競争が激しい通販市場では、商品や価格だけで差別化するのは難しくなっています。そこで注目されているのが同梱物です。同梱物を使って付加価値や特別感を演出することで、顧客の記憶に残る開封体験を生み出すことができ、リピート購入やロイヤルティの向上につなげられます。
この記事では、効果的な同梱品のアイデアを9つ紹介します。同梱物を活用してブランド価値の向上や差別化につなげたいと考えている事業者は、ぜひ参考にしてください。
同梱物とは?

同梱物とは、EC事業者が購入された商品と一緒に送付するアイテムです。取扱説明書などの印刷物やサンプルなどが当てはまります。
「同梱」は「どうこん」と読み、複数の商品や物品を一つの荷物にまとめて入れることを意味します。
おすすめの同梱物:具体例9選

1. 商品活用ガイド・ヒント
商品活用ガイドやヒント集を同梱物にして、商品をスムーズに使用してもらえるようにしたり、機能を持て余すことなく活用してもらえるようにしたりすることで、商品に対する満足度を高めることができます。
また、よくあるトラブルと解決方法を記載した案内も用意すれば、問い合わせやクレームを減らすことにもつなげられます。
以下のようなガイドやヒントを入れると良いでしょう。
- 写真やイラストを交えた使用手順
- 活用事例
- よくある質問
- 保管方法
- 廃棄時の注意
例えば、製菓材料・器具専門店の富澤商店は、レシピカードを同梱して材料の活用方法を伝えると同時に、使用材料の購買も促しています。

2. 割引クーポン
購入者のリピート率を高めるために効果的なのが、同梱物としての割引クーポンや特典カードです。
ディーエムソリューションズが実施した「同梱物に対する消費者実態調査」によると、「次も買いたくなる同梱物」の1位は割引クーポン(56.8%)となっています。
同梱物としてクーポンを送ることで、メールのようにスパム扱いされたり開封せず捨てられてしまったりすることがありません。さらに、顧客にとっての具体的なリマインダーにもなります。
クーポンには期限を設け、購入サイクルを短くしたり購買欲を刺激したりするのがおすすめです。また、数種類のオファーをテストして、どれが最も反応を得られるかを確認してみるのもいいでしょう。
3. 商品サンプル
同梱物に商品サンプルを加えることで、購入者に新しい商品や関連アイテムを知ってもらう機会を提供できます。また、無料サンプルはお得感があるため好印象につながりやすく、口コミやSNSでの共有も期待できます。
特に化粧品や食品のネット販売では、サンプルを提供することで品質や使用感を直接体験してもらえるため、クロスセルやアップセルにつながります。サンプルと合わせて、関連商品のチラシやカタログを同封すると効果的です。
例えば化粧品メーカーのPOLA(ポーラ)は、複数の人気基礎化粧品の中から同梱してほしいサンプルを選べるようにしています。こうすることで、特定の商品に興味のある顧客が使用感などを確かめられるため、次の購買につながりやすくなっています。

4. プチギフト
プチギフトは、顧客に思いがけない喜びを届けられるおすすめの同梱物です。
高価なものである必要はなく、ブランドロゴ入りのステッカーやポストカード、季節感のある粗品など、低コストの同梱品でも購入者の満足度を高めることができ、ブランディングもできます。
例えば、和雑貨店なら季節柄のしおり、アウトドア用品店なら防水ステッカーなど、ブランドや商品の世界観に沿ったアイテムをプチギフトとして同梱するのも効果的です。月ごとやシーズンごとにデザインが変わるようにしてコレクションする楽しみも加えると、リピート購入の後押しにもなります。
雑貨を販売する北欧、暮らしの道具店では、毎年オリジナル手帳を購入特典として同梱しています。手帳という毎年新しくするものをプチギフトとして同梱することで、長期的にリピート購入してもらえるようになっています。

5. サンクスカード
同梱物としてサンクスカードや手書きのメッセージカードを添えることは、親近感を高め、ブランドへの好感度につなげる有効な方法です。
「自分のために書かれた」という特別感がロイヤルティの向上につながるため、カードには購入者の名前を入れ、感謝の言葉と購入品へのひと言を添えると良いでしょう。手書きが効果的ですが、難しい場合は手書き風フォントなどを活用しつつ、宛名や最後のひと言だけでも直筆にしましょう。
さらに、今後の利用を歓迎するメッセージやブランドの近況を簡潔に伝えることで、継続的な関係構築につながります。紙質やデザインはブランドイメージに合わせ、上質な厚紙や温かみのあるクラフト紙などを選ぶのがおすすめです。
6. ブランドブック
同梱物としてブランドブックやストーリー紹介を添えることで、商品の背景や企業理念を伝え、購入者との深いつながりを築けます。
ブランドストーリーや製造工程、素材やデザインに込めた思いなどを、写真やイラストを交えて表現すると効果的です。単なるパンフレットではなく、読み物として楽しめる構成にすることで、商品そのものへの愛着が高まり、リピート購入や口コミ促進にもつながります。
食品ブランドなら生産者インタビューや産地紹介、アパレルならデザイナーのメッセージや制作現場の様子を掲載するなど、顧客が「このブランドから買いたい」と感じられる物語性を意識しましょう。
例えば、サステナブルな取り組みをしている商品であれば、再生紙の使用や過剰包装の削減といった自社の取り組みを紹介するカードを同梱物として添えることで、ブランドポジショニングをより強固にして、環境に配慮した商品を選ぶ顧客のファン化につなげられます。
印刷物に使う用紙やデザインはブランドアイデンティティに合わせ、印刷の質にもこだわることで、手元に残したくなる価値ある同梱物になります。
7. 関連商品や定期購入の案内
同梱物として関連商品のカタログや定期購入の案内などを添えることで、顧客単価や継続利用率の向上が期待できます。
定期購入案内では、毎回の注文手続きが不要なことや、特別割引や限定特典といったメリットをわかりやすく伝えることが重要です。関連商品の案内では、周辺アイテムの併用や上位モデルへの変更による利便性やコストパフォーマンスの向上を具体的に示しましょう。
カタログやチラシには、申し込み用二次元コードや専用URLを記載し、すぐに行動できる導線を用意すると効果的です。
例えば、PS5本体を購入した顧客向けの同梱物として、関連商品である充電スタンドやハイエンドコントローラー、ストレージ拡張のためのSSDなどを案内するチラシを同梱すれば、追加購入につながります。
8. SNSやコミュニティの案内
同梱物としてSNSやブランドコミュニティへの参加案内を加えることで、購入後も顧客とのつながりを維持できます。
二次元コードを用意して簡単にSNSのブランドアカウントやコミュニティにアクセスできるようにしましょう。また、ハッシュタグを付けた投稿を依頼するなどUGCを促す案内にすることで、新規利用者の声を集めると同時に、既存のファンの声も見てもらい、ロイヤルティを高めることもできます。
SNSは、InstagramやX、LINE公式アカウントなど、ターゲット層が日常的に使っているものを案内するようにしましょう。フォローや参加によって得られる特典(限定クーポン、先行情報、イベント招待など)を明記すると行動してもらいやすくなります。
9. 返品・交換の案内
返品フォームや返品用ラベルを同梱物にするのもロイヤルティを得る一つの方法です。Statistaのデータ(英語)によると、33%の顧客が初回注文時に返品ラベルを送付してほしいと考えています。同梱物として返品・交換に関する案内を添えることで、購入者に安心感を与えられるだけでなく、返品交換のしやすさから顧客満足度が高まり、リピーターや良いレビューにもつなげられます。
特にアパレルや靴などサイズやフィット感が重要な商材では、返品・交換のしやすさが次回購入の決め手になることもあります。印刷した返品フォームや返品用ラベルを同封し、案内には返品・交換の条件、手順、期限、連絡先、必要書類などを簡潔にまとめましょう。あるいは、二次元コード(QRコード)で返品申請ページへ直接アクセスできるようにするのも良いでしょう。
同梱物の役割
購入体験を高める
同梱物は、顧客の期待を超える体験を演出するための重要な役割を担います。
商品が無事に届くだけでも顧客の期待には十分応えられますが、プラスαの工夫をすることで開封時の印象が大きく変わります。
例えば、ブランドカラーを用いた特別感のあるノベルティ、季節やイベントに合わせたメッセージカード、気になっていた商品のサンプルなどは、購入者に「ここで購入して良かった」という満足感を与えます。
満足感を得られる同梱物で顧客体験を高めることで、信頼関係が築かれ、ロイヤルティも向上して、次回購入や口コミにもつながるでしょう。
既存顧客への情報発信
同梱物は、すでに自社商品を購入した顧客に対して、効果的に情報を届けられる媒体です。
顧客の購買内容などからある程度の嗜好がわかるため、関連性の高い情報を適切に提供できます。新商品の発売案内、ブランドの最新ニュース、イベントやキャンペーン情報などを、チラシやカードにまとめて同梱すれば、パーソナライズした情報を確実に手に取ってもらえます。
再購入・クロスセルの促進
同梱物は、購入履歴に基づいた販促やクロスセルを行う絶好のタイミングです。
顧客が気に入っている商品やカテゴリがわかっているため、それに関連する商品や上位モデル、クーポンなどを提供することで、自然に追加購入につなげられます。
例えば、化粧水を購入した顧客に同ブランドの美容液サンプルを添える、食品購入者に関連レシピと調味料の案内を入れるなどが考えられます。
追加の配送費用をかけずに販促チラシなどを送れるため、Web広告の出稿やDM送付に比べてコスト負担が少なく、費用対効果の高い販促施策として活用できます。
まとめ
同梱物は、通販において商品や価格以外で差別化を図る有効な手段です。ガイドやクーポン、サンプル、プチギフト、メッセージカードなど工夫をこらしたアイテムを戦略的に同梱することで、開封体験をより魅力的にでき、顧客満足度やリピート購入を促進できます。
販促や低コストでの情報発信にもなる同梱物を活用して、売り上げアップや長期的なブランドロイヤルティ向上につなげましょう。
よくある質問
同梱の読み方は?
「同梱」は「どうこん」と読みます。
同梱物にはどんな種類がある?
- 商品活用ガイド・ヒント
- 割引クーポン
- 商品サンプル
- プチギフト
- サンクスカード
- ブランドブック
- 関連商品や定期購入の案内
- SNSやコミュニティの案内
- 返品や交換の案内
同梱物を活用するメリットは?
同梱物を活用するメリットは、商品と一緒に送るため顧客の目に触れる確率が高く、メルマガなどの手段と比べて確実な訴求が可能なことです。また、別送するよりもコストを抑えることができ、既存顧客に効率的にマーケティングが行えるのもメリットです。
同梱物を導入する際の注意点は?
同梱物を導入する際の注意点には以下のようなものがあります。
- 過剰に入れない
- 制作や封入コストが高くならないようにする
- 同梱ミスがないよう発送体制や人員配置を整える
文:Takumi Kitajima





