入浴剤は、お風呂時間をより豊かにしてくれる人気アイテムで、セルフケア用品としてだけでなくギフト需要も高い商品です。バスソルトやバスボムなど種類も豊富で、香りや色、形に工夫を凝らすことで、オリジナリティのある商品として展開しやすいのが特徴です。
ハンドメイドで売れるものとして国内外で人気があり、趣味から起業する場合にも比較的低コストでスタートすることができます。一方、OEMを活用して本格的にブランドを立ち上げるケースもあり、そのビジネスモデルにはさまざまな選択肢があります。本記事では、入浴剤の販売ビジネスを始める際に知っておきたい基礎知識や販売方法をわかりやすく解説します。
入浴剤の分類

入浴剤は、効果や表示内容によって「雑貨」「化粧品」「医薬部外品」の3つに大きく分けられます。実は商品名として「入浴剤」と記載できるのは基本的に医薬部外品のみで、そのほかの製品で「入浴剤」の文言を使用すると景品表示法や薬機法に抵触する恐れもあります。それぞれの特徴や定義とともに、製造・販売や広告表現に関する規制について、解説します。
雑貨として扱われる商品の場合
色や香りを楽しむことを目的にし、人体に作用する効能効果を一切表示しないものは「雑貨」に分類されます。溶けるとおもちゃが出てくるバスボムや、アロマオイル・ドライフラワーが混ぜられたバスソルトが該当します。形状や香りで個性を出したハンドメイドの商品は、minne(ミンネ)やCreema(クリーマ)といったマーケットプレイスでも多く見られます。
製造・販売において特に許認可等はありませんが、安全性の観点から使用できる原料や品質は食品・化粧品に使われるのと同等のものに限られています。また、パッケージや広告では「効能がある」と誤解させるような表現は避け、「ホッとするラベンダーの香り」「花びらの浮かぶ贅沢なバスソルト」などの商品説明にとどめる必要があります。
化粧品として扱われる商品の場合
薬機法上「化粧品」に分類される商品は、「肌に潤いを与える」「肌をすべすべにする」などの効果をうたうことができます。化粧品は薬機法で「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚もしくは毛髪を健やかに保つために使用される、作用が緩和なもの」と定義されており、表示できる効能は56種類に限定されます。
また製造・販売にあたっては、コスメ販売と同等の製造設備や事業者に対する許認可、届出が必要となります。自社で製造する場合はもちろん、OEMを活用して自社ブランドで販売する場合も「化粧品」としての許可が求められます。
医薬部外品として扱われる商品の場合
「疲労回復」「肩のこりをやわらげる」など、より具体的な効能効果を表示したい場合は、医薬部外品として承認を受ける必要があります。また、それぞれの効能をもった有効成分が配合されていることが必要となります。
医薬部外品として販売するためには、製造販売業の許可とともに、製品ごとに厚生労働省の承認を得る必要があります。申請には時間とコストがかかり、管理も厳格に行う必要があるため、ビジネスを始めるまでのハードルは比較的高めです。
入浴剤を販売する際に必要な許認可

仕入れてそのまま販売する場合(国内/輸入品)
国内で製造された既製品を仕入れて販売するだけなら、薬機法上での特別な許可は不要です。雑貨はもちろん、化粧品・医薬部外品についても製造業者が許認可を取得済みであれば問題ありません。
一方、海外製の入浴剤を輸入して販売する場合には、「化粧品製造販売業許可」や「外国製造業者認定」「輸入届出」など追加の手続きが必要となるケースがあります。
自社ブランドで販売する場合(OEM利用など)
他社に製造を委託するOEMやホワイトラベルを活用し、化粧品や医薬部外品の商品を自社ブランドとして販売する場合は、販売者としての責任を明らかにするための許認可を取得する必要があります。
製造工程自体は委託先が担うため、自社の「製造業許可」は必要ありませんが、「化粧品製造販売業許可」「医薬部外品製造販売許可」と「製造販売届出」が必要です。またそのためには、品質管理や安全管理の体制確立も求められます。
自社で製造する場合(梱包/ラベル貼りを含む)
自社で化粧品や医薬部外品に分類される入浴剤を製造する場合は、「製造販売業許可」に加えて、実際の工程に応じた「製造業許可」が必要です。
ここで注意したいのは、粉を混ぜて固めるなどの原料からの加工に限らず、梱包やラベル貼りといった工程も「製造」とみなされる点です。したがって小規模であっても許可が求められます。
販売できる入浴剤の種類

バスソルト系
バスソルトは最も定番の入浴剤であり、原料コストが低く参入しやすいのが特徴です。
海塩や岩塩、エプソムソルトなどをベースにし、香料やハーブを加えることで幅広いバリエーションを展開できます。発汗の促進などが広く知られており、健康志向やリラックス効果の需要が集まっています。仕入れルートが豊富で、個人でも少量から始めやすいため、ハンドメイド販売にも向いています。
さらにギフト用としてパッケージを工夫すれば、単価を上げやすい商品カテゴリでもあります。
バスボム系
バスボムは炭酸ガスが発泡して香りや色を楽しめる入浴剤で、SNS映えしやすく特に若年層に人気です。
ボール型は定番、ジュエル型やグリッター入りなどは見た目のインパクトで差別化できます。製造にはやや手間がかかりますが、オリジナリティを打ち出しやすい点が強みです。デザイン性が高い商品はギフト需要とも相性がよく、マーケットプレイスやイベント販売で注目を集めやすいでしょう。ブランド独自の形状やテーマを取り入れることで、リピート顧客を獲得する可能性も広がります。
アロマ・エッセンシャル系
香りを重視したアロマ系入浴剤は、リラックスや睡眠改善を目的とするユーザー層に特に支持されています。
ラベンダーやローズマリー、ユーカリなどの精油を配合し、香りの特徴を訴求することで高付加価値商品として展開可能です。特に女性やギフト市場での需要が高く、パッケージデザイン次第で高価格帯でも販売できます。
また、アロマ専門店やセラピストとコラボした企画商品にするなど、ブランドポジショニング戦略の幅も広がります。小ロットのOEM生産にも適しており、初心者でも参入しやすいカテゴリです。
スキンケア系
シアバターやヒアルロン酸、コラーゲンなどの保湿・美容成分を配合した入浴剤は「美肌効果」を前面に出せるため、女性向けの人気が高いカテゴリです。
特に乾燥肌やエイジングケアを意識する層に訴求しやすく、スキンケアブランドとしてビジネスを広げたり、日常使いだけでなくプレミアムギフトとして販売したりといった戦略もとることができます。原料や効能の表示には、化粧品・医薬部外品に関する薬機法などの規制が適用されますが、その分ブランドを構築しやすいのがメリットです。
テーマ型・ギフト用
イベントやシーズンに合わせたテーマ型入浴剤は、マーケティング効果が高く、ギフト市場で特に売れやすいジャンルです。
クリスマスやバレンタイン、母の日などに合わせた限定デザインや香りを展開することで、購買意欲を刺激できます。キャラクターコラボや地域素材を取り入れた商品にすることで、ターゲットを明確に絞り込むことも可能です。単価を上げやすく、限定感を打ち出すことでブランドのファン作りにもつながります。OEMを活用すれば少量からでも展開でき、販路拡大に役立ちます。
入浴剤販売でおすすめのOEM業者
馬居化成工業

馬居化成工業は、エプソムソルト(硫酸マグネシウム)の国内トップメーカーとして知られる老舗企業であり、その高い技術とノウハウを活かした入浴剤のOEM生産を行っています。
創業は約420年前にさかのぼり、現在では本物志向の高品質な入浴剤や化粧品の企画から商品開発、製造までを幅広くサポートしています。小ロットから大量生産まで柔軟に対応し、泡風呂入浴剤やクレイ入浴剤、マグネシウムフレークス入浴剤など多彩な提案が可能です。さらに、ホテルアメニティ向けの特注入浴剤の実績もあり、オリジナルの香りやパッケージでブランド価値を高めたい場合に適したパートナーといえます。
北陸化成株式会社

北陸化成株式会社は、オリジナル入浴剤のOEM製造を得意とするメーカーで、大手企業から自治体まで幅広い取引実績を持っています。通常は数万包が必要とされる最小ロットを、業界最小クラスの1万包から対応できる点が大きな特徴です。
既存処方は約100種類あり、パウダータイプを中心にカスタマイズも可能で、こだわりの配合を加えることもできます。さらにスピード納期を強みとしており、最小ロットでも約3週間での生産が可能です。パッケージは小袋からボトルタイプまで幅広く対応し、フルカラー印刷による高い表現力でブランド価値を高めることができます。ノベルティや販売促進用から本格的なオリジナル商品まで、安心の品質管理体制で柔軟に対応できる点が魅力です。
株式会社アイワ

株式会社アイワは、化粧品や医薬部外品のOEMメーカーとして、入浴剤の企画から製造まで幅広く対応しています。粉末タイプと液体タイプの両方で処方設計が可能で、ブランドコンセプトに合わせたオリジナル製品の開発を実現できます。特に粉末タイプについては医薬部外品としての申請も可能で、汎用処方も用意されているため、スムーズに商品化を進められる点が強みです。
最低ロットは1,000個からと比較的小規模な生産にも対応でき、初めてOEMを利用する企業や多様なラインナップを展開したい事業者にとって利用しやすいパートナーといえます。
入浴剤販売ビジネスのコツ・注意点
薬機法や表示義務は厳守する
美容効果や保湿効果などをうたう入浴剤は「化粧品」「医薬部外品」に分類され、製造販売業許可や成分表示の基準を満たさなければ販売できません。無許可で効果効能を表示すると薬機法違反となり、罰則の対象となります。
一方、雑貨扱いの商品であっても、使用方法や原材料を明示することが信頼構築につながるため、必ずラベルに記載しましょう。入浴剤は身体に直接触れる商品であるため、正しい表示は義務であり、同時にブランド価値を守る大切な要素です。
品質管理と保存環境は徹底する
入浴剤は湿気や高温に弱く、適切な管理を怠ると崩れたり発泡力が落ちたりする恐れがあります。製造から販売、保管、発送に至るまで、以下の点に配慮しましょう。
- 乾燥剤を用いた密封保存
- 直射日光や高温多湿を避けた保管
- 発送時は緩衝材を使い、湿気や衝撃を防止
また、在庫管理も品質管理の一部です。入浴剤は消耗品でありながら長期保存には不向きなため、デッドストックを生まないよう需要に合わせた小ロットでの仕入れ・生産を心がけましょう。オンライン販売とイベント販売を並行する場合は、在庫数をリアルタイムで把握できる仕組みを導入すると効率的です。
アレルギーや安全性に配慮する
エッセンシャルオイルやハーブ、着色料などは肌に合わなかったり、アレルギーを引き起こす可能性があります。安全性を確保するために、以下を徹底しましょう。
- 使用した原材料を必ず明記する
- 敏感肌や子どもへの使用可否を表示する
- 「初めての方はパッチテストを推奨」といった注意書きを添える
過度な効能表現は誤解を招きやすいため、「リラックス」「香りを楽しむ」など生活シーンに寄り添った表現を選ぶことが望ましいです。
ストアやパッケージは見た目にこだわる
入浴剤は見た目や香りといった感覚的な要素が購入動機につながる商品です。オンラインストアでは写真や動画で色・質感を魅力的に伝える工夫が欠かせません。また、パッケージデザインはブランドイメージを大きく左右します。
- ギフト需要を意識した高級感のあるデザイン
- サステナブル志向に合わせたエコ素材の採用
ラベル表示は薬機法に準拠しつつ、安心感とデザイン性の両立を目指しましょう。
マーケティングはSNSで行う
入浴剤は視覚的な魅力が強いため、マーケティングを行う場合にはInstagram(インスタグラム)やTikTok(ティックトック)との相性が抜群です。カラフルな入浴シーンの動画や写真を発信すれば自然に拡散が期待できます。
- ブランド独自のハッシュタグを設定
- マイクロインフルエンサーと提携して発信
- 季節やイベントに合わせたキャンペーンを実施
このような施策が新規顧客の獲得やリピーター育成につながります。
実店舗販売も行う
オンラインが主流ではありますが、実店舗やイベント販売には独自のメリットがあります。顧客が実際に商品を手に取り、香りや質感を体験できるため、オンラインでは伝わりにくい魅力を直接伝えられます。
特に、フリーマーケットやポップアップストアは低コストで出店でき、テストマーケティングやブランド認知の拡大に効果的です。さらに、バイヤーや小売業者に商品を知ってもらえる場にもなり、卸売や新しい販路開拓のチャンスにつながります。
まとめ
入浴剤の販売ビジネスは、低コストで始めやすく、ハンドメイドからOEMまで幅広い方法で展開できるため、好きなことをビジネスにしたい方にとって魅力的な分野です。ただし、薬機法や表示義務の遵守、品質管理、アレルギーへの配慮、在庫リスク対策といった注意点を理解しておくことが大切です。
オンラインストアや実店舗、イベント出店など販路は多様で、工夫次第でブランドの成長も期待できます。入浴剤はリピート需要も高いため、正しく準備を整えれば長期的に収益を生み出せるビジネスへと育てられるでしょう。
入浴剤販売でよくある質問
入浴剤の販売は利益が出ますか?
入浴剤の販売は、正しい戦略を取れば十分に利益を生み出せます。大切なのは価格設定で、販売価格が原材料費やパッケージ代、配送コストなどをしっかりカバーし、そのうえで利益が残るように設計する必要があります。特に競合の多い市場では、単に安さを打ち出すのではなく、香りやデザイン、成分などで差別化を図り、付加価値を反映させた価格戦略を考えることが重要です。
入浴剤をオンラインで販売するために許認可は必要ですか?
入浴剤をオンラインで販売する際の承認は、製品の扱い方で異なります。香りや色を楽しむだけの商品なら雑貨扱いとなり、特別な許可は不要です。しかし「保湿効果」など効能をうたう場合は薬機法上の化粧品や医薬部外品となり、製造販売業許可などが必要です。OEMやプライベートレーベルを利用する場合も、委託先が許可を持っているか確認しましょう。
入浴剤ビジネスの良い名前はありますか?
入浴剤ビジネスの名前を考える際は、ブランドの方向性やターゲット層を反映させることが大切です。高級感を出すなら上質さを、エコ志向なら自然やサステナブルを感じさせる言葉を選びましょう。香りや癒しを連想させるキーワードを組み合わせると、顧客に伝わりやすい印象的な名前になります。
文:Takumi Kitajima イラスト:アリス・モロン





