TikTok(ティックトック)は、日本を含む世界各国で、特に若い世代に広く利用されている動画ベースのSNSです。拡散力の高いTikTokは、新しい顧客層との接点を広げやすく、商品やサービスの魅力を効果的に伝えられるため、ブランド認知の向上や売り上げアップにつなげられます。そういったことから、TikTokマーケティングは企業や個人事業主にとって有力な手段となってきています。
本記事では、TikTokを企業が活用するための具体的な方法や成功事例を紹介します。SNSマーケティングを強化したい企業や既存のTikTokアカウントを有効活用できていない事業主はぜひ参考にしてください。
TikTokを企業が活用する方法:5つのステップ
1. TikTokのトレンドやターゲットに人気のあるものを理解する
TikTokのコンテンツをチェックして、TikTokでバズりやすい投稿やポジティブな反応を得やすい投稿のアイデアを得ましょう。たとえば、アプリを開いて最初に表示される「おすすめ」ページで、TikTok広告やトレンドの動画、ユーザーの行動をもとに選ばれたコンテンツへ目を通してみて下さい。「探す」タブには、注目の話題や人気コンテンツが一覧で表示されます。
利用を重ねるほどアルゴリズムが学習し、関心度の高い内容が表示されるようになるため、業界やターゲット市場に関連するコンテンツを積極的に見るのも効果的です。
さらに、検索機能を使えば、ハッシュタグやユーザー名などを指定してコンテンツを探すことも可能です。同業他社のハッシュタグをチェックして競合分析したり、ターゲットオーディエンスに人気のユーザーの投稿を分析したりするのもビジネスに役立つでしょう。


2. 他のユーザーと交流する
TikTokを企業が活用するためには、コミュニティとのやり取りを通じて他のユーザーとの関係を深めることも大切です。動画に「いいね」やコメントをしたりシェアしたりして交流しましょう。
自分の関心がアルゴリズムに反映され、業界やターゲット市場と関連性の高いコンテンツが表示されるようになるだけでなく、既存顧客や潜在顧客と直接交流することでエンゲージメントが高まり、自社アカウントの投稿にも反応してもらいやすくなります。
また、同じ業界のブランドやクリエイターをフォローすることは、トレンドの把握やネットワーク作りにも役立ちます。インフルエンサーマーケティングを行う際にも、日頃の交流があると依頼しやすくなるでしょう。

3. 動画コンテンツを作成する
ターゲットに響くコンテンツの特徴を理解したら、実際に動画を作成して投稿しましょう。基本的な流れは次の通りです。
- TikTokアプリを開き、下部の「+」ボタンをタップして動画作成画面へ進みます。
- 動画の長さを選び、中央の録画ボタンで撮影を開始・停止します。デバイスに保存されている写真や動画のアップロードや、テンプレートの利用も可能です。
- 撮影後は編集画面で、フィルター・エフェクト・テキスト・キャプションなどを追加します。
- 「次へ」をタップし、キャプションやハッシュタグ、カバー画像、人物や場所のタグを設定します。必要に応じて公開範囲やコンテンツの再利用許可などの詳細設定も行います。
- 最後に「投稿」をタップすれば公開完了です。下書き保存して後から投稿することもできます。

アカウントを育てるためには、自分のペースで投稿を継続することが大切です。また、ユーザーのアクティブ時間を意識して投稿すれば、より多くの視聴者にリーチできます。
4. ユニークなツールや機能を活用する
TikTokは、動画をより魅力的に演出するための機能を備えており、シンプルな動画も印象的なコンテンツに変えることができます。ブランディングに影響しない範囲でエフェクトなどを使って目をひくコンテンツを作りましょう。
主な機能は以下の通りです。
- デュエット:他の動画と並べて、自分の動画を同時に録画する機能。
- リミックス:他の動画の一部を自分の動画とつなげる機能。
- 商用音楽ライブラリ:TikTok for Businessで利用でき、商用利用可能な音源を見つけられる。
- フィルター:色味やトーンを調整して、動画の雰囲気を演出する機能。
- エフェクト:動画に特殊効果を追加する機能。
- ステッカー:テキストや画像風のスタンプを動画に追加する機能。
-
テキスト読み上げ:入力した文字を自動音声で読み上げる機能。



5. TikTok Shopで販売する
TikTok Shopは、TikTok上で企業がユーザーに直接商品を販売できるソーシャルコマースの仕組みです。TikTokを活用して売り上げアップをめざしたい企業は、TikTok Shopを販売チャネルの一つとして取り入れてみましょう。
ビジネスアカウントで利用できるTikTok Shopには、ショップタブやショッピングができる動画、広告内の商品リンクなどの機能があります。ユーザーがアプリ内で購入まで完結できる利便性の高さとTikTokの拡散性の高さが組み合わさることで、TikTok売れのような大きな効果が期待できます。
また、広告とオーガニックコンテンツを組み合わせることで、新しい顧客層に効率的にリーチできるのも特徴です。

TikTok動画作成のベストプラクティス
1. TikTok Studioでコンテンツを分析する
TikTok Studioを使うと、コンテンツへのユーザーの反応を確認・分析できます。まずはこれらのデータを活用して人気の動画の傾向をつかみ、投稿のテーマやタイミングを効果的に最適化しましょう。
確認できるデータには以下のようなものがあります。
- 投稿の視聴数:動画の視聴回数
- プロフィールの視聴数:ユーザーがあなたのTikTokプロフィールを訪れた回数
- いいね:コンテンツが獲得した「いいね」の数
- コンテンツ:人気急上昇中のコンテンツ
- 合計視聴数:すべての動画の総視聴数
- 視聴者:年齢、性別、場所など
- アクティブな時間:視聴者がアクティブな時間
2. 流行りのフォーマットや音楽を選ぶ
TikTokでは、トレンドのフォーマットや人気の音源を使うことで、視聴者に受け入れられやすく、最後まで見てもらえる可能性が高まります。また、ゼロからアイデアを考えるよりも制作を効率化できるため、継続的な投稿を行う上でも効果的です。
ただし、ブランドイメージや商品の雰囲気に合うものを選ぶことが重要です。トレンドを押さえつつ、自社に合った形で取り入れることで、自然にターゲットへ訴求できます。
3. 動画の長さを最適化する
TikTokでは短くインパクトのある動画が好まれます。目安は15〜30秒程度ですが、ブランドや動画の内容によってはさらに短い方が良い場合もあります。長めの動画を試す場合は、最初の数秒で視聴者を引き込めるよう工夫しましょう。
4. 動画の質を向上させる
TikTokは他のSNSよりもラフな雰囲気がありますが、企業が活用する場合は画質や音質のクオリティも重要です。TikTokで上位表示される動画の解像度は720p以上が多いことからも、動画の最適化は重要なポイントの一つです。以下のポイントを押さえて動画を作成しましょう。
- 9:16のアスペクト比にする
- 1280×720ピクセルの画素数にする
- 30~60fpsのフレームレートにする
鮮明な映像、クリアな音声、適切な照明などを意識することで、動画の信頼性や見やすさが大きく向上します。
5. 編集ツールを活用する
エフェクトやフィルター、テキストなどの動画編集機能を効果的に使うことで、商品紹介やビジネスの舞台裏の発信も、視覚的に魅力的なコンテンツに変えられます。必要に応じて動画編集ソフトも活用すれば、さらに高度な編集も可能です。
TikTokを企業が活用するためのヒント
1. コミュニティを構築する
コメントやタグ付けへの反応、UGC(ユーザー生成コンテンツ)へのリアクションを欠かさず行うなどフォロワーと積極的に交流するようにして、アカウントやブランドへの信頼を獲得しコミュニティを構築しましょう。
コミュニティができることで投稿にも反応してもらいやすくなり、さらなる拡散につなげることができます。
コミュニティを構築するための主なポイントは以下の通りです。
- コメント返信の目安時間(例:24〜48時間以内)を決める。
- 「@メンション」「ブランド名」「#ブランド名」などでコンテンツを検索して、再投稿やお礼コメントをする。
- ライブ配信でQ&Aを実施し、一度に多くのフォロワーと対話する。
たとえば、キムチの家@佐渡ヶ島は、コメントへの返信動画を作成することで視聴者との関係を強化しています。
2. 他ブランドとコラボレーションする
他のブランドアカウントと組んで共同マーケティングを行うことで、新しいユーザー層へコンテンツを届けられます。特に、競合はしないものの顧客の関心やライフスタイルが重なるブランドと協力すれば、双方にとって有効な施策になります。
主なポイントは以下の通りです。
- コラボ先を選ぶ際は、想定する顧客が似ているかどうか、ブランドの価値観が一致しているか、そしてコラボを行う必然性があるかを基準に評価する。
- 共同ライブ、共通ハッシュタグ、限定コラボ商品のお披露目など、コラボコンテンツのスタイルを決める。
- 投稿フォーマットや権利処理(二次利用・音源・クリップ素材)を事前に決めておく。
- 問い合わせ導線や在庫連携、カスタマー対応の役割分担を明確にしておく。
たとえば、BOTANIST(ボタニスト)は世界観や価値観の近いジョンマスターオーガニックとコラボし、同ブランド監修フレグランスを採用した限定製品をTikTokで紹介しています。
3. チャレンジやトレンドを活用する
TikTokチャレンジとは、共通のテーマや動作をユーザーが真似して投稿し合う参加型コンテンツです。多くの人が同じフォーマットで動画を投稿することで拡散力が高まり、短期間で大きな話題を生みやすいため、TikTokで注目を集める有効な方法の一つです。
ただし、インパクトを重視するあまりブランドの世界観から外れてしまったり、フォロワーの期待を裏切る内容になったりすると逆効果になるリスクもあります。
独自のチャレンジを作って参加を促す場合は、ブランドガイドラインやターゲットの嗜好に合わせたものにすることが大切です。トレンドの投稿にのる場合も、ブランドに合ったものか、炎上のリスクはないかなどを検討するようにしましょう。
チャレンジを作る場合の主なポイントは以下の通りです。
- ハッシュタグは短く覚えやすくし、参加例を3本ほど用意して投稿のハードルを下げる。
- 期間とゴール(動画本数、保存、シェア、プロフィール遷移など)を明確にする。
- 一般ユーザーによる参加投稿のため、二次利用可否を明示する。
- 危険行為や差別的表現の禁止など、炎上予防のガイドを添える。
たとえば、ローソンは人気商品のLチキを用いた「#いつでもLチキチャレンジ」を展開しました。Lチキにまつわるオリジナル曲を配信し、ユーザーによる投稿作成を促しました。
4. インフルエンサーと提携する
フォロワー層が近いインフルエンサーと組むと、信頼感を保ったままブランド認知を広げられます。必ずしもフォロワーが多いインフルエンサーと組む必要はなく、地域やニッチに強いマイクロインフルエンサーも有効です。
主なポイントは以下の通りです。
- 新規フォロワー増加やECサイトへの流入増などの目的とKPI(重要業績評価指標)を先に決める。
- コラボ候補はフォロワー数だけでなく、直近の平均再生やエンゲージメント、コメントの質、PRとの相性で評価する。
- コンテンツ内での表現はコラボ相手のスタイルを尊重し、指示はいくつかの重要な点に絞る。
- 製作するコンテンツの本数や長さ、掲載期限、権利範囲などを明確にして契約する。
- コラボによる成果を測定できるよう、専用クーポン配布やアフィリエイトリンクなどで可視化する。
- ステマにならないようにPRであることを明言してもらうようにする。
たとえば、コカ・コーラは料理動画で人気のTikTokクリエイターであるバヤシさんとタイアップし、PR動画を制作しています。バヤシさんの「食欲をそそる調理映像」にコカ・コーラを自然に組み合わせることで、従来の広告感を抑え、普段の投稿と同じ感覚で楽しめるコンテンツになっています。
企業のTikTok活用の成功事例
LOWYA

家具・インテリアを販売するLOWYA(ロウヤ)は、TikTokを活用して商品紹介や部屋づくりのアイデアを発信しています。
スタッフが家具の特徴をわかりやすく解説するなど、視聴者にとって役立つ情報を提供することで、ブランドへの信頼感を高めています。
さらに「おもしろ家具」「バズ家具集」「ルームツアー」など、動画テーマごとにプレイリストを用意していて、ユーザーが関心のあるコンテンツを見つけやすいよう工夫しています。
アカウント詳細:
- フォロワー数:42万人
- 総いいね数:714万
- 人気の動画:587万再生
ドミノ・ピザ

宅配ピザ大手のドミノ・ピザは、TikTokで調理の裏側を見せる動画や、音源の“空耳”をピザに絡めたユーモアのある投稿で注目を集めています。さらに、ユーザーから寄せられた投稿や反応をもとに、新メニューや期間限定商品の開発にも取り組んでいます。
人気商品の再販キャンペーンでは、100万人以上のフォロワーを持つ人気TikTokerを起用しました。インフルエンサーの持ち味を活かしたコンテンツ作りに徹したことで、ユーザーが自然に受け入れられるPR動画を実現しました。
アカウント詳細:
- フォロワー数:43万人
- 総いいね数:1287万
- 人気の動画:856万再生
丸亀製麺

うどんチェーン店の丸亀製麺は公式TikTokアカウントで、お店でリクエストできる裏技オーダーや、トッピングによるアレンジメニュー紹介などの動画を発信しています。動画の説明欄で「やってみたい方はコメントで教えてください」と視聴者のコメントを促すなど、ユーザーの反応を引き出す工夫も行っています。
これらの投稿は「実際にお店で試してみたい」と視聴者に思わせる効果があり、TikTokでのエンゲージメントを高めるだけでなく、実店舗での売り上げにつなげています。
アカウント詳細:
- フォロワー数:6万人
- 総いいね数:77万
- 人気の動画:61万再生
ユニクロ

ユニクロはTikTokで、セール情報や新商品のラインナップ、着こなし提案などを発信しています。さらに、自社アカウントの投稿にとどまらず、一般ユーザーやクリエイターが投稿した着こなし動画を再投稿し、ユーザーのリアルな声を積極的に取り入れています。
こういったソーシャルプルーフの活用で、商品がTikTokを始めとするSNS上でバズるケースも発生しています。
アカウント詳細:
- フォロワー数:53万人
- 総いいね数:570万
- 人気の動画:115万再生
三和交通

首都圏を中心に展開する三和交通株式会社は、TikTok公式アカウントでクスっと笑える動画を発信しています。特に注目を集めたのは、取締役部長と渉外課長代理が一緒に踊るダンス動画です。コミカルで親しみやすい内容が話題となり、中には再生回数4,000万回を突破する動画も生まれました。
特徴的なのは、発信内容がタクシー事業そのものに直結していない点です。あえて事業とは関係のないエンタメ要素に特化することで、企業の親しみやすさを前面に打ち出し、知名度を高めることに成功しています。
さらに、TikTokでの注目度は採用活動にも効果を発揮し、応募数の増加や採用コスト削減につながっています。
アカウント詳細:
- フォロワー数:42万人
- 総いいね数:1300万
- 人気の動画:4000万再生
まとめ
企業がTikTokを活用する最大の利点は、事業やブランドの知名度を大きく高められる点にあります。短尺動画ならではの拡散力により、これまで接点の少なかった若年層や新しい顧客層にも情報を届けられます。さらに、アルゴリズムがユーザーの興味関心に応じて動画を配信するため、限られた予算でも効率的に訴求できます。
こうして得られた知名度は、そのままビジネスの成果へと結びつきます。商品やサービスが話題になれば売り上げの向上につながり、採用活動では応募数の増加やコスト削減を実現できます。また、フォロワーや視聴者とのやり取りを通じてファン層が育ち、長期的には顧客からの信頼やブランド支持の強化へと発展します。
企業にとって欠かせないチャネルの一つとなってきているTikTokをうまく活用し、持続的な成長をめざしましょう。
企業のTikTok活用に関するよくある質問
TikTokとは?
TikTok(ティックトック)は、短尺動画を投稿・視聴できるSNSプラットフォームです。数秒から1分程度の動画を気軽に作成でき、音楽やエフェクト、テキストを組み合わせて自由に表現できます。
企業はTikTokを活用すべき?
企業もTikTokを活用すべきです。TikTokは若い世代を中心に世界中で支持され、エンタメにとどまらず、情報収集や商品発見の場としても利用されています。その拡散力を活かせば、新しい顧客層への認知拡大やファンとの関係構築に直結し、企業にとって有力なマーケティング手段となります。
初心者がTikTokをビジネスに活用するには?
初心者がTikTokをビジネスに活用するなら、以下のステップに沿って取り組むとスムーズです。
- TikTokのトレンドを理解する:おすすめ動画や探すタブを見て、人気の傾向を把握する。
- ユーザーと交流する:コメントや「いいね」で交流し、フォロワーを増やす。
- 動画を作成する:短くわかりやすく、事業やブランドらしさが伝わる内容を投稿する。
- 機能を活用する:音源・エフェクト・ステッカーなどで動画を演出する。
- 販売する:TikTok Shopで商品を直接販売する。
TikTok動画作成のベストプラクティスは?
TikTokを効率的に運用するためには、以下のポイントを意識しましょう。
- TikTok Studioでコンテンツを分析する:視聴数やエンゲージメントを確認し、成果が出やすい動画を把握する。
- 流行りのフォーマットや音楽を選ぶ:視聴者の関心やトレンドに沿ったテーマを取り入れる。
- 動画の長さを最適化する:短くインパクトのある内容を意識し、最後まで見てもらえる構成にする。
- 動画の質を高める:映像や音声をクリアにし、照明や安定した撮影を心がける。
- 編集機能を活用する:音源やエフェクト、ステッカーなどを取り入れ、目を引く工夫をする。
TikTokを企業が活用するコツは?
- コミュニティを構築する:コメントやタグ付けへの返信、UGCへのリアクションやライブ配信で距離を縮める。
- 他ブランドとコラボする:競合しないが顧客層が近いブランドと組み、新しいユーザーにリーチする。
- チャレンジやトレンドを活用する:ハッシュタグや人気フォーマットを取り入れ、拡散力を高めつつブランドらしさを守る。
- インフルエンサーと提携する:フォロワー層が近いインフルエンサーと協力し、自然な形で認知を拡大する。
企業のTikTok活用の成功事例はある?
以下の企業などがTikTokの活用に成功しています。
- LOWYA
- ドミノ・ピザ
- 丸亀製麺
- ユニクロ
- 三和交通
文:Hisato Zukeran





