Facebook(フェイスブック)広告(Meta広告)で成果を出すには、ただ広告を打つだけではなく、戦略的な工夫が欠かせません。最初は大きなコストをかけずに始められる点がFacebook広告の大きな特徴ですが、もっと多くの人に届けるための方法は、単純に広告費を増やすだけではないのです。
ただ費用を増やすだけだと、無駄が増えて、これまでうまく届いていた人にリーチできなくなってしまう可能性もありますが、広告運用のコツを押さえておけば、コストを最適化しながら、これまでリーチしていた人にも新しい人にも広告をバランスよく届けられるようになります。
この記事では、現状を正しく分析しつつ、中長期的な視点でFacebook広告を運用し、効果を改善していくための12のコツをわかりやすく紹介します。
目次
1. ターゲティングの種類を理解して使い分ける

Web広告では、誰に広告を届けるかが、成果を大きく左右します。Facebook広告では、そのターゲティング方法を「オーディエンス」という形で設定します。主な種類は次の3つで、それぞれ目的に応じた設定を使いこなすことが重要です。
- コアオーディエンス:年齢、性別、地域、職業、興味関心など、基本的なユーザー属性を指定できる機能です。新しい市場を開拓したいときや、まだデータが少ない初期段階で役立ちます。
- カスタムオーディエンス:自社の顧客データやサイト訪問者のデータをもとに、既存顧客や見込み客に広告を配信する機能です。過去の購入者やメルマガ登録者に再アプローチできるため、コンバージョン率が高まりやすいのが特徴です。
- 類似オーディエンス:カスタムオーディエンスをもとに、似た特徴を持つ新しいユーザーを自動的に抽出する機能です。既存顧客に近い層に効率よくリーチできるので、スケールに最適です。
この3種類は、それぞれ単体でも活用できますが、段階に応じて組み合わせて使うのが効果的です。たとえば、最初はコアオーディエンスで広く配信し、反応した人をカスタムオーディエンス化するのが一般的です。
Facebook広告の配信先を拡大させたい場合は、カスタムオーディエンスを元に新規の類似オーディエンスを作成するのが効果的です。最初は、類似オーディエンスの範囲を1%に設定して配信を始めてみましょう。この場合、カスタムオーディエンスに似ている上位1%のユーザーがターゲットとなります。広告の配信範囲を拡大したい場合は、この設定を3%〜5%に広げてみましょう。似ている度合いはやや下がりますが、対象となるユーザーの数が増え、より多くの人に広告を届けられます。
2. 複数のターゲティングを並行してテストする

1つのターゲティング設定に依存せず、複数の条件を同時に試すことで、どの層がもっとも成果につながるかを比較できます。たとえば、年齢や地域、興味関心などを変えた広告セットを並行して走らせると、思わぬ属性のオーディエンスが高いパフォーマンスを示すこともあります。
たとえば次のような分け方が考えられます。
- 地域ごとに分ける(都市部と地方など)
- 年齢層で分ける(20代、30代、40代など)
- 興味関心のカテゴリを変える(ファッション、フィットネス、ガジェットなど)
複数の条件を同時にテストし、成果が出るケースを早期に特定できれば、広告全体の安定した成長につながります。
3. ターゲット層を切り分けて分析する

配信先を増やしていくと、ブランドに関心を持ってくれるユーザー(オーディエンス)の数も増えていきます。そこでFacebook広告を効率的に運用していくためには、オーディエンスの属性だけでひとまとめに広告を配信するのではなく、どんな行動をとったかによって分類(セグメント化)することで、最も効果の高い層に予算を集中することができます。
たとえば、次のようなセグメントで分類ができます。
- 動画視聴者:動画を25%以上見た人、50%以上見た人、75%以上見た人
- ページをクリックした人:過去30日、60日、180日以内にアクションした人
- ウェブサイト訪問者:過去30日、60日、180日以内に訪れた人
- コンテンツ閲覧者:商品ページなどを7日、30日、60日以内に見た人
- カート放棄者:カートに商品を入れたが、7日、30日、60日以内に購入していない人
セグメントごとに広告セットを作り、それぞれに予算を割り当ててテストすると、「どの層が最も高い収益を生むか」が明確になります。成果が大きい層がわかったら、その層に予算を集中させ、専用キャンペーンを立てて強化しましょう。
4. 配信エリアを海外に広げる

越境ECなどに対応しているのであれば、広告の配信エリアを海外に広げるのも効果的です。新規の需要を獲得できるのはもちろん、競合の少ない地域では広告費用も下がりやすくなります。ドロップシッピングを活用していたり、海外発送の体制が整っていたりする場合は、国内だけでなく海外市場への配信も積極的に検討しましょう。

また、国内で集めた顧客データは海外展開にも活かせます。たとえば類似オーディエンスのサイズを1%に設定し、複数の国でまとめてターゲティングすると、競争の激しくない地域の類似オーディエンスに効率よくリーチできます。
なお、海外向け広告を配信する際は、言語・通貨・配送条件を必ず現地に合わせることが重要です。広告やランディングページ(LP)が現地仕様になっていないと、せっかくの配信が成果につながらない恐れがあります。
5. 情報収集期間を意識して予算を増やす

Facebook広告の配信システムには、「この広告をどんな人に見せるか」を自動調整するアルゴリズムが組み込まれています。またこのアルゴリズムには、配信先を最適化するための「情報収集期間」が設けられています。新しい広告の配信をスタートさせた直後の情報収集期間中は効果が落ちる可能性が高いため、効率的にFacecbook広告を運用していくには、十分なデータを集められるだけの予算と期間を用意することが大切です。
情報収集期間の適切な予算計算方法
Facebookのアルゴリズムが情報収集を終えるには、購入や登録といった成果が目安として50回ほど必要です。また、その間は管理画面上で広告セットの「配信」列に「情報収集中」と表示されます。この期間中に必要な1日の予算の目安は、次の計算式で求められます。
平均獲得単価(CPP) × 50 ÷ コンバージョンウィンドウの日数
また、この計算で必要になる数字は以下の通りです。
- CPP(平均獲得単価):1件の成果を得るのにかかった平均コスト
- コンバージョンウィンドウ:広告をクリックしてから成果が出るまでの期間
コンバージョンウィンドウは、すぐに購入されやすい商品なら1日、洋服など比較検討されやすい商品なら7日、家具や家電など高額商品なら30日を目安に設定します。CPPが 3,000円 で、コンバージョンウィンドウを7日に設定している場合、情報収集期間中必要な1日あたりの予算の目安は、3,000円 × 50 ÷ 7 = 21,400円になります。
情報収集期間中は成果が安定しないこともありますが、小さな調整を繰り返すと学習がリセットされてしまいます。焦らずに一定期間は様子を見ることが大切です。
6. A/Bテスト機能を活用する

A/Bテストとは、広告のクリエイティブ(画像やテキスト、配信方法など)を変えた複数の広告セットで効果の高さを比較する手法です。Facebook広告のA/Bテストツールを活用すると、自動的に結果を分析し、効果の高い広告により多くの予算を振り分けてくれます。「どの広告が一番成果につながるか」を見極めながら運用できるため、新しいオーディエンスやクリエイティブを試すときには特に有効です。
7. 成果の出た広告を別のオーディエンスに向けて配信する

広告の配信先を拡大させたいときは、まずすでに成果が出ている広告を複製して、別のオーディエンスに配信するのがおすすめです。複製した広告はオーディエンスの情報収集と調整が進んでいるため、高めの予算を割り当てても安心です。ターゲットをずらして配信すれば、新しい層にリーチすることができます。
またFacebook広告では、「インプレッション数が一定以上」「購入数が〇件以上」などの条件に応じて、通知が来る設定をすることができます。自分で条件を設定しておき、条件を達成した広告があれば、複製して別のオーディエンスに向けて配信してみましょう。
8. 成果がでなかった広告のターゲティングや配信タイミングを変える

広告がうまくいかない理由は、必ずしもクリエイティブそのものにあるとは限りません。一度成果が出なかった広告を複製し、配信したターゲティングや配信タイミングを変えると、成果が出るというケースもあります。
たとえば、条件を変えて、次のような調整を行いましょう。
- ターゲティングを変える:年齢層や地域、興味関心の設定を少し広げたり絞ったりしてみましょう。
- 配信のタイミングをずらす:オーディエンスの行動を想像して、配信する曜日や時間帯を変えてみましょう。B2Bなら企業の営業時間である平日昼間、B2Cなら、通勤時間にあたる夕方〜夜や、週末が有効な場合もあります。
- オーディエンスを更新する:新しい類似オーディエンスを追加して、試してみましょう。
条件を変えるだけで、前回は反応がなかった広告が意外な成果を出すこともあります。
9. クリエイティブを変えて広告疲れを防ぐ

同じ広告を繰り返し見せると「広告疲れ」で効果が落ちてしまうので、広告のパフォーマンスを維持・改善しながら運用していくには、定期的にクリエイティブを変更することが重要です。
広告疲れとは、ユーザーが同じ画像や動画を見慣れてしまい、クリック率や購入率が落ちる現象のことです。広告疲れが進むと、CPC(クリック単価)やCPM(広告を1,000回表示させるコスト)が上昇して広告コスト全体が悪化する原因にもなります。
これを防ぐには、次のような工夫で、定期的にクリエイティブを更新することが重要です。
- 画像を差し替える
- 見出しや本文コピーなど、広告のテキストを変える
- 季節やキャンペーンに合わせて新しいビジュアルを作る
- 別の動画フォーマットを試す
小さな変更でも新鮮さを保つことができます。
10. 広告の表示場所ごとにクリエイティブを最適化する

FacebookやInstagram(インスタグラム)などの有料広告では、広告が表示される場所(プレースメント)が複数あり、場所に応じて表示サイズなどが変わる可能性があります。たとえばFacebookとInstagramで同時に広告を出稿しながら、1種類の画像や動画しかないと表示が不自然になり、せっかくの広告の効果が落ちてしまうことにもつながります。
フィード、ストーリーズ、リール、デスクトップ、モバイルなど、配置ごとに最適化したクリエイティブを用意することが大切です。画像は横長(1.91:1)、正方形(1:1)、縦長(9:16)を使い分け、動画は通常用の横長だけでなく、Instagramストーリーズ向けに15秒の縦長動画を用意しておきましょう。
配置ごとにクリエイティブを最適化すると、どの端末でも、どのプラットフォームでも、広告が自然に表示され、コンバージョン率の向上につながります。また、競争の少ない配置を活用することにもつながるため、結果的に費用を下げる効果も期待できます。
11. ファネルを意識して広告を設計する

広告を効果的に拡大していくためには、セールスファネルを意識して広告を組み立てることが重要です。
セールスファネルとは、ブランドの認知から購入までの流れを「じょうご」にたとえて、認知、興味関心、購入検討の三段階に分けて考える方法です。ファネルの上部ほど人数が多く、購入までの距離は遠く、下部ほど人数が少なく、購入までの距離が近いという考え方です。
ファネルの考え方を取り入れると、「どんな人に、どのタイミングで、どんな広告を見せるか」が整理され、効率的に成果を伸ばすことができます。
ToFu(Top of the Funnel = ファネルの上部):認知を広げる広告
ファネル上部の見込み客を集めるには、まず認知を広げて関心を持ってもらうことが目標となります。この層を集めるには、次のような広告が効果的です。
- 商品の魅力を伝える短い動画広告
- ブランドストーリーを紹介する記事広告
- サイトへの訪問やクリックを促す広告
こうした広告を見て興味を持った人は、いわゆる「ウォームオーディエンス(ブランドを知っている層)」へと進みます。
MoFu(Middle of the Funnel = ファネルの中間部):関心を高める広告
ファネルの中部にいるウォームオーディエンスは、すでにブランドを知っていて関心を持っている人たちです。動画を視聴したり、サイトに訪問したり、商品をカートに入れた経験があるなど興味関心を持っている層のため、ブランドへの安心感を高められる次のようなクリエイティブが効果的です。
- 顧客の声(レビューや体験談)の紹介
- よくある質問(FAQ)に答える広告
- 商品の強みや安心感を伝える広告
また、過去30日以内にサイトを訪れた人に再配信する、カゴ落ち状態の人にクーポンを提示するといった、リターゲティング広告も効果的です。
BoFu(Bottom of the Funnel = ファネルの下部):購入を後押しする広告
ファネルの下部にいるのは、購入直前の「ホットオーディエンス」です。カート投入者や購入経験者など、最も購買意欲が高い層にあたります。「あと一歩で購入する」段階にいるため、最後の一押しをする広告が効果的です。
- 「期間限定割引」や「送料無料」などのお得なオファー
- 「在庫わずか」など購入を後押しするメッセージ
- 再訪問を促すリマインド広告
この層は人数が少ない分、広告費をかけたときのリターンが大きいのが特徴です。
12. 主要な指標を定期的にチェックする

Facebook広告の効果を改善していくには、主要な指標を継続的にチェックして、効果測定を行うことが欠かせません。特に注目すべき指標は次の4つです
- CTR(クリック率):クリック率は、広告がどれだけターゲットの興味関心を集めることができたかを示す指標です。CTRが低い場合は、広告クリエイティブやコピーの改善が必要です。
- CPC(クリック単価):1クリックあたりにかかるコストを指します。CPCが高すぎる場合はターゲティングが狭すぎるか、競合が多い市場に集中しているか、広告の配置が悪い可能性があります。
- CPA(獲得単価):1件の成果(購入や問い合わせなど)を得るためのコストを指します。高すぎる場合は、予算配分を考え直しましょう。キャンペーンの投資収益率(ROI)を判断するうえでも重要です。
- CVR(コンバージョン率):クリックした人のうち、実際に購入や申し込みをした割合を指します。CVRが低い場合は、広告だけでなく、LPにも改善余地があるかもしれません。
これらを定期的にモニタリングすれば、広告のどこに改善が必要かが明確になり、無駄な予算消化を防ぎつつ効率よくスケールできます。CPCやCPMなどFacebook広告の費用相場は市場によってブレが大きいため、週ごとなどに自社の実測値を集めていくことをおすすめします。
まとめ
Facebook広告を安定して伸ばしていくには、日々の運用の積み重ねと、計画的な拡大・改善がどちらも大切です。ターゲティングの整理や学習期間を見据えた予算管理、A/Bテストや効果測定での検証を繰り返すことで、広告は少しずつ効果が大きくなっていきます。さらに、クリエイティブの鮮度を保ち、ファネルに合わせてメッセージを出し分けることで、オーディエンスの関心を維持しながら購入につなげやすくなります。
また、成果が出た広告は複製して新しい層に広げたり、思うような結果が出なかった場合は配信タイミングやターゲティングを工夫したりと、柔軟な調整がポイントです。こうした取り組みを積み重ねることで、限られた広告費でも無駄なく成果を最大化できます。
小さな改善を繰り返しながら、効果があった施策を広げていくことが、長く安定した成長につながります。自社に合ったスタイルを見つけて、Facebook広告を安心して運用・拡大していきましょう。
よくある質問
Facebook広告の類似オーディエンスはどのくらいのサイズに設定する?
Facebook広告の類似オーディエンスを設定する場合、最初はサイズを1%に設定し、既存顧客にもっとも近い層を狙うのが一般的です。成果が安定したら3〜5%に広げると、より多くの新規顧客にリーチできます。
Facebook広告のA/Bテストはどんな内容で試すべき?
Facebook広告のA/Bテストは、仮説を立てて比較するのがポイントです。たとえば次のような5つの切り口からテストしてみましょう。
- クリエイティブ:同じオーディエンスに対して、画像・動画・テキストコピーなどを変えて比較する。
- オーディエンス:年齢層や興味関心を分けて配信し、どの層が成果につながるか検証する。
- 配信の最適化:クリック数最適化とコンバージョン最適化など、Facebook広告の最適化設定を変えて成果を比較する。
- 配置:フィード・ストーリーズ・リールなど、広告が表示される場所ごとに反応を比べる。
- 商品セット:複数の商品を扱っている場合は、商品ごとに広告を出して、どの商品がもっとも成果を生むかを確認する。
こうした比較を繰り返すことで、どの要素が成果に直結するかが明確になり、広告の精度を高めることができます。
Facebook広告の情報収集期間はどれくらい待てばいい?
一般的には「50件の成果」が集まるまでは広告効果が安定しないとされています。商品やサービスによって期間は変わりますが、約1週間は様子を見て、小さな変更を繰り返さないことが大切です。
Facebook広告の効果測定には何をチェックすればいい?
最低限チェックしたい指標は次の4つです。
- CTR(クリック率):広告がどれだけターゲットの興味関心を集めることができたかを表します。 低いときは、クリエイティブやコピーを改善しましょう。
- CPC(クリック単価):1クリックにかかるコストを指します。高いときは、ターゲティングや配置を見直しましょう。
- CPA(獲得単価):1件の成果を得るためのコストを指します。高すぎる場合は予算配分を調整しましょう。
- CVR(コンバージョン率):クリックから購入・申込につながった割合を指します。低いときは、広告のクリエイティブに加えて、 LP(ランディングページ)や購入までの導線を改善しましょう。
文:Taeko Adachi





