のドロップシッピングや1点からの発注に対応
- NETSEA(ネッシー):国内最大級の卸売サイトで、アパレルから雑貨、冠婚葬祭用品やミリタリーグッズといったニッチなジャンルまで網羅
- TopSeller(トップセラー):在庫を持たずに約30万点の商品を取り扱える仕入れサイト
- MDS BtoB(エムディーエスビートウービー):文具や雑貨に特化したBtoBサイトで、筆記具や手帳、包装資材などを取り扱っている
- Cmall(シーモール):アクセサリーやファッション雑貨に強い中国系サプライヤーで、1対1の日本語サポートがついた代行サービスを利用できる
- AliExpress(アリエクスプレス):中国発の国際通販サイト。日本語対応やPaypal(ペイパル)などの豊富な決済手段に加え、定期的な割引セールやクーポン配布があり、低価格で商品を仕入れやすい点が魅力
口コミや知人からの紹介で見つける
口コミで仕入れ業者を見つける方法も有効です。すでにサービスを利用したことのある人の意見を参考にできるため、情報に信ぴょう性があります。取引先や知人におすすめの業者を尋ね、名前が何度も挙がるサービスに注目しましょう。複数人が推薦する業者であれば、信頼できる可能性が高いと考えられます。
ECフォーラムや展示会に参加する
仕入れが初めてで身近に相談できる人がいない場合は、ECフォーラムや展示会に参加するのも有効な手段です。ここでは現役の小売事業者が情報交換をしており、卸業者やメーカーも新規の取引先を求めて参加しています。そのため、新しいパートナーとつながるきっかけになるでしょう。
日本で利用できるECフォーラムはECマスターズフォーラム、EC業界向けの展示会ではイーコマースフェア東京、EC通販支援 EXPOなどがあります。
Facebookで卸売業者とつながる
Facebook(フェイスブック)でも、卸売業者やメーカーとつながることができます。さまざまなメーカーの公式アカウントが存在しているのはもちろん、業界関係者が情報交換を行っているFacebookグループに参加すれば、コミュニケーションを通して信頼できる取引相手に出会える可能性もあります。もちろん、実際に取引を始める際にはFacebookの外でも情報収集を行い、実在する事業者かどうかを確かめ、あわせて評判や取引実績も調べて判断しましょう。
Googleで検索する
ビジネスを始めたばかりで仕入れ先を見つけたい場合には、Google(グーグル)やBing(ビング)といった検索エンジンで取り扱いたい商品名やジャンルとともに「卸売」「問屋」「サプライヤー」といったキーワードで検索してみましょう。ただし、検索結果の上位に出てくる業者が必ずしも最適とは限りません。検索で見つかりやすい業者の商品は、競合も利用しており差別化が難しいかもしれません。卸値だけで判断せず、
まとめ
信頼できる仕入れ先を見つけるまでに時間や労力がかかりますが、粘り強く取り組めば利益につながる商品を扱えるようになります。事前に十分な調査を行い、価格や品質を比較検討すれば、自社にとって条件のよい商品を見つけられるでしょう。
仕入れるアイテムによっては、許可や登録が必要になるケースがあります。取得の条件や方法などを確認し、必要であれば必ず取得しましょう。
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よくある質問
卸値で商品を仕入れるまでの流れは?
- 必要な資格や保険を確認する
- 仕入れる商品を決定する
- 仕入れ先を決める
- 仕入れ先に連絡する
- 商品を購入する
信頼できる卸売サプライヤーは?
- orosy
- 商材王
- スーパーデリバリー
- シイレル
- NETSEA
- TopSeller
- MDS BtoB
- Cmall
- AliExpress
卸売りと仕入れの違いは?
卸売りも仕入れも同じ取引のことを指しますが、視点が売る側と買う側で異なります。卸売りはメーカーから商品をまとめて買い取り、小売店や事業者に個別に売ることを指します。
一方、仕入れは小売店や事業者が販売するための商品や材料を買い入れることです。注文や価格交渉、納品チェックなども仕入れに含まれます。つまり、同じ取引でも立場によって呼び方が変わるということです。
個人事業主でも卸値で商品を仕入れられる?
個人事業主でも、卸値で仕入れることはできます。仕入れサイトやBtoB向けのサービスのなかには、個人事業主の利用を認めているところがあります。ただし、ネットショップを開設していることや屋号を持っていることが条件になる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
卸値で商品を仕入れる際に必要な資格は?
特別な資格は必要ありませんが、扱う商品によっては許可が求められます。中古品を売るせどりや転売ビジネスなら古物商許可、お酒を扱うなら酒類販売業免許、食品なら保健所の営業許可や届出が必要です。化粧品の場合も製造や販売に関する許可が決められています。輸入品を販売する際には税関や検疫の手続きが必要になることもあります。どのような商品を扱うかを決めたあとは、必要な手続きを確認して準備しましょう。
文:Yukihiro Kawata





