ブランディングは、起業やビジネスの成長において成功の鍵となります。戦略的に取り組むことで、ビジネスの目的や価値観を明確にし、顧客に信頼と好感を与え、競合との差別化や企業価値の向上にもつながります。
本記事では、ブランディングの基礎知識やメリット、実践的な戦略、そして成功事例までをわかりやすく解説します。
ブランディングとは

ブランディングとは、企業や商品のブランドを育てる活動です。まず、「どんな存在でありたいか」を明確にし、それをロゴやデザイン、商品やサービスの品質、顧客体験などを通じて形にします。
ブランドは立ち上げただけでは完成しません。ブランディングにより、顧客や社会へ価値を伝え続け、認知や信頼を深めることで成長していきます。それにより、他社との差別化が進み、価格競争に巻き込まれず、選ばれ続ける存在になります。
さらに、ブランディングは社外への発信だけでなく、社内での価値観の共有にもつながります。社員が自社ブランドを理解し、誇りを持って行動することが、より信頼されるブランド構築につながっていきます。
ブランディングとマーケティングの違い

ブランディングとマーケティングは、目的が異なります。マーケティングは商品やサービスを広く知ってもらい、購入につなげるための活動であり、売上の拡大を主な目的とします。
一方、ブランディングは企業や商品への共感や信頼を育てる活動であり、必ずしも売り上げや利益に直接つながるとは限りません。商品やサービス、自社の社会的存在価値を明確にし、長期的に選ばれ続ける関係を築くことを目指します。
ブランディングのやり方

1. ミッションと価値観を決める
ブランディングを成功させるために、「このブランドは何のために存在しているのか」を明確にし、それをビジネスプランの中心に置きます。たとえば、「環境にやさしい日用品を提供する」「地域の伝統を世界に広める」といった、ブランドが存在する理由や大切にする考え方をはっきりさせます。
ミッションと価値観があれば、経営判断や商品開発、広告の方向性が定まり、成長や変化の中でもブランドの一貫性を保てます。特にZ世代やα(アルファ)世代の消費者は、ブランドの理念や行動を重視しています。価値観を行動で示すことで、ブランドへの信頼と支持を高められます。
たとえば、とらやは「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」というシンプルかつ力強いミッションを公式サイトで示し、時代が変わっても揺るぎない和菓子ブランドとして多くの人に愛され続けています。

2. ブランドストーリーを作成する
ブランドストーリーで、創業の経緯やブランドが生まれた背景、創業者の想いなどを具体的に伝えましょう。これによりブランドに人間味が生まれ、親近感と信頼が高まります。
作成したストーリーは、ウェブサイトやSNS、パンフレット、接客の場など、顧客とのあらゆる接点で一貫して発信しましょう。そうすることで、単なる商品やサービスではなく、「共感できる物語を持つブランド」として記憶に残ります。
たとえば、日清食品は公式サイトで、創業者がどのようにして商品を開発したかをひとつの物語として整理し、掲載しています。

3. ブランドアイデンティティを決める
ブランドの個性を視覚的に表現するブランドアイデンティティを設定しましょう。顧客にどんな印象を与えたいのかを明確にし、そのイメージに合うカラー、フォント、デザインパターンなどを選びます。
検討を始める際は、雑誌やウェブから参考になる色やデザインの事例を集めたり、ブランドを表す言葉や連想されるイメージを書き出したりします。方向性が決まったら、ロゴやパッケージ、ウェブサイトなど、あらゆるデザインをブランドアイデンティティで統一し、ブランドの一貫性を保ちましょう。
また、ブランドにはユニークで覚えやすいビジネス名が欠かせません。自分の名前を使う、造語にする、商品やサービス内容を直接伝えるなど、名付け方は様々です。決定時には、ドメイン名やSNSアカウントが取得可能かも必ず確認しましょう。
たとえば、ニトリは創業者の名字をブランド名に採用し、ロゴや公式サイトなどあらゆる場面で象徴的な鮮やかなグリーンを使用しています。

4. ブランドの発信スタイルを決める
SNS投稿や広告、ウェブサイト、メール対応などのあらゆる場面で、どんな雰囲気や言葉遣いで伝えるかを統一しましょう。これが決まっていないと、場面ごとに印象が変わりブランドの信頼や一貫性が損なわれます。
まず、顧客にどんな印象を持ってほしいかを決めましょう。さらに、言葉遣いのルールも明確にします。
たとえば、無印良品の公式サイトは、分かりやすく簡潔な言葉遣いが特徴です。シンプルなアイテムを揃えるブランドイメージと一致しており、サイト全体で統一された印象を与えています。

ブランドの個性に合った発信スタイルを決め、ブランドガイドラインにまとめておくと、社内外の誰が発信しても統一感を保てます。
5. 時代に合わせてブランドを進化させる
ブランドの成長や市場の変化に合わせて、リブランディングが必要となることがあります。ただし、最初からすべてを作り直す必要はありません。次の4つのポイントを意識することで、ブランドの価値を維持しつつ新しい方向性を取り入れられます。
- ターゲットオーディエンスを再確認する:現在の顧客層や新たに取り込みたい層を明確にし、そのニーズや価値観を把握する。
- ブランドの核となる価値観を守る:企業の理念や強みは維持しつつ、不要な要素や効果が薄れた部分は見直す。
- 時代や市場に合わせた表現を取り入れる:ロゴやデザイン、メッセージを現代の感覚に合わせて調整し、時代遅れの印象を無くす。
- 一貫性のある移行計画を立てる:ウェブサイト、SNS、広告、店舗など全ての接点でリブランディングを展開する。
たとえば、サントリーはウイスキーのリブランディングに成功した企業です。当時、ウイスキーは中高年向けのお酒というイメージが強く、若者離れが進んでいました。そこでサントリーはウイスキーの広告に芸能人を起用して、おしゃれで手軽といった新しい価値を強調しました。
その結果、若者や女性層の新規顧客を獲得し、ウイスキーは気軽に飲めるお酒へとイメージが刷新されました。

ブランディングを行うメリット

ブランディングは、社内向けの「インターナルブランディング(インナーブランディング)」と、顧客や市場に向けた「エクスターナルブランディング」の2つに分けられ、それぞれ以下のメリットがあります。
インターナルブランディングのメリット
- 社員が共通のミッションや目的を持ち、意思決定がぶれにくくなる
- 組織の一体感や企業文化を育て、働きやすい環境をつくる
- 優秀な人材の採用・定着につながる
- 社内外の関係者の発言や行動を統一できる
エクスターナルブランディングのメリット
- ターゲット顧客への認知度や好感度を高める
- 顧客ロイヤルティを強化し、リピート購入を促す
- 競合との差別化を図り、ブランド価値を高める
- コラボレーションやメディア露出の機会を増やす
ブランディングの成功例

有名ブランドは、長期的な投資と戦略的なブランディングにより、世界中で高い認知度と信頼を築いています。明確なブランドコンセプトと一貫性のある顧客体験を提供し続けることが、成功の共通点です。
コカ・コーラ(Coca-Cola)
- 特徴:赤いロゴ、独自の書体、心に残る広告キャンペーンを一貫して展開。
- 成果:世界中の消費者に認識されるブランドとして確立。
マクドナルド(McDonald’s)
- 特徴:黄色い「M」のロゴと統一された店舗体験。
- 成果:国や地域を問わず同じ品質とサービスを受けられる安心感と信頼を確立。
ナイキ(Nike)
- 特徴:スウッシュロゴと「Just Do It」のスローガンを核に、スポーツや挑戦を象徴。
- 成果:アスリートから一般消費者まで幅広く支持されるグローバルブランドに成長。
ユニクロ(UNIQLO)
- 特徴:「LifeWear」というコンセプトで、シンプルかつ高品質な日常着を提供。
- 成果:単なる衣料品メーカーではなく、日常生活に欠かせないライフスタイルブランドとしての地位を確立。
スターバックス(Starbucks)
- 特徴:コーヒーを提供するだけでなく、サードプレイス(自宅でも職場でもないくつろげる場所)という体験を重視。
- 成果:統一感のある店舗デザイン、接客、商品構成で、世界中で共通のブランドイメージを確立。
アップル(Apple)
- 特徴:シンプルで洗練されたデザインと直感的な操作性を一貫して訴求。
- 成果:製品から広告、店舗体験まで統一され、熱心なファン層を世界規模で獲得。
トヨタ(TOYOTA)
- 特徴:品質・耐久性・信頼性を軸にした製品開発とグローバル展開。環境技術やモビリティの未来像にも注力。
- 成果:信頼感と先進性を両立したブランドイメージを確立し、世界中で高い市場シェアを維持。
まとめ
ブランディングは、大企業だけでなく、中小企業や個人事業でも市場での信頼と存在感を築くために欠かせない取り組みです。ECサイト、広告、店舗デザイン、看板など、顧客とのあらゆる接点がブランドを形づくります。
ブランディングを軽視すると、機会損失や顧客離れのリスクが高まります。大切なのは、ブランドの約束を守り、ターゲットに合わせた言葉と一貫性のある体験を提供し続けることです。継続的な見直しと改善を重ねることで、長く選ばれ続けるブランドを育てられます。
よくある質問
ブランディングとは?
ブランディングとは、企業や商品の理想の姿を明確にし、そのイメージをロゴ、デザイン、品質、顧客体験などで形にして育てていく活動です。
ブランディングとマーケティングの違いは?
ブランディングは長期的に信頼や共感を築く活動で、マーケティングは短期的に売上を伸ばすための活動です。
企業ブランディングとは?
企業ブランディングは、企業のミッションや魅力を明確にし、社員や顧客、投資家、取引先など全ての関係者に伝える事です。これにより、信頼性やブランド力が高まり、支持を得やすくなったり、長期的な競争力の向上にもつながります。
ブランディングはどんな効果がある?
ブランディングは、社内では一体感や共通の価値観をつくり、意思決定や人材定着を助けます。また、社外では認知度や好感度を高め、競合との差別化やリピート購入、メディア露出の機会を増やします。
ブランディング戦略はどう作る?
ブランディング戦略を考えるときは、次の4つのポイントを順に整理することが大切です。。
- ミッションと価値観を決める:ブランドの目的や方向性を明確にする
- ブランドの発信スタイルを決める:言葉遣いや表現方法を統一する
- ブランドストーリーを作成する:背景や想いを物語として伝える
- ブランドアイデンティティを決める:色・ロゴ・デザインなど視覚要素を統一する
リブランディングとは?
ブランドを成長や市場の変化に合わせて見直し、価値を保ちながら新しい方向性を取り入れることです。すべてを作り直す必要はなく、次の4つを意識します。
- ターゲットオーディエンスを再確認する:顧客層や新たなターゲットのニーズ・価値観を明確にする
- ブランドの核となる価値観を守る:理念や強みは残し、不要・効果の薄い要素は見直す
- 時代や市場に合わせた表現を取り入れる:ロゴやデザイン、メッセージを現代的に調整し、古い印象をなくす
- 一貫性のある移行計画を立てる:ウェブサイト、SNS、広告、店舗など全接点で統一して展開する
文:Hisato Zukeran





