リップクリームは、唇の荒れや乾燥を防ぐだけでなく、色付きの商品を使うことで普段の化粧や化粧直しにも使用できます。また、乾燥が激しい秋や冬において、男女問わずリップクリームを使用する人は多く、肌の乾燥対策として活用している人も少なくありません。
リップクリームは低コストで製造しやすいアイテムでもあるため、ネットショップで販売することで、コストを抑えたビジネス運営ができるでしょう。近年のナチュラルコスメやサステナブルな取り組みへの関心の高さを踏まえて、天然素材を使用した商品や環境に配慮した商品を製造・販売することも、収益が見込めるアイデアの一つです。
この記事では、リップクリームの製造方法から必要な許認可、マーケティング方法までを詳しく解説していきます。
リップクリームを製造する方法

リップクリームを製造する主な方法には、自社製造の他にOEM、ODMがあります。自社製造の場合には、許可を取得するための設備要件や人的要件が必要となるため、OEMやODMを活用するケースが多い傾向にあります。
自社製造
自社で工場を立ち上げてリップクリームを製造する方法です。材料からレシピまで完全にオリジナルで製造することができるだめ、他社との差別化に最適と言えるでしょう。独自性の高い商品開発を目指している場合や、ブランドの世界観やこだわりを表現したい場合にも適しています。
OEM
OEM(Original Equipment Manufacturing)は、自社で企画や設計した商品の製造を専門業者やメーカーに依頼し、自社ブランド商品として販売する方法です。プライベートブランド商品の製造にも使用される方法で、製造を全て業者に依頼することで、マーケティングやブランディング、デザインなどに集中することができます。
OEMのなかには、ホワイトラベル製品と呼ばれる、すでに完成している製品もあります。この場合、自社ブランドのラベルを貼ることで自社製品として販売ができます。開発にかかる時間やコスト、手間を省くことができるだけでなく、小ロットからの受注を受け付けているメーカーもあるため、初めてスキンケアブランドを立ち上げる際にも安心して始められます。
ODM
ODM(Original Design Manufacturering)は、商品の企画や設計から製造に至るまでを一括で依頼する方法のことです。業者との打ち合わせを重ねて、ブランドのイメージやコンセプト、取り扱う商品などを相談し、商品開発を行います。OEMと異なり企画から製造までを依頼することから、初期費用や開発期間が必要となりますが、こだわりを持って商品開発を行いたい場合や、ブランドの世界観をしっかりと表現したい場合に最適です。
リップクリームを製造・販売するのに必要な許可

リップクリームを仕入れて販売する小売販売の場合、特別な許可は必要ありません。一方で、OEMやODM、自社製造などで自社ブランドとしてリップクリームなどの化粧品を製造・販売する場合には、各都道府県が管轄する次の許可が必要になります。
化粧品製造業許可(一般区分)
化粧品の製造に必要な許可で、コスメ商品を自社製造する場合に取得する必要があります。要件には次のようなものがあります。
- 製造設備が基準に適合している
- 申請者が欠格要件に該当しない
- 資格要件を満たす者を責任技術者として設置する
それぞれの要件は細かく設定されています。 詳細は、厚生労働省令の「薬局等構造設備規則」や各都道府県の公式サイトなどから確認できます。
化粧品製造販売業許可
化粧品の販売に必要な許可です。自社製造、OEM、ODMで取得が必要になります。許可の取得には、主に以下の条件を満たす必要があります。
- 総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者を設置する
- 申請者が欠格条項に該当しない
- GQP省令(品質管理基準)に適合する
- GVP省令(製造販売後安全管理基準)に適合する
こちらも詳細は各都道府県の公式情報を確認するようにしましょう。また、許可の取得が難しい場合は、化粧品製造業許可と化粧品製造販売業許可の両方を取得済みのOEM・ODM業者を活用するのも一つの手です。
リップクリームをオンライン販売するメリット

低コストで製造ができる
リップクリームの製造に必要となる材料は、安価で手軽に購入できるものがほとんどです。そのためリップクリームの自社製造は、すでに工場や設備などが揃っている場合は、低コストで商品を製造・販売できます。OEMやODMを利用する場合でも、小ロットからの注文を受け付けているメーカーを選ぶことで初期投資を抑えられるでしょう。こういった観点からも、リップクリームは初めてネット販売を始める場合にも作りやすい商品と言えるでしょう。
製造単価を下げたい場合、小ロットでの仕入れではなく大量発注するのも一つの手です。ただし、大量発注の場合は輸送コストがかかるほかに、在庫管理や品質管理などに別途費用がかかってしまう点には注意しましょう。発注量は慎重に判断する必要があります。
アレンジしやすい
リップクリームは、ベースに使用する材料から色、追加する香りなど、顧客のニーズに合わせて簡単にアレンジできるという特徴があります。低コストで材料を集めることができるので、さまざまなアレンジを加えたリップクリームを作って比較することもできるでしょう。香りや色など、独自性のある商品を作ることができれば、競合他社との差別化にもなります。
安定した需要がある

リップクリームは安定した需要があり、特に冬場に高まる傾向にあります。過去5年のGoogleトレンドの人気度の動向を見ても、徐々に需要が高まっている様子がうかがえます。さらに、女性だけでなく男性の使用者も少なくないことから、安定した需要が見込める商品であると言えるでしょう。
世界的に市場規模が拡大している
Mordor Intelligence社によると、2024年の世界のリップケア市場は45億2,000万ドルに達し、2029年まで毎年4.9%の成長率で拡大すると予測しています。特にオーガニックリップケア商品は人気が高まっており、今後の成長が期待できます。
リップクリームの種類
みつろうリップクリーム

リップクリームを製造する際によく使用される材料に、みつろうがあります。みつろうとはビーワックスとも呼ばれ、ミツバチが巣を作る時に分泌するろうのことです。うるおいを逃さないという特徴を持ち、保湿やつや出しのためにリップクリームをはじめとして、口紅やハンドクリームにも配合されていることがあります。
色付きリップクリーム

色付きリップクリームは、保湿だけでなくコスメ・化粧品としても使用したい顧客のニーズに合った商品です。ミネラルの一種であるマイカに着色を施したカラーマイカや、酸化鉄などを使って好みの色に仕上げます。絶妙な色合いの色付きリップを作ることができれば、差別化も図れるでしょう。
薬用(医薬部外品)リップクリーム
薬用リップクリームは、医薬品に準じる目的を持つ医薬部外品です。厚生労働省が認めた有効成分が配合されていることから、唇の荒れや乾燥などの肌トラブルを抱えている人にも人気があります。
医薬部外品である薬用リップクリームを販売するには、都道府県が管轄する医薬部外品製造販売業許可や医薬部外品製造業許可といった許可が必要となります。しっかりと法令を遵守できるよう、どのような許可・承認が必要なのかを事前に確認しておくことが大切です。
ヴィーガンリップクリーム
動物由来成分を使用しないヴィーガン化粧品は、2024年に日本市場でも10億米ドルに達するなど近年注目を集めており、リップクリームもその一つです。ニッチな消費者の需要に応えるビジネスが展開できるでしょう。
ヴィーガンリップクリームには、ココナッツオイルやカカオバター、ホホバオイル、カレンデュラエキスなどの植物由来成分を使用します。
UVカットリップクリーム
日焼け止め効果があるリップクリームは、特に夏場に需要が高まる商品です。リップクリームを製造する際に、紫外線吸収剤や紫外線錯乱剤を使用します。
「紫外線をカットする」「紫外線から肌を守る」「UVカット」等の表現は、紫外線吸収剤・錯乱剤を配合した商品の表示基準に従う必要があるため注意しましょう。
リップクリームをオンラインで販売する方法

1. 市場調査を行う
まず、リップクリームを販売するにあたり、どのようなターゲット層を狙うか、ニッチな需要はあるのかといった点を知るためにも、市場調査を行います。リップクリームを購入したいと考える顧客の特徴を知り、競合他社はどれだけ存在するのか、参入するメリットはあるかを見極める必要があるでしょう。
市場調査には次のような方法を活用できます。
- Googleトレンドでキーワードリサーチ
- SNSの人気ハッシュタグ
- @cosme(アットコスメ)のクチコミ
- オンラインアンケート
2. 商品コンセプトを具体化する
市場調査の結果を元に、製造・販売する商品のコンセプトを具体化していきます。次のような項目をもとに商品の方向性を決めましょう。例も紹介しているので参考にしてみてください。
- 使用用途:普段使い用、男女兼用、コスメ兼用
- 路線:オーガニック、サステナブル、ラグジュアリー
- 特徴:色付き、UVカット、低刺激
- 容器:スティック、チューブ、バーム
- 香り:無香料、香り付き
たとえば、市場分析の結果から、オーガニックで環境に配慮したリップクリームの製造・販売をすることにしたとしましょう。この場合、商品だけでなく梱包にもエコパッケージを採用するなど、商品コンセプトを明確にすることでビジネス全体の方向性も見えてきます。
また、リップクリームだけに特化するのではなく、他にどのような商品を提供できるかを考える必要もあるでしょう。リップクリームに興味を持ってくれた顧客に、ハンドクリームや石鹸、ローションなど他のスキンケア商品を提案することで、アップセルやクロスセルを行うことも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
3. ブランドを構築する
商品コンセプトが決まったら、次はブランディングを実施します。ブランドアイデンティティを定め、顧客とのコミュニケーションに一貫して反映することで、ブランドの想いを効果的に伝えることができます。ブランドコミュニケーションは、購買意欲の向上やリピーター獲得において大切な要素です。
ブランド構築では、次のような項目を重点的に考えましょう。
リップクリームはサイズ自体が小さいことから、短くわかりやすい商品名やブランド名にすると、パッケージの印刷がしやすいでしょう。
4. ビジネスプランを作成する
リップクリームビジネスをどのように始めるか、またどうやって収益化を目指すのかを詳細にまとめたビジネスプランを作成します。前述した市場調査の内容を含めるだけでなく、競合他社の動向や分析、ターゲットオーディエンスの特徴、資金計画といった内容についても記載します。
5. 法的要件を確認、遵守する
リップクリームは化粧品に該当するため、製造・販売するにあたり、さまざまな要件が定められています。以下のようなポイントに注意して、製造を進めることをおすすめします。
- 化粧品製造業許可や化粧品製造販売業許可を取得する
- 必要に応じて医薬部外品製造販売業許可や医薬部外品製造業許可を取得する
- 適切な成分表示をする
- 誇張表現などのNG表現は使わない
国内販売する化粧品には、配合されているすべての成分名を表示する義務があります。通常、OEMやODMを活用してコスメをECで販売する場合、メーカー側が対応しますが、最終責任者はブランド運営者になるため、しっかりと遵守する必要があります。
また、薬機法では広告や商品説明の表現に対して細かい規則を設けています。「24時間うるおう」や「敏感肌にも安心」など、誇張表現や根拠のない表現は違反となるため、どんな表現が使用できないのかを事前に確認することが重要です。
6. ECサイトを開設して販売する
ECサイトの作り方を参考にしながら、自社ECサイトを立ち上げ販売を始めましょう。ECサイトでは次のようなページを設定します。
- トップページ:消費者が最初に目にするページです。サイト離脱率を下げるためにも、ターゲット層に刺さるキャッチコピーや画像を挿入しましょう。
- Aboutページ:ストーリーテリングを活用してブランドの想いや価値を伝えます。
- 商品ページ:高画質の商品写真を用意し、ブランドガイドラインやSEOライティングを意識しながら商品説明を作り込みます。成分や香り、商品の特徴もわかりやすく記載しましょう。
- 返品ポリシー:ネット販売では「イメージと違った」といったトラブルが発生しやすいです。返品ポリシーをしっかりと設けることで自社を守ることにつながります。
Shopify(ショッピファイ)などのネットショップ作成サービスを活用すると、ブランドの世界観を反映したECサイトが簡単に作成できます。商品のアップロードもスムーズなので、サイト運営の効率化に効果的です。
7. マーケティングを行う
自社ECサイトでの販売だけでなく、以下のようなチャネルも活用してマーケティングを実施し、コンバージョン率の向上を狙いましょう。
- Instagram(インスタグラム):質の高い商品画像や使用シーンがわかる画像を投稿してフォロワーと共有します。インフルエンサーマーケティング戦略を実施したり、使用方法や製造の舞台裏を撮影した動画をアップロードしたりするのも効果的です。
- Pinterest(ピンタレスト):Pinterestには美容商品や化粧品が豊富にアップロードされています。視覚的なSNSで、ユーザーに見つけてもらいやすいという特徴があります。
- SNSでのプレゼント企画やコンテスト企画:プレゼントやコンテストを企画することで、消費者の注目を集め、ブランドや商品の認知度を向上させます。顧客リストを作成することにもつながるため、その後のマーケティングに活かせます。
- メールマーケティング:メルマガやニュース、プロモーションなどメールを通して顧客へ情報を伝達したり、やり取りを行います。商品の魅力の訴求だけでなく、やり取りを通して信頼関係を築くこともできるでしょう。
- アップセルとクロスセルを提案する:購入を検討している消費者に上位商品やオプションを提案するアップセルや、関連商品を勧めるクロスセルを提案し、売上アップを狙います。
- 広告を出す:Facebook(フェイスブック)広告やインスタ広告、Google(グーグル)広告、TikTok(ティックトック)広告などを活用しましょう。
このほか、コスメ・化粧品のマーケティング方法の記事も参考に、マーケティング戦略を策定してみましょう。
まとめ
リップクリームは、今後の成長が期待される市場の一つです。世界のリップケア市場は拡大傾向にあり、特にオーガニックリップクリームへの関心が高まっています。
リップクリームは、初期費用を抑えて製造ができるだけでなく、アレンジしやすいという特徴を持っています。一方で、リップクリームを販売するにあたり、化粧品製造業許可や化粧品製造販売業許可といった許認可が必要になり、法的要件の確認と遵守が課題となることがあります。ビジネスを法的に守るためにも、どんな要件が定められているのか事前に確認しておくことが大切です。
リップクリームのオンライン販売を成功に導くには、市場ニーズを反映させながらもオリジナリティのある商品を製造し、さまざまなマーケティング戦略を取り入れて販売することが鍵となるでしょう。
リップクリームに関するよくある質問
リップクリームにはどんな種類がある?
- みつろうリップクリーム
- 色付きリップクリーム
- 薬用リップクリーム
- ヴィーガンリップクリーム
- UVカットリップクリーム
リップクリームのケースにはどのようなものがある?
リップクリームのケースは、主にスティックやチューブ、クリームケースがあります。製造するリップクリームの硬さに合った容器を選びましょう。
リップクリームの販売価格の目安は?
リップクリームは、1本あたり200円程度から販売することができます。使用する材料やパッケージ、ブランディングにこだわることで1本1,000円以上の価格で販売することも可能です。お得なセット価格などを用意するこで平均注文額を増やしたり、サブスクリプションモデルを採用して定期的な収益につなげる方法もあります。
リップクリームを売るのに必要な販売許可は?
リップクリームを自社製造して売るのに必要な許可は、化粧品製造業許可と化粧品製造販売業許可です。また、薬機法に基づき、広告や商品説明における表現にも気を付ける必要があります。越境ECを行う場合には、販売する国ごとの規制や許認可にも注意が必要です。
文:Masumi Murakami





