「人材は最大の資産」といわれることもあるように、人材は企業にとって重要なものであるため、多くの企業が優秀な人材確保や育成、管理の整備に力を入れています。
この記事では、人材に関する業務を担う人事とは何か、人事がどのように従業員との関係づくりや組織運営を支えているのかをわかりやすく解説します。
人事とは

人事とは、採用や評価、人材育成、配置などを通じて企業の目標達成につなげたり、従業員の労働環境を整備したりする業務のことです。必要な人材を確保し、従業員が力を発揮できる環境をつくることは、組織が掲げるビジョンや目標を実現するうえで欠かせません。
また、適材適所に人員配置することや人材育成を行うことは、B2Cビジネスでは顧客満足度の向上にもつながります。
人事管理とは
人事管理とは、従業員が力を発揮できるように、人材を採用し、育て、評価しながら組織全体を動かしていく業務です。新しく入社する人の受け入れや既存社員のスキルアップの支援、一人ひとりの状況を確認してよりよい職場環境を整えていくのが人事管理の主な役割です。
人事労務とは
人事労務とは、会社で働く人に関わる手続きを幅広く扱う業務です。主に給与計算や勤怠の確認、福利厚生の管理といった業務が含まれます。企業の規模によって担当の分け方は異なり、小規模の職場では担当部署が人事の管理と労務の両方を担うこともあれば、大企業ではそれぞれを別組織として運営するケースもあります。
人事の10の仕事内容

1. 採用と人員配置
採用と人員配置は、人事業務の中心となる仕事です。新規採用や欠員補充を行う際には、求める役割や必要なスキルをまとめた職務記述書を作成し、求人媒体への掲載や社内外のネットワーク、人材紹介会社の活用などを通じて候補者を募ります。応募者の書類や経歴を確認し、職務や組織との相性を見ながら面接を進めていきます。また、経験などを踏まえて候補者の待遇や条件を調整し、各所と連携を取りながら選考を進めることも人事の重要な役割です。
2. 新入社員の受け入れ
人事部門は、新入社員が早く職場に慣れ、業務を始められるように準備を進めます。会社の制度や業務の進め方を案内し、パソコンやアカウントの発行など関係部署と連携して必要なアイテムを準備します。また、従業員情報の登録や各種手続きといった入社に伴う事務も担当します。
3. 研修と人材育成
人事部門は、従業員が必要なスキルを身につけて成長できるように研修の企画と運営を担当します。業務に関する研修プログラムやオンライン学習、研修アプリなどを用意し、場所にとらわれず学べる環境を提供する企業もあります。また、必要に応じて外部講座やセミナーの受講を促すケースもあります。
4. 人事評価
人事部門は、各部門の管理職と連携しながら従業員の評価を担います。定期的に評価面談を行い、成果や課題を確認するほか、昇給といった今後の処遇についても話し合います。必要に応じて人事が直接フィードバックを行い、従業員の成長やキャリア形成を支援することもあります。
5. 給与・福利厚生
人事部門は、給与制度や賞与、保険、手当、退職金制度など、従業員の給与や福利厚生に関わる制度づくりと運用を担当します。実際の給与計算は経理部門が担うケースが多いですが、昇給や報酬制度の見直しなど、運用面の管理は人事の役割です。
6. 職場環境の整備
従業員が働きやすい環境を保つことも、人事部門が担う大切な業務です。勤務状況や職場の課題を把握し、必要に応じて制度や運用を見直します。また、社内イベントやコミュニケーション促進の取り組みを企画するなど、従業員のモチベーションや一体感を高める取り組みを行う企業もあります。
7. コンプライアンスと社内規程の運用
人事部門は、労働基準法や労働安全衛生法、ハラスメント防止に関する規定など、企業が守るべき法令を踏まえて社内規程を整備し、適切に運用します。法律は定期的に改正されるため、最新情報を把握して対応方針を早めに検討することも求められます。
8. 従業員情報の管理
人事部門は、給与や雇用契約、人事評価、個人情報など、従業員に関するさまざまな情報を管理します。必要に応じて、他部署や外部の専門事業者へ共有する場合もあるため、個人情報保護法をはじめとした法令に沿って適切に取り扱うことが求められます。
9. 組織開発
人事部門は、従業員のスキルや配置が会社の目標や事業計画と合っているかを確認し、組織づくりに関わります。具体的には、組織構造の調整や新部署の立ち上げ、管理職の役割整理などを行い、事業の成長や変化に合わせて体制をより適したものにしていきます。
10. 人事システムの活用
テクノロジーを活用した業務の効率化も人事部門の業務の一つです。勤怠や評価、従業員データの管理など、日常的な事務作業をシステムで自動化して、作業負担やミスを減らします。
こうしたツールを積極的に取り入れることで、組織づくりや人材育成などの業務に時間を使えるようになりますが、法改正に合わせ最新の規定が正しく反映されているかどうか、定期的に確認することも求められます。
人事業務を自社で行う場合と外部委託する場合

企業の人事業務には、自社で対応する方法と、外部の専門会社へ委託する方法があります。また、両方を組み合わせて運用する形を取る企業も増えています。
外部に任せやすいのは、採用の一部や給与計算、福利厚生の事務手続き、コンプライアンス対応、研修の企画や運営などです。一方で、人事評価や昇進の判断、組織課題の解決、従業員の関係性に関わる調整などは、社内の理解がないと行えないため、自社で進めるケースが一般的です。
専門性が求められる業務は外部の力を活用しつつ、組織文化に深く関わる部分は自社で担当する形で人事業務を進めるとよいでしょう。
まとめ
人事とは、採用や評価、育成といった仕組みを通じて従業員と組織の関係を管理する業務を指します。人材の確保や配置、研修、給与制度の運用、職場環境の整備など、その業務範囲は広いです。
近年ではシステムを活用した業務効率化や、専門性の高い業務の外部委託も進んでいます。一方で、人事評価や組織文化に関わる領域は社内の理解が必要となるため、自社で対応することが一般的です。
従業員が力を十分に発揮できる環境を整えることは、経営目標の達成や顧客満足度の向上にもつながります。組織全体のパフォーマンスを高めるためにも、人事の存在は不可欠といえるでしょう。
人事に関するよくある質問
会社の人事とは?
会社の人事とは簡単にいうと、採用・育成・評価・配置に携わり、従業員が能力を発揮できる環境をつくる仕事です。人に関わる制度や運用を通じて、会社の成長と職場づくりを支えます。
会社の人事の仕事内容は?
- 人材の採用
- 人員配置の検討
- 人材育成
- 人事評価
- 労務管理
- 制度づくり
- 組織開発
人事と労務の違いとは?
人事は人材の運用が主な仕事であるのに対し、労務は労働条件の管理が中心業務であるといった違いがあります。
人事は、人材の採用や育成、評価、配置などを通じて、従業員の力をどう発揮させるかを考えるのが主な仕事です。一方、労務は勤怠や給与計算、社会保険、入退社の手続きといった業務を担当します。担当範囲が近いため一部が重なることもあります。
人事業務は外部委託すべき?
人事業務の負担が重く、ほかの仕事に支障をきたしているのであれば、外部委託も視野に入れたほうがよいでしょう。採用の一部や給与計算など、専門性や事務量の多い業務は外部委託すると業務の負担を減らせます。一方、評価や組織づくりなどの社内理解が不可欠な仕事は、社内で担うケースが一般的です。自社と外部を組み合わせるハイブリッド型を採用する企業も増えています。
文:Yukihiro Kawata





