顧客を理解することは、顧客の心に響くメッセージを発信したりオファーを提供したりできるようになるため、ビジネスの成功において非常に重要です。より深く顧客のニーズを理解できるようになるには、顧客を共通の特性に基づいてグループに分ける顧客セグメンテーションが有効です。
本記事では、顧客セグメンテーションの概要や分け方、評価基準などを解説します。また、顧客セグメントで成功した企業の例も紹介するので、マーケティング戦略で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
顧客セグメンテーションとは?

顧客セグメンテーションとは、企業が顧客を共通の特性や行動、ニーズに基づいてグループに分けるプロセスのことです。これにより、各セグメントの特性に合わせて効果的かつ最適なマーケティングを行うことができます。
また、ターゲットマーケティングやSTP分析(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3段階でマーケティング戦略を立てる手法)の基礎となるプロセスでもあります。
顧客をセグメント化する理由

顧客をセグメント化する最大の理由は、関心やニーズの近い顧客グループに絞って効果的にアプローチできることにあります。また、データを基に顧客を分析するため、業種や規模を問わずあらゆるビジネスに活用できるのも、顧客セグメンテーションが重視されている理由の一つです。
さらに、顧客の購買行動や意思決定プロセスを可視化するカスタマージャーニーと組み合わせることで、最適なタイミングでのアプローチが可能になります。これにより、次のようなメリットが得られます。
- ターゲットマーケティングの精度向上:特定の顧客グループに響くターゲットマーケティングのメッセージを作成し、グループごとに最適な情報を発信可能
- 適切なコミュニケーションチャネルの選定:それぞれのセグメントに合った、メールやSNS投稿、広告など、最も効果的な媒体を選べる
- 商品開発・改善の精度向上:顧客セグメントごとのニーズ分析を通して、新商品・新サービスの企画や既存商品の改善点を明確にできる
- 顧客との関係の強化:特性に応じた対応やサービスの提供ができるため、顧客満足度が高まり、ロイヤルティが向上する
- 価格戦略の最適化:顧客層ごとの支払い意欲や購買行動を把握し、適切な価格帯やプランのテストが可能
- 高収益顧客への集中投資:最も利益をもたらす顧客層を特定し、限られたリソースを効率的に配分できる
- アップセル・クロスセルの販売機会の拡大:顧客の購買傾向を把握し、関連商品や上位プランの提案を効果的に行える
顧客セグメントの分け方

顧客セグメントは、ペルソナも意識しながら次の観点から分けるのが有効です。
人口動態変数(デモグラフィック)
人口動態変数は、性別や年齢、職業、収入など、顧客の社会的属性に基づいてグループ化する方法です。顧客の生活背景に関する事実に基づいて分類できるため、最も基本的で広く活用されるセグメンテーションの一つです。
人口動態変数の情報は、企業が顧客の購買傾向やライフステージを把握するうえで重要なデータとなります。ただし、家族構成などの個人情報は、外部データだけでは得られないことも多く、以下のような手法で補完的に収集する必要があります。
- アンケート調査
- 公開市場データや業界レポートの活用
- ロイヤルティプログラムや会員データの分析
- オンラインストアの登録フォーム
- 店舗での会話や接客記録
- 顧客レビューやフィードバック
- POSデータ
- カスタマーサポートとのやり取り内容
- 購入履歴や購買頻度
- オンライン分析(ウェブアクセスやオンライン行動データなど)
地理的変数(ジオグラフィック)
地理的変数は、顧客を居住地や地域、気候などの地理的条件によって分類する方法です。地域ごとの文化や気候、言語の違いを考慮することで、より適切なマーケティング施策を行うことができます。主な要素には次のようなものがあります。
- 居住地域:国、都市、市区町村など
- 使用する言語:日本国内でも方言や表現の違いなど
- 文化的・地域的要素:食文化、季節行事、気候など
例えば、北海道や東北地方の顧客には冬季に防寒着や暖房器具を訴求する一方、沖縄や九州南部の顧客には夏向けの軽衣料や冷感寝具をプロモーションするほうが効果的です。
また、関西と関東では味の好みや広告表現に違いがあるため、同じ商品でもメッセージ内容を地域に合わせて調整することで、より共感を得られる場合があります。
全国展開している企業であれば、地域ごとに使用言語を最適化したり、地域の祭りやご当地文化を取り入れたキャンペーンを行ったりすることも有効です。
心理的変数(サイコグラフィック)
心理的変数とは、顧客の性格、価値観、ライフスタイル、興味関心などの心理的要素に基づいてグループ化する方法です。同じ年齢や収入層であっても、考え方や価値観が異なれば購買行動も大きく変わるため、人口動態変数よりも深い顧客理解を得ることができます。主なセグメント要素は次の通りです。
- 興味、趣味
- ライフスタイル、価値観
- 性格、特徴
- 社会的地位
過去の購入履歴やアンケート結果を活用することで、顧客がどのような生活を送り、何を楽しみとし、何を重視しているのかを把握できます。
例えば、ウェルビーイング関連のサプリメントブランドを運営している場合、「自然のなかでアクティブに過ごすアウトドア志向の顧客」と「日常的に運動習慣を取り入れるフィットネス志向の顧客」といったように、ライフスタイルや価値観に応じて異なるセグメントを設定することが可能です。
行動変数(ビヘイビアル)
行動変数は、顧客の購買履歴や利用頻度、オンライン上での行動パターンなど、実際の行動データに基づいてグループ化する方法です。どのような商品を、どのくらいの頻度で、どのように購入しているかといったデータを分析することで、より精度の高いマーケティング施策を立案できます。
- 購入行動
- 使用パターン
- 顧客ロイヤルティ
例えば、ヘアケアブランドの場合、シャンプーのみを購入している顧客をセグメント化し、コンディショナーのセット購入を促すプロモーションを実施できるでしょう。また、毎月同じ商品を定期的に購入する顧客をグループ化し、継続利用者限定の特典やクーポンを提供することもできます。このように、行動データを基にセグメントを作成することで、顧客ごとに異なる購買段階やロイヤルティレベルに合わせたアプローチが可能になります。
テクノグラフィック
テクノグラフィックによる顧客セグメンテーションは、顧客が使用するデバイスやアプリ、OS、検索エンジンの種類などのデジタル行動に基づいて、顧客をグループ化することです。これには次のような要素があります。
- オンラインでの行動:検索、購入など
- テクノロジーの使用状況:アプリ、通信手段、SNS
- デバイスの種類:スマートフォン、タブレット、パソコン
例えば、SMS(ショートメッセージ)の利用を好む顧客には、新商品発売やキャンペーンなどをSMSで送信することが効果的です。Instagram(インスタグラム)やTikTok(ティックトック)などのSNSを通じてブランドを知った顧客には、それぞれのプラットフォームに合わせたトーンでメッセージを発信することで、より強いエンゲージメントを得ることができます。
なお、BtoBマーケティングでは、顧客が企業であるため、次のような要因に基づいて顧客セグメンテーションを行うのが一般的です。
- 業界:製造業、アパレル、美容、食品など
- 企業規模:従業員数、売上高、資本金など
- 取引履歴:過去に購入した商品やサービス契約の履歴
- 所在地:国内外の拠点
また、Shopifyのセグメンテーションツールを使用すれば、オンラインストアのトラフィックから直接データを収集することができます。顧客セグメントとテンプレートも用意されており、初めてでも簡単に顧客セグメンテーションが行えます。さらに、ビジネスの成長に合わせて、顧客セグメンテーションを調整・削除することも可能です。
顧客セグメントの評価基準「4R」

顧客をセグメント化したあとは、それぞれのセグメントがマーケティング施策上、有効なターゲットであるかを検証する必要があります。その際に活用されるのが、次の4つの基準からなる「4R」です。
- Rank(優先順位):どのセグメントを優先的にアプローチすべきか順位付けすること
- Realistic(有効な規模):継続的に利益を生み出せる顧客数や市場規模を有しているかを評価すること
- Reach(到達可能性):広告やチャネルを通じて、実際に顧客へリーチできるかどうかを測ること
- Response(測定可能性):成果指標などを用いて、効果を数値的に測定できるかどうかを確認すること
これらの4つを満たしている場合、十分に効果を発揮できる顧客セグメントといえます。
顧客セグメンテーションで成功した企業の例
ユニクロ
ユニクロは、一般的な年齢や性別といった属性ではなく、「カジュアルでベーシックな商品」という価値観を軸に市場をセグメント化しました。その結果、誰もが着やすく、日常に取り入れやすいアイテムとしてブランドイメージを確立しています。
このように、ユニクロは顧客の人口動態変数ではなく、「日常で使いやすいベーシックアイテムを求める」という心理的変数や行動変数を基準にセグメント化したことで、幅広い層に受け入れられるブランド戦略を実現しています。
メルカリ
フリマアプリで有名なメルカリは、一般的な利益を目的としたオークションの取引市場とは異なり、シンプルを重視した購買行動を軸にセグメンテーションを行いました。簡潔なセグメントにすることで、担当者が理解して行動しやすくなり、効果的なマーケティング施策をすばやく実行できるようになりました。その結果、競争の激しいフリマ市場のなかで、新たな市場を開拓し、独自のポジションを確立しています。
まとめ
顧客セグメンテーションとは顧客を共通点ごとに分類することで、効果的なプロモーションやキャンペーンの展開に役立ちます。
人口動態変数や地理的変数などの一般的な要素で分ける以外にも、心理的変数や行動変数、テクノグラフィックといった要素で分けることもできます。
セグメント分けをしたら完了ではなく、各セグメントを評価して、カスタマージャーニーと組み合わせて活用したり、STP分析を行ったりすることが大切です。
この記事を参考に、的確な顧客セグメンテーションを行い、効果的なマーケティングを行えるようにしましょう。
Shopifyには、顧客セグメンテーションが簡単に行えるツールやテンプレートが用意されています。マーケティングツールも豊富なので、初心者でもデータに基づいた施策をスムーズに実行できます。
顧客セグメンテーションに関するよくある質問
顧客セグメントとは?
顧客セグメントとは、顧客を特性や傾向ごとに分けたグループです。
ユーザーセグメンテーションとは?
ユーザーセグメンテーションとは、顧客層を共通の特徴を持つ個別のグループに分けるプロセスです。これにより、各顧客グループのニーズや購買意欲を深く理解でき、カスタマイズされた商品やサービス、効果的なマーケティング戦略が展開しやすくなります。
STP分析と顧客セグメンテーションの関係は?
STP分析は、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の3つのステップで自社商品のマーケティング戦略を立てる手法で、顧客セグメンテーションはその最初の段階を担います。そのため、セグメンテーションを適切に行わないと、効果的なターゲティングやポジショニングができなくなってしまいます。
顧客セグメンテーションのタイプは?
- 人口動態変数(デモグラフィック)
- 地理的変数(ジオグラフィック)
- 心理的変数(サイコグラフィック)
- 行動変数(ビヘイビアル)
- テクノグラフィック
顧客セグメンテーションの成功事例は?
顧客セグメンテーションの成功事例は、ユニクロやメルカリです。年齢や性別といった一般的な属性ではなく、価値観や共感といった心理的変数、行動変数などを重視したマーケティング戦略によって成功を収めています。
文:Momo Hidaka





