購入した商品を、支払いが完了する前に受け取ることができる「BNPL(Buy Now, Pay Later:今買って、後で支払う)」という支払い方式の人気が高まっており、導入するECサイトが増加しています。
本記事では、BNPLの基本的な仕組みや特徴、ECサイトが導入するメリット、さらに日本国内で代表的なBNPLサービスや利用状況と課題などについて、わかりやすく解説します。
BNPLとは

BNPL(Buy Now, Pay Later)とは、その名のとおり「今買って、後で支払う」ことができる決済方法です。クレジットカードに代わる決済方法として、近年ECサイトを中心に導入が広がっています。
BNPLはカードを持たない人でも利用できる点が大きな特徴です。サービスへの登録と簡単な審査だけで利用可能なため、手軽さや利便性から多くの消費者に支持されています。
BNPLと後払い決済の違い
BNPLと従来の後払い決済は似ていますが、仕組みにいくつか明確な違いがあります。
一般的な「後払い決済」は、購入代金を翌月または翌々月に一括で支払う方式です。その際に発生する手数料は、消費者が負担するのが一般的です。
一方でBNPLは、支払い方法の選択肢がより柔軟です。一括払いはもちろん、複数回の分割払いにも対応しており、さらに分割手数料は無料であるケースが多いのが特徴です。また、決済手数料は消費者ではなく加盟店が負担する点も従来の後払いとは異なります。
BNPLの仕組み

1. 顧客が通常どおり買い物をし、チェックアウトを開始する
顧客は通常どおりネットショップで商品を選択し、購入手続きに進みます。
2. BNPLサービスを選択する
チェックアウト画面で「BNPL」を選択します。初めて利用する場合は、簡単な会員登録が必要になることがあります。
3. BNPLサービスが、簡単な審査を行う
氏名や住所などの基本情報を入力すると、BNPL事業者が簡易的な与信審査を行い、返済能力を確認します。
4. チェックアウトが完了する
審査に通過すると注文が確定し、顧客は支払い前に商品を受け取れます。請求書が商品に同梱されるケースもあります。
5. 店舗がBNPL事業者に手数料を払う
導入店舗は、売り上げの一部を手数料としてBNPL事業者に支払います。これは一般的なクレジットカード決済と同様の仕組みです。多くの場合、BNPL事業者は決済代行会社を通じてこの仕組みを提供しています。
6. 顧客が代金を支払う
顧客は指定された期日までに代金を支払います。多くのサービスでは短期の分割払いが無利息で利用可能で、長期の返済プランを選択した場合は利息が発生します。早期に返済するほど利息負担は軽くなります。
BNPLの消費者側のメリット

1. 支払い負担の軽減
購入時に全額を用意する必要がなく、月々の分割払いにより支出を均等化できます。多くのBNPLサービスでは利息無料の分割払いが用意されているため、高額商品でも無理なく購入できます。
2. クレジットカードが不要
クレジットカードを持たない若年層や、カード利用に不安がある人やカード審査を避けたい層も気軽に利用できます。
3. 審査や手続きが簡単
複雑な審査は不要で、基本的な個人情報を入力するだけで即時に利用開始できます。急な出費にも対応でき、ストレスなく買い物できます。
4. 予算管理がしやすい
あらかじめ返済スケジュールが明確に提示されるため、計画的な資金管理に役立ちます。サービスによっては好きなタイミングで支払うこともできます。支出の見通しが立てやすいため、無駄遣いを防ぎながら安心して買い物を楽しむことができます。
BNPLの店舗側のメリット

1. 平均注文額の増加
BNPLは購入時に全額を即時支払う必要がなく、支払いまでにゆとりがもてるため、購入のハードルが下がります。
特に分割払いが無利息で利用できる場合、顧客はより高額な商品も購入しやすくなり、AOV(平均注文額)を押し上げる効果が期待できます。
2. カゴ落ちの減少
希望する決済方法がない場合や、クレジットカード情報の入力に不安を覚える顧客は、購入直前で離脱してしまうことがあります。
BNPLを導入すれば、クレジットカードを必要とせず、簡単な審査で利用できるため、決済時のハードルが下がります。その結果、チェックアウトでのカゴ落ちを防ぎ、売り上げの機会損失を減らすことができます。
3. 新規顧客層の獲得
クレジットカードを持たない、あるいは利用に不安を抱える若年層やセキュリティ対策意識の高い層も、BNPLであれば安心して購入できます。従来リーチしづらかった顧客を獲得できるため、顧客基盤の拡大につなげられます。
国内でのBNPLの利用状況
財務省広報誌「ファイナンス 2023年1月号」によれば、日本では2000年代からBNPLが存在しており、近年はEC市場の拡大に伴い各種事業者の参入が増えています。
矢野経済研究所によると、2022年度のBNPL市場は約1兆2,609億円と推計され、2026年度には2兆円規模に達する見通しです。また、類似サービスである後払い決済サービス市場も成長が続いており、2023年度の約1兆5,317億円から2028年度には約2兆8,000億円にまで拡大すると予測されています。
利用者は若年層を中心に伸びており、審査が簡易で手数料無料の点が支持されています。
一方で、BNPLは割賦販売法の規制が及ばず、過剰与信の審査、販売方法の調査などが不十分で、消費者に支払い能力がないなどのトラブルにつながるケースも出てきています。
また、消費者庁の報告では、BNPLには利用上限が5~10万円程度に設定された商品が多いものの、複数サービスを併用することで返済不能に陥るリスクがあると指摘されています。
このように、急速な市場拡大に伴い、消費者保護の観点からBNPLの規制が必要との声も高まってきており、今後の動向を注視する必要があります。
日本国内のBNPLサービス7つ

1. Paidy
Paidy(ペイディ)は日本発のBNPLサービスで、非常にシンプルな利用方法が特徴です。電話番号とメールアドレスさえあれば登録完了でき、アプリ上で利用履歴の確認や支払い管理も可能です。
アプリの累計ダウンロード数は1,500万回以上に上り、若年層を中心に幅広い層に支持されています。導入店舗は日本全国で約70万店舗以上に及び、大手ECサイトやデジタルサービスも幅広く対応しています。
支払いはコンビニ、銀行振込、口座振替から選べ、本人確認後は3・6・12回の分割払いが手数料無料(口座振替・銀行振込の場合)で利用可能です。
2021年、PayPal(ペイパル)によって27億ドル(約3,000億円)で買収されましたが、Paidyは独自ブランドとしてサービスを継続しています。
2. NP後払い
NP(エヌピー)後払いは、ネットプロテクションズが2002年にスタートしたBNPLサービスです。顧客は後日送られてくる請求書を使い、発行日から14日以内の好きなタイミングでコンビニ、郵便局、銀行などで代金を支払うことができます。2025年からはPayPay請求書払いにも対応しています。
全国約20.3万の店舗で導入されており、会員登録は不要ですが、NP会員に登録すれば利用履歴の確認やポイントの獲得など、より便利に使えます。200円の支払いにつき1ポイントが付与され、たまったポイントはatone shopsでの商品交換や懸賞応募に利用可能です。
3. atone
atone(アトネ)は、ネットプロテクションズが提供するBNPLサービスで、商品購入の翌月に代金をまとめて支払える便利な決済手段です。会員登録は携帯番号とメールアドレスだけで完了し、クレジットカードや銀行口座の登録は不要です。
支払いはコンビニ、銀行ATM、口座振替から行え、支払い状況はアプリで即時確認できるほか、使いすぎを防止する予算設定も可能です。
200円の利用につき1ポイントのNPポイントが貯まり、atone提携ショップで商品と交換することができます。
4. アトカラ
アトカラは、GMOペイメントサービスと三井住友カードが共同提供するBNPL(後払い)サービスです。スマホだけで利用でき、クレジットカード登録は不要です。購入時に携帯番号とメールアドレスを入力し、SMSで届く認証コードを入力したら買い物が完了します。
支払いは翌月にまとめて行え、コンビニ・銀行振込・口座振替から選択可能です。アプリを使えば利用履歴も確認でき、手軽にキャッシュレス後払いを始めることができます。
5. PayPayクレジット
PayPay(ペイペイ)クレジットは、PayPayが提供する後払い(BNPL)サービスで、当月に利用した金額を翌月27日にまとめて一括で支払う仕組みです。事前のチャージやクレジットカード登録は不要で、PayPay対応の加盟店やオンラインショップで利用可能です。
年会費・手数料は無料ですが、分割払いには対応しておらず、一括払いのみとなります。支払い履歴はPayPayアプリで管理でき、使いすぎを防ぐ工夫もされています。
なお、PayPayカードとは別サービスであり、利用上限額や加盟店の詳細はPayPayアプリまたは公式サポートにて個別に確認が必要です。
6. メルペイのあと払い
メルペイのあと払いは、フリマアプリのメルカリが提供するBNPLサービスで、メルカリでの買い物やメルペイが使えるサイトや店舗で利用した金額を翌月にまとめて支払える仕組みです。
自動引落し、メルベイ残高、コンビニまたはATMで支払いできます。売上金や銀行チャージ残高から支払うことも可能です。
7. GMO後払い
GMO(ジーエムオー)後払いは、GMOペイメントサービス株式会社が提供するBNPLサービスです。購入者は商品受け取り後に届く請求書を使って、コンビニ・銀行・郵便局で代金を支払うことができます。
利用にあたっては特別なアプリやクレジットカードは不要です。
BNPLのShopifyへの導入方法

Shopifyで作成したECサイトにBNPLサービスを導入したい場合は、まず希望のサービスと契約したあと、次の手順にしたがってください。
- 管理画面左にある [財務] タブをクリック
- 画面の右にある [アカウント] 内の [支払い] をクリック
- 画面左の [決済] タブをクリック
- [決済] 画面に移行後、上から2つ目のセクション内にある [別の決済方法] 下部の [決済方法を追加] をクリック
- 決済方法検索画面で、検索窓に利用したい決済方法あるいはプロバイダー名を入力して検索
- [連携] をクリック
検索画面に出てこないその他の決済サービスについては、管理画面の [設定] にある [決済] セクションから、アプリとしてインストールすることで導入できます。
まとめ
BNPLは、消費者の支払い負担を分散できる利便性の高い決済手段で、クレジットカードを持たない若年層やカード利用に不安を抱く層も安心して使えます。BNPLを導入して柔軟な支払いプランを提供することで、顧客満足度の向上、平均注文額の増加、カゴ落ちの防止、新規顧客層の開拓といったメリットが得られます。また、ECサイトに新しい決済手段を導入することは、競合との差別化にも直結します。
これからの消費者ニーズに応える方法として、ぜひBNPLの導入を検討してみましょう。
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よくある質問
BNPLって何?
BNPLは「今買って、後で支払う」決済方法です。BNPLは「Buy Now, Pay Later」の略で、商品やサービスを先に受け取り、代金を後から支払う仕組みです。クレジットカードと同様に後払いですが、BNPLは分割払いでも手数料が無料な場合が多いという大きな特徴があります。
BNPLと後払い決済は同じ?
似ていますが、BNPLと後払い決済は異なります。BNPLは手数料無料の分割払いが可能で、より柔軟な支払いができる点が特徴です。一方、従来の後払い決済は、基本的に一括払いのみで、支払い期限も短めに設定されていることが一般的です。
BNPLとクレジットカードの違いは?
BNPLは分割手数料が無料で、審査も簡単な点がクレジットカードと異なります。クレジットカードも後払いですが、分割やリボ払いでは手数料が発生するのが一般的です。BNPLでは、手数料無料の分割払いが可能なことが多く、簡易な審査で利用できるため、クレジットカードを持たない若年層にも使いやすいのが利点です。
BNPL決済において、店舗側にかかる費用は?
店舗側は、BNPL事業者に決済手数料を支払う必要があります。これはクレジットカードの加盟店手数料と似た仕組みで、BNPLの方が手数料率が高いケースもあります。特に分割払いの回数が増えると、店舗負担のコストがさらに増す可能性があります。
文:Takumi Kitajima





