事業を成功させるためには、顧客ニーズを自社商品に反映し、市場で高いシェアを獲得することが欠かせません。商品開発には多くのアプローチ方法がありますが、その中でも「商品ラインの拡張」は特に効果的な施策といえるでしょう。
この記事では、商品ラインの拡張の概要やメリット、成功事例や成功させるコツをわかりやすく解説します。ぜひ、参考にしてみてください。
商品ラインの拡張とは

商品ラインの拡張とは、既存と同じカテゴリー内に新しいバリエーションの商品を追加する戦略のことです。具体的には、すでに販売している商品に以下のような要素を加えて拡張します。
- 新しいフレーバー
- 異なる形状の商品
- 新しい色
- 異なる成分
- 異なるサイズ
- 新しい商品パッケージ
例えば、すでに販売するジュースより低カロリーの商品を開発したり、スキンケアブランドが敏感肌用製品として無香料タイプなどを新発売したりするケースが商品ラインの拡張に該当します。これは、変化し続ける消費トレンドや顧客ニーズを満たしたり、すでに市場内で確立されるブランド認知度を活かして市場シェアを拡大したりする目的で行われます。
商品ラインを拡張するメリット

ブランド認知度を低リスクで向上できる
商品ラインの拡張は、新しい商品カテゴリーへ参入するよりも低いリスクでブランド認知度やシェアを高められます。消費者はすでにブランドを知っていたり、ブランドへの信用があったりするため、全く認知度がない状態と比べて、販促コストを抑えながら新商品を広めることができるでしょう。
収益機会を増やせる
企業が持つブランド価値を最大限に「活用しきる」ことで、既存の知名度・信頼・顧客基盤を有効活用でき、新たな投資を最小限にしながら収益機会を大きく広げられます。ブランドが築いてきた価値を多方面に展開することで、新規顧客の獲得や関連商品の販売促進につながり、事業全体の成長スピードを加速させる効果が期待できるでしょう。
顧客満足度の向上につながる
商品ラインの拡張により、同カテゴリー内で新しいバリエーションの商品が増えることで、顧客は自分の好みや用途により合った商品を選べるようになり、顧客満足度や購入意欲が高まりやすくなります。味・サイズ・機能など多様なバリエーションを用意することで、「自分にぴったり」を見つけられる確率が高まり、結果として顧客ロイヤルティ向上にもつながります。
また、商品ラインの拡大によって選択肢が増えることは、これまで取りこぼしていた顧客ニーズにも対応でき、新しい顧客層を獲得できる可能性を高めます。
競合優位性を生み出す
商品ラインの拡張によってバリエーションを増やすことは、競合優位性を確立するうえでも有効です。これにより、店頭やオンライン上での棚占有率を拡大し、競合商品の入り込む余地を減らすことができます。また、顧客の細かなニーズに応える幅広いラインアップを持つことで、「このブランドなら自分に合う商品が見つかる」という安心感を生み、競合他社への乗り換えを防ぐことにもつながるでしょう。
ライン拡張とブランド拡張の違い

ライン拡張とブランド拡張は、どちらもブランドを成長させるための戦略ですが、具体的な定義と目的が異なります。具体的には以下のとおりです。
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ライン拡張:すでに販売している商品の味・色・サイズ・機能などを変えてバリエーションを増やす手法。既存市場でのシェア拡大、顧客の多様なニーズへの対応が目的。
例:コーラのゼロシュガー版やシャンプーの髪質別ラインなど。 -
ブランド拡張:既存ブランド名を使って新しい市場へ進出するための手法。新規市場の獲得、ブランド資産の活用が目的。
例:アパレルブランドが化粧品を発売するケースや、食品メーカーが健康サプリに参入するケースなど。
企業の成功事例
Coca-Cola(コカ・コーラ)
130年以上の歴史を持つCoca-Cola(コカ・コーラ)は、歴史の中で商品ライン拡張で商品ライン拡張を行ってきました。国内で販売される商品は以下のとおりです。
- コカ・コーラ
- コカコーラゼロ
- コカコーラゼロカフェイン
- コカコーラプラス など
ペットボトルや缶・瓶など様々なパッケージで販売したり、複数サイズを設けたりして、多様な顧客ニーズに対応しています。
日清食品
日清食品は「カップヌードル」ブランドで、様々な味の商品を販売してラインを拡大しています。
- シーフード
- カレー
- チリトマト
- シンガポール風ラクサ
- 高たんぱく&低糖質さらに塩分控えめ など
またミニサイズ・ビッグサイズなど、複数サイズでも製品ラインを拡張し、インスタント麺の市場で独自かつ強固なポジションを築いています。
UCC上島珈琲
UCC上島珈琲の「職人の珈琲」シリーズは、まろやか・深いコク・芳醇な香りなど、味わいの違うライン拡張により、好みやシーンに合わせて選びやすいシリーズに成長しました。現在は12年連続で売り上げ1位を達成し、家庭用コーヒー市場で高いシェアを持っています。
商品ラインの拡張を成功させるためのコツ

ブランドのミッションを明確にする
商品のライン拡張を成功させるためには、まずブランドとしてのミッションを明確にすることが重要です。ミッションが曖昧なままバリエーションを先に増やしてしまうと、方向性がぶれ、顧客へ「なぜこの商品が必要なのか」が伝わりにくくなります。一方で、ブランドが大切にしている価値や提供したい顧客体験を明確にしておけば、どのようなライン拡張が適切なのか判断しやすくなります。
また、ミッションを基準にすることで、ライン全体に一貫性が生まれ、顧客に「このブランドは自分のニーズを理解している」と感じてもらえるでしょう。
顧客のフィードバックを集める
商品のライン拡張を成功させるうえで、顧客のフィードバックを継続的に集めることが欠かせません。実際に商品を使う顧客の声は、改良すべき点や新たに求められているバリエーションを知るための信頼できる情報源です。SNSのコメント、購入後レビュー、カスタマーサポートへの問い合わせなど、多様な接点を設けて意見を収集することで、潜在ニーズや不満点を把握できます。
また、顧客満足度などが調査できるShopifyのアンケートアプリなどを使って、自身が運営するネットショップで商品を購入した顧客に下記内容を含むアンケートを送ってみましょう。
アンケート内容例:
- 商品の良かった点
- 購入のきっかけ
- 希望する新商品
またこれらのインサイトを利用して、ランディングページや商品ページなどで顧客の声を紹介することも、顧客からの信頼向上に効果的です。
新しい商品ライン拡張を少量でテストする
商品のライン拡張を通して新開発された商品が、市場でどれだけ受け入れられるかを判断するため、まずは限定的にテスト導入する事でリスクを抑えることができます。少量によるテストは、以下のメリットをもたらします。
- 市場投入後の成功率アップ:事前にターゲット顧客を巻き込んでさまざまなフィードバックをもらえれば、新商品販売後の失敗リスクを下げることができます。
- コスト削減:事前に新商品を検証し欠陥を特定できれば、新商品販売後に発生する品質変更のためのコストなどを削減できます。
- 顧客満足度の向上:製品テストを通じて顧客の意見を把握しニーズをもとに製品を改善することで、より顧客満足度の高い商品が提供できます。
まとめ
商品のライン拡張は、新商品の開発を通してブランド認知度や顧客満足度を向上させる有効的な戦略です。Coca-Colaや日清食品など、高い市場シェアを誇る企業も商品開発の際の手段として実践しており、競合優位性の確立や収益機会の増加など様々なメリットをもたらします。
一方で商品ラインの拡張はブランドの一貫性を見失ったり、顧客ニーズを満たしていない商品を流通させてしまったりするデメリットもあります。ミッションを明確にしてからライン拡張に着手し、「顧客のフィードバックを集める・少量テストを事前に行う」などの取り組みを通して、リスクを最小限に抑えましょう。
よくある質問
製品ラインの拡張とは?
商品ラインの拡張とは、既存の商品カテゴリー内で新しいバリエーションの商品を追加する戦略のことです。
ライン拡張とブランド拡張の違いは?
- ライン拡張:すでに販売している商品の味・色・サイズ・機能などを変えてバリエーションを増やす手法。
- ブランド拡張:既存ブランド名を使って新しい市場へ進出するための手法。
ライン拡張のメリットは?
- ブランド認知度を低リスクで向上できる
- 収益機会を増やせる
- 顧客満足度の向上につながる
- 競合優位性を生み出す
ライン拡張のデメリットは?
- ブランド価値の希薄化につながる: 商品バリエーションが増えると、消費者はブランドアイデンティティを見失う可能性があります。
- 市場が混乱する: 選択肢が増えたり、似たような商品が多すぎたりする場合に、購入の意志決定が難しくなることがあります。
- リソースが分散する: 複数の商品ラインが生まれるため、その分人材や資金が分散し、主要商品の品質管理がおろそかになる可能性があります。
- カニバリゼーションを起こす:新商品が成功しても、既存商品の顧客を奪ってしまうことで、ブランド全体の売り上げが伸びない可能性があります。
商品ラインの拡張を成功させるためのコツは?
- ブランドのミッションを明確にする
- 顧客のフィードバックを集める
- 新しい商品ライン拡張をテストする
文:Ryutaro Yamauchi





