開封体験(Unboxing)は、ブランドや商品を印象づける重要な顧客接点です。優れたパッケージデザインを採用し、梱包を解く過程にブランドならではの演出を加えることで、商品の魅力を引き立てることができ、ブランドの好感度につながります。近年では、SNSを通じて開封の様子が共有され、購買意欲を刺激するSNSマーケティング手法として注目されています。
この記事では、印象に残る開封体験をつくるためのアイデアや成功事例を紹介します。ぜひ参考にしてください。
開封体験とは

開封体験とは、顧客がパッケージを開け、商品を手に取る瞬間の体験を指します。顧客が開封体験を通して特別感やワクワク感を得られるよう演出し、開封の行為自体を記憶に残るものにすることで、顧客満足度の向上が期待できます。
ECにおける開封体験の重要性

実店舗を持たないECサイトにとって、開封体験は顧客との重要なタッチポイントです。特にモノ消費からコト消費に移行している現代において、ユニークな開封体験の演出は、EC事業を成功に導くうえで不可欠な要素といえるでしょう。
次の3つの理由から、ECの開封体験は重要だと考えられています。
- ブランドロイヤルティの向上や顧客のファン化を促進する
- SNSでのエンゲージメントにつながる
- 競合との差別化を図れる
パッケージの素材から梱包方法、同梱物にいたるまで、ブランドの世界観を細部にまでしっかりと反映した開封体験は、顧客にブランドの想いを直接届ける大切な機会です。ブランドストーリーに共感した顧客はファン化しやすい傾向にあり、リピーターにつながる可能性も高まります。
また、開封体験はUGC(ユーザー生成コンテンツ)に適しているため、インフルエンサーに自発的に紹介してもらえるチャンスがあります。SNSで拡散されることで、新たな層へのリーチにつながり、新規顧客の獲得にも繋がるでしょう。
開封体験のアイデア5選

1. ブランドアイデンティティを取り入れた梱包を心がける
ブランドアイデンティティを取り入れた梱包は、ブランドへの第一印象を高めてくれます。
商品が届いてからまず最初に目に入るのは、商品パッケージです。パッケージの素材から梱包のテープ、さらには梱包の仕方まで、ブランドの世界観を反映させることで、商品を開ける瞬間でさえも、ユニークな体験を提供できます。細部にまでこだわった梱包はブランドの印象を良くしてくれるだけでなく、ブランドストーリーを伝える効果もあり、ブランドロイヤルティの向上が期待できます。
パッケージデザインを考える際には、次のようなポイントを押さえておきましょう。
- ロゴ入り段ボールや袋を使う:ひと目でブランドを認識できる。
- ブランドカラーを取り入れる:特注でなくても色付き封筒やテープで統一感を演出する。
- 環境に優しい仕様にする:再生紙などのエコパッケージを使いサステナブルな姿勢を伝える。
2. メッセージカードを添える
メッセージカードを同梱することで、顧客は「大切に扱われている」と感じ、実店舗で丁寧な接客を受けた時のような安心感を得られます。結果として「またこの店を利用したい」と思ってもらえる可能性が高まり、リピーターやファンの獲得につながります。
メッセージカードを活用する際のポイントは以下の通りです。
- できるだけ直筆で書く:印刷されたカードよりも、手書きの方が温かみを伝えやすいです。完全に手書きが難しい場合は、一言だけでも直筆にしましょう。
- 感謝の気持ちを示す:メッセージカードの目的は販売促進ではなく、顧客への感謝を表す事です。「ありがとう」という気持ちを伝えることで信頼が深まり、長期的な関係構築につながります。反対に、宣伝やセール情報を詰め込むと「売り込みたいだけ」という印象を与えてしまいます。
- リピーターへのメッセージは変化を持たせる:複数回購入してくれる顧客には、毎回同じ文面ではなく「再度のご注文ありがとうございます」といった一文を添えるなど、内容に変化を加えましょう。小さな違いでも「自分の購入履歴を覚えてくれている」と感じてもらえ、顧客ロイヤルティを高めることができます。
3. ブランドや作り手を紹介する
ブランドの背景や作り手の想いを伝えることで、どんな人が、どのような考えで商品を作っているのかを顧客に知ってもらえ、ブランドや商品に愛着を持ってもらいやすくなります。特に、ブランド独自のストーリーや理念を打ち出している商品、職人の手仕事や丁寧な工程が価値につながるハンドメイド商材、顧客との長期的な関係づくりが欠かせないD2Cブランドでは、背景を伝える効果が一層大きくなります。
具体的には以下のような工夫が考えられます。
- ブランドストーリーをまとめた小冊子を同封する
- 作り手のプロフィールや想いを簡潔に紹介するカードを入れる
- 商品の使い方やこだわりを伝える動画へのアクセス用QRコードを添える
これらの同梱物は、一方的な商品アピールにならないよう、売り込み感の強い内容は避けましょう。また、専門用語を避けてシンプルな言葉でまとめ、図や写真を加えて視覚的に訴えることで、顧客へ伝わりやすくなります。
4. サプライズアイテムを同梱する
商品と一緒にノベルティや特典を添えることで、予想外の喜びを提供できます。開封時のワクワク感を高めるだけでなく、次回購入への動機付けにもつながります。特に実用的でデザイン性の高いアイテムであれば、実際に利用してもらえるほか、SNSへの投稿にもつながり、ブランド認知度の強化にも役立ちます。
次のような工夫をしてみると、効果的な同梱物になるでしょう。
- ブランドロゴ入りのステッカーやポストカードを同封する
- サンプル品を入れて新しい商品の体験を促す
- 次回購入で使えるクーポンや限定特典を添える
なお、品質が低いアイテムは「安っぽい」「不要」と捉えられるリスクがあり注意が必要です。また、日本国内ではノベルティ配布に景品表示法が適用され、商品の価格に応じて提供できるノベルティの金額が制限されているため、事前の確認が必要です。
5. SNSでのシェアを促す
開封体験を写真や動画で共有したくなる仕掛けを取り入れることで、SNSを通じて商品やブランドが拡散され、新しい顧客層へリーチできる可能性があります。さらに、実際の購入者によるSNSへの自然な投稿は、信頼できる第三者による口コミとして広告以上の影響力を持ち、購入意欲の向上につながります。
SNSでの拡散を後押しするための工夫として、以下のような取り組みが考えられます。
- 専用のハッシュタグを用意する:ブランド名やキャンペーン名を組み込んだハッシュタグを設定し、投稿を集めやすくする。
- インセンティブを付与する:SNS投稿者に割引コードやノベルティを提供し、投稿を習慣化させる。
- 自社で公式コンテンツを制作する:自社アカウントで開封動画を公開したり、顧客の投稿をリポストしたりすることで、顧客の投稿意欲を高める。
- SNS映えを意識したパッケージにする:見た目にインパクトのある梱包や色使いを採用し、写真・動画に収めたくなる工夫を盛り込む。
開封体験の成功事例
1. Apple

開封体験の成功事例として広く知られているのは、Apple(アップル)の製品です。たとえば、iPhoneの梱包は白をベースにしたシンプルなデザインを基調としているほか、箱のサイズや重量感、フィルムを剥がす感触に至るまで細かく設計されており、高級感や特別感を演出しています。
こうした「特別なモノを手にできた」と思わせる開封体験を提供し続けることで、Appleは「単なる電子機器ではなく所有する喜びを提供するブランド」として広く認識されるようになりました。
2. Bokksu

世界有数の日本菓子サブスクリプション会社であるBokksu(ボックス)は、同梱物を効果的に活用した開封体験を提供しています。
サブスクリプションで販売しているスナックボックスには、その月のお菓子に合うお茶のほか、日本のカルチャーガイドや海外では入手しづらいスナックも同梱しています。こうした演出により、単なるお菓子の購入にとどまらず、日本の食文化を実際に体験できる場として人気を集めています。
また、公式YouTubeでは自ら開封動画を投稿しているほか、インフルエンサーとコラボレーションを図るなど、SNSマーケティングを効果的に取り入れているのも印象的です。
3. 九重本舗玉澤

九重本舗玉澤の商品である仙台銘菓「霜ばしら」は、その独特なパッケージと開封手順が動画映えし、人気を集めています。
缶のふたを開けると、中には一面真っ白ならくがん粉が敷き詰められており、その中からお菓子を掘り出すように取り出す仕掛けになっています。この演出は視覚的なインパクトが強く、SNSで拡散されました。
さらに、冬季限定で入手困難という希少性が特別な瞬間を演出し、動画として共有される価値を高めています。開封そのものがブランド体験として成立している典型例です。
4. DIOR

DIOR(ディオール)のパッケージは、ブランドロゴをあしらった上質なデザインが特徴です。リボンをほどき、箱を開けると、丁寧に敷き詰められた緩衝材やケースが現れ、徐々に商品へとたどり着くプロセスそのものが特別な時間として演出されています。
単に商品を受け取るのではなく、開封を通じてブランドの世界観である「大人の女性向けのエレガンス」に浸れる体験が提供されており、動画映えする要素が多く含まれている点も人気の理由です。
まとめ
開封体験は、EC事業における顧客満足とマーケティングの両面で大きな役割を果たします。第一印象を良くし、SNSでのエンゲージメントを高め、競合との差別化を実現するには、自社のターゲットが何を求めているかを踏まえて体験を設計する必要があります。
優れた開封体験が設計できるよう、競合がどのように開封体験を演出しているかを調べ、自社のオリジナリティを打ち出していきましょう。小さな工夫でも体験価値は大きく変わるため、今回紹介したポイントを参考に、顧客に記憶される開封体験を設計してみてください。
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よくある質問
開封体験とは?
開封体験(Unboxing)とは、新しく購入した商品を箱から取り出す一連の行為や、その様子をSNSで紹介することです。YouTubeや各種SNSで開封動画が世界的に人気を集めていることから、現在、企業も顧客の開封体験を重視しています。
EC事業で開封体験が重要な理由は?
ECや通販では店舗での接客がない分、開封の瞬間がブランドを直接体験する初の接点となり、顧客満足度やリピート購入に大きな影響を与えるためです。
Unboxing動画とは?
Unboxing動画とは、購入者が商品を開封する様子や最初の感想を記録した動画のことです。SNSで人気があり、商品やパッケージの実際の様子を見せることで、潜在顧客に注文後に届く体験を具体的にイメージさせる効果があります。
開封体験のアイデアは?
- ブランドアイデンティティを取り入れた梱包を心がける
- メッセージカードを添える
- ブランドや作り手の紹介
- サプライズアイテムの同梱
- SNSでのシェアを促す
文:Hisato Zukeran





