EC事業を立ち上げる際、そもそもeコマースにはどのような事業形態があるのか気になる人は多いでしょう。この記事では、EC事業における6つのビジネスモデルと具体例を紹介します。最適なECビジネスモデルの選び方も解説しますので、参考にしてください。
ECサイトのビジネスモデル6種

BtoC
BtoC(Business to Consumer)は、企業が消費者に商品を販売するビジネスモデルです。BtoC ECでは、企業がサプライヤーから商品を大量に低価格で仕入れ、ネットショップを介して消費者へと販売することで利益を出すのが主流です。
BtoCはECサイトのビジネスモデルの中でも売り上げ規模が最も大きく競争が激しいことから、自社商品を選んでもらえるよう差別化することが大切です。市場調査や競合調査を通して、自身が展開するサービスの独自性や競合優位性を確立できるポイントを見極め、マーケティング戦略やブランド構築に活かすようにしましょう。また競合他社が少なく、参入障壁も低いニッチ市場を選ぶのも有効でしょう。
DtoC(Direct to Consumer)はBtoCの一種ですが、製品やサービスの製造業者が直接消費者に商品を販売する点がBtoCとは異なります。卸売業者や小売店を通さずに販売するため、中間コストを削減できたり顧客とより深い関係を築けたりするメリットがあります。一方、企業が集客やマーケティング、顧客対応を行う必要があり、製造以外の業務が増えるというデメリットがあります。
BtoC ECの事例
- 自社ECサイト:自社でECサイト構築から運営まで行う形態。COHINA(コヒナ)など。
- テナント型ECモール:複数の店舗がプラットフォーム上に出店する形態。楽天市場など。
- マーケットプレイス型ECモール:複数の売り手が共通のプラットフォームで商品やサービスを出品する形態。Amazom(アマゾン)など。
BtoB
BtoB(Business to Business)は、企業が他の企業に対して商品やサービスを提供するビジネスモデルです。たとえば、マーケティング会社が自社ホームページで分析ツールを販売し、他企業がそれをオンラインで購入・ダウンロードするなどが当てはまります。
BtoB ECは、企業単位での取引となるため一度の取引額が大きくなる傾向があります。また、BtoB取引は長期的な関係を築きやすく、販売する商品やサービスによっては限られた顧客だけで安定した収益が見込めるため、マーケティングに費やす労力や費用が比較的少なく済むのも特徴です。
BtoB ECの事例
- クローズド型ECサイト:会員制で、運営側から認証された企業のみがアクセスできるサイト。京都醸造など。
- セミクローズド型ECサイト:サイト自体は誰もが閲覧できるものの、販売価格や納期などの詳細情報は会員登録後に閲覧可能なサイト。卸売サイトなどが活用。
- オープン型ECサイト:誰でも自由にアクセスして商品を閲覧・購入できるサイト。アリババなど。
CtoC
CtoC(Consumer to Consumer)は、消費者同士が取引を行うビジネスモデルです。販売者は不要な物品やハンドメイド製品を販売して収益を得る一方、購入者は手頃な価格で商品を購入できたり、ユニークな製品を手に入れたりすることができます。
CtoC ECの事例
- フリマアプリ:ユーザーがスマホで出品し、他のユーザーが直接購入できるサービス。メルカリなど。
- オークションサイト:アイテムをオークション形式で販売できるプラットフォーム。Yahoo!オークションなど。
- ハンドメイドマーケットプレイス:ハンドメイド製品の販売者と購入者をつなげるプラットフォーム。Etsy(エッツィー)など。
CtoB
CtoB(Consumer to Business)は、個人が企業に対して商品やサービスを提供するビジネスモデルです。たとえばフリーランスのデザイナーが企業のロゴやウェブサイトを制作するケースなど、個人が自らのスキルを活かして、企業のニーズに応える商品やサービスを提供することなどが該当します。
CtoBの利点は、個人が自身のスキルを比較的大きなプロジェクトに活かせる点にあります。企業側にとっても、実施するプロジェクトに必要なスキルやコストなどをもとに、最適な人材を選べるメリットがあります。
CtoB ECの事例
- クラウドソーシング:個人(フリーランスなど)が企業向けに業務を提供するプラットフォーム。クラウドワークスなど。
- フォトストックサービス:個人の写真家が自ら撮影した写真を企業に販売できるプラットフォーム。写真ACなど。
BtoA
BtoA(Business to Administration)は、企業が政府機関や自治体に対して商品やサービスを提供するビジネスモデルです。BtoG(Business to Government)とも呼ばれます。政府機関が事業者に直接依頼することもありますが、事業者自身が一般競争入札に参加して仕事を得るのが一般的です。
BtoAモデルは、高額な取引が見込めるため収益性が高いことが多いです。しかし、手続きが煩雑なうえに、複数の部署と調整や確認を行う必要があるため、仕事が完了するまでに時間がかかる場合があります。
BtoA ECの事例
- 楽天グループ株式会社:楽天ふるさと納税で、返礼品の選定・発送を代行する業務やクラウドファンディングを通してふるさと納税するプランを提供。
- LINE株式会社:KANAMETO ECO(カナメトエコ)を展開し、自治体の公式アカウントで粗大ゴミの回収申し込みや支払いといった公共サービスの手続きを行えるサービスを提供。
CtoA
CtoA(Consumer to Administration)は、個人が政府機関に対して商品やサービスを提供するビジネスモデルです。ほかのビジネスモデルと比べて案件数が少ないのが現状です。
CtoA ECの事例
- インタウンデザイナー:経済産業省が促進しているもので、地方公共団体等に地域に密着したデザイン活動を提供する。地域外の人材を活用する類型などがある。
ECサイトのビジネスモデルの選び方

1. ターゲット市場を調査して決める
事業で扱う予定の商品やサービスの購買意欲が高そうな消費者グループを調査し、ビジネスモデルを決定します。ターゲット市場調査では、以下のような項目を調べます。
- 消費行動パターン:大手サイトから購入する傾向にあるのか、小規模サイトから購入する傾向にあるのかなど
- 価値観:中古でも良いから安価な商品を好むのか、高価でも公式サイトで販売されている商品を好むのかなど
- プラットフォーム:好んで利用しているECプラットフォームがあるのかどうかなど
このようなデータを収集することで、BtoC、DtoC、CtoCなど、どのビジネスモデルにするとターゲットにリーチしやすくなるのかがわかります。また、提供する商品やサービスの種類の方向性、利用するプラットフォームも決めやすくなるでしょう。
2. 事業規模や必要な資金などから決める
初期費用、ランニングコスト、収益発生時期や見込み額など、事業規模や資金面について十分に考慮することも重要です。
たとえば、BtoBやBtoAモデルでは高単価での取引が期待できます。一方、実績がある大企業が競争相手になる可能性があるほか、取引単価が高い分、必要となる資金も高額になる傾向にあります。リソースの限られるスモールビジネスでは、社会的信頼度や資金量、取引実績などで大手企業と対等に競って仕事を獲得し続けるのは難しいかもしれません。
BtoCやCtoCモデルの場合は、一度の取引における収益は少なくなるものの、消費者のニーズに応えられる商品やサービスを提供できれば、安定した収入を得られる可能性があります。商品に手書きのメッセージカードを入れるなど、小規模事業者ならではの細やかなサービスを心がけて個々と良好な関係を築くことで、顧客を獲得することができます。
このように、事業規模との相性からECサイトのビジネスモデルを決めることもできます。
3. 自分のスキルを活かせるかどうかで決定する
自分のスキルを活かせるかどうかでECビジネスモデルを選ぶと、市場での地位をより確立しやすくなります。たとえば、以下のような考え方ができます。
- 自分で製品を作ることができ、消費者の動向を探るのが得意なら、D2Cビジネスモデルや、CtoCが適していると考えられます。
- ブランディングやSNSの知識があるなら、業者が製造した商品を自分のブランド名で販売するホワイトレーベルが向いているでしょう。ビジネスモデルはBtoCが考えられます。
- デザインスキルに自信があるなら、CtoC、CtoBなどのビジネスモデルを採用するのがいいでしょう。制作したデザインを商品に印刷して販売するオンデマンド印刷を利用するのもおすすめです。
- 特定の商品を低コストで仕入れられるなら、BtoCでの卸売がふさわしいでしょう。
まとめ
ECサイトのビジネスモデルには、企業が消費者に商品を販売するBtoCやDtoC、フリマアプリのように消費者がほかの消費者に商品を販売するCtoCなどがあります。政府機関を対象に商品やサービスを提供するビジネスモデルもありますが、社会的信頼度や資金量の観点から小規模事業者が参入するのは困難です。小規模事業者がECサイトのビジネスモデルを選ぶ際は、BtoCやCtoCなど、個人を対象としたサービスの展開を検討すると良いでしょう。
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よくある質問
ECサイトのビジネスモデルにはどんな種類がある?
ECサイトの種類には、ビジネスモデルの観点からだと以下の6種類があります。
- BtoC(企業から消費者へ)
- BtoB(企業から企業へ)
- CtoC(消費者から消費者へ)
- CtoB(消費者から企業へ)
- BtoA(企業から政府へ)
- CtoA(消費者から政府へ)
おすすめのECビジネスモデルは?
- サプライヤーから低コストで商品を仕入れて再販するBtoC
- 業者が注文に応じて消費者に商品を発送するドロップシッピングを活用したBtoC
- 業者に商品を製造してもらい、自分のブランドで販売するDtoC
- 契約期間中、消費者に定期的に商品やサービスを販売するサブスクリプション型のBtoC
ECビジネスの始め方は?
- 市場調査や分析を行う:インターネット上でアンケートに回答してもらうなど、ターゲット層の情報を集めます。そして競合他社が販売している商品を参考にして、どのような商品が売れるのかを分析します。
- 販売する商品を決める:市場調査の結果、ターゲット層、利益率、トレンドなどを考慮して販売する商品を決定しましょう。
- ECサイトを立ち上げる:既存のプラットフォームを活用するか、自分でECサイトを構築するかを決定しましょう。
- ブランディングと集客を実施する:商品の魅力が伝わるようにブランド名やロゴ、イメージカラーなどを決めましょう。そのうえで、SNSなどを活用したマーケティングや広告を実施して認知度を高めます。
- 分析と改善に努める:広告による集客効果などを分析し、さらに商品を販売するには何が必要かを考えましょう。ECサイトの利便性を高めることで、サービスの質向上に努めます。
文:Ryutaro Yamauchi





