ダイレクトマーケティングとは、商品やサービスなどを販売するためのマーケティング戦略の一つです。メールや電話、SNSなどのマーケティングチャネルを活用し、顧客一人ひとりに直接アプローチすることを目的としています。
この記事では、ダイレクトマーケティングの定義や手法、他のマーケティング手法との違い、メリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。さらに、実際にダイレクトマーケティングを活用して成果を上げた企業の事例も紹介します。自社のネットショップで効果的に顧客へアプローチするためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
ダイレクトマーケティングとは?

ダイレクトマーケティングは、メールや電話、SNSなどを活用し、顧客と直接コミュニケーションを取りながら商品やサービスの販売につなげるマーケティング手法です。一人ひとりの顧客に合わせたメッセージを届けることで、購買意欲を高め、潜在顧客には適したアプローチを行うことができます。
ダイレクトマーケティングの種類

ダイレクトレスポンスマーケティング
ダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)は、企業が発信した情報や広告に対して反応(レスポンス)を示した見込み顧客にアプローチし、商品やサービスの販売につなげるマーケティング手法です。新規顧客の獲得に効果的で、興味を持った顧客にアプローチするため、成約率が高いのが特徴です。
たとえば、スキンケアブランドでは、無料サンプルを請求する際にメールアドレスを登録してもらい、後日フォローアップメールで現品購入の割引クーポンを配信します。その際、関連商品の案内を合わせて行うことで、クロスセルにつなげることも可能です。
ダイレクトコンテンツマーケティング
ダイレクトコンテンツマーケティングとは、潜在顧客が関心を持つテーマに沿ったコンテンツを発信し、商品やサービスの購入へとつなげるマーケティング手法です。不特定多数に向けて情報を発信するのではなく、興味・関心を持つ顧客層を明確にターゲティングしてコンテンツを提供するため、高いコンバージョン率が期待できます。
たとえば、ターゲット層が抱える悩みや疑問など、「知りたい情報」に関連するキーワードでSEO記事を作成し、記事内から購入ページや商品紹介ページへ自然に誘導する導線を設計します。
ダイレクトマーケティングと他のマーケティング手法との違い

マスマーケティング
マスマーケティングは、テレビや新聞、雑誌などのマスメディアを通して、不特定多数の顧客層に一斉にアプローチする手法です。主にブランドや商品の認知拡大を目的としており、短期間で広範囲に情報を届けられる点が強みです。
一方で、ダイレクトマーケティングは顧客データや行動履歴をもとに、見込み顧客に合わせた方法でアプローチします。そのため、高い反応率や成約率を期待できるのが大きな違いです。
クロスマーケティング
クロスマーケティングは、複数のマーケティング手法を組み合わせて行う手法です。
たとえば、マスマーケティングで不特定多数の顧客にアプローチし、商品やブランドの認知を広げたうえで、反応を示した顧客に対してダイレクトマーケティングを活用します。これにより、個々のニーズに合わせた提案が可能になります。
バズマーケティング
バズマーケティングは、商品やサービスに関する口コミや話題をSNS上で拡散させ、短期間で認知度を高めることを目的とした手法です。主にXやInstagram(インスタグラム)、TikTok(ティックトック)などのSNSを活用し、ユーザー間でバズることを狙います。
他のマーケティング手法と比べて広告費を抑えやすく、拡散力が高いのが特徴ですが、近年は多くのブランドが同様の手法を取り入れているため、目を引く切り口や独自性、新しさが求められます。
ダイレクトマーケティングの5つの手法

1. ダイレクトメールマーケティング
ダイレクトメールマーケティングは、チラシやハガキなどを潜在顧客に直接送付し、商品の購入やサービス利用につなげる手法です。主に、新商品・新サービスの案内、セールやキャンペーンの告知、イベントの招待などに活用されます。
また、情報を送付するだけでなく、QRコードで詳細ページに誘導したり、LINE公式アカウントへの友だち追加につなげたりすることで、どの程度の潜在顧客が興味を示しているかを可視化することも可能です。
2. テレマーケティング
テレマーケティングは、電話で潜在顧客に連絡し、商品やサービスの販売・案内を行う手法です。直接的なコミュニケーションが可能なため、即時の反応やフィードバックを得やすく、顧客とのエンゲージメントを高める有効な手段とされています。
コールドコール
コールドコールは、企業が保有する潜在顧客リストに対して、事前の接触なしで電話をかけるアプローチを指します。面識がない相手へのアプローチのためハードルはありますが、うまく実施すれば短期間で多くの見込み顧客にリーチでき、新たな顧客を獲得できる可能性があります。
SMS
SMSマーケティングは、企業が顧客の携帯電話番号宛にテキストメッセージを送り、商品情報やキャンペーンを案内するマーケティング手法です。メッセージアプリを介さず直接届くため、開封率・反応率が高く、再注目されています。
3. メールマーケティング
メールマーケティング戦略は、既存顧客や潜在顧客に対して、お得な情報や最新のお知らせ、特別オファー、プロモーションコードなどをメールで配信する手法です。顧客セグメントごとに最適な内容のメールを送ることで、開封率やクリック率、購買率の向上につなげることができます。
たとえば、既存顧客には新商品の情報やアップセルの提案を、潜在顧客には商品の使い方や愛用者の声といった信頼性の高い情報を届けると効果的です。ただし、配信回数が多すぎると負担に感じられる可能性があるため、適切な配信頻度の設定が重要です。
4. SNSマーケティング
SNSマーケティングは、TikTokやFacebook(フェイスブック)、Instagramなどのソーシャルメディアプラットフォームを活用し、潜在顧客となるユーザーにアプローチする手法です。アカウント運用では、ブランドの方向性を明確にし、ユーザーが求める有益な情報や共感を得られるコンテンツを発信することが重要です。また、Instagram広告やTikTok広告、Facebook広告などのSNS広告は、リターゲティング広告としても高い効果を発揮します。
さらに、SNS広告やキャンペーン施策、インフルエンサーとのタイアップなどを組み合わせることで、より高い効果が期待できます。SNSはプラットフォームごとにユーザー層が異なるため、ターゲット顧客が多い媒体を中心に活用することがポイントです。たとえば、TikTokは10〜20代のZ世代を含む若年層が中心で、Instagramは幅広い年齢層にリーチできる傾向にあります。
5. LINEマーケティング
LINEマーケティングは、LINE公式アカウント(LINEのビジネスアカウント)を活用し、商品やサービスの情報配信、キャンペーンの告知などを通じてブランド認知や購買促進を図る手法です。
LINEは日本国内で70%以上のユーザーがアクティブで、さらに約80%のユーザーが通知を受けた当日にメッセージを開封する傾向があります。そのため、配信情報を高確率で見てもらえるのが大きな強みです。
また、ワンクリックで友だち追加が可能なため、潜在顧客にとって手間がかからず、ブランド側も接点をスムーズに持つことができます。さらに、業種や目的に合わせて、画像・動画配信、予約機能、リーチ機能、CRM機能など多彩なマーケティングツールを活用できる点も特徴です。
ダイレクトマーケティングのメリット

- 顧客ごとの提案:受取人に合わせた個別メッセージの配信によるエンゲージメントや応答率の向上
- 費用対効果:特定の潜在顧客への効率的なアプローチによる、無駄のないリソース活用
- 高いROI:関心を持つ顧客への販売促進による、高い投資収益率の実現
- 測定可能:キャンペーンごとの反応データ分析による、継続的な改善
- レスポンスの数値化:開封率・クリック率・購入率などの可視化による、効果の明確化とPDCAの効率化
ダイレクトマーケティングのデメリット

- 初期投資の発生:市場調査、マーケティング資料のデザイン、配布コストなど、キャンペーン作成に必要な初期投資コストの増加
- ソーシャルプルーフの欠如:一対一のコミュニケーションによる、レビューや推薦などの社会的証明の不足
- 効果の遅延:不特定多数のユーザーへの認知拡大に不向きで即効性に欠ける
ダイレクトマーケティングの成功事例

Amazon
通販業界最大手のAmazon(アマゾン)は、自社が保有する膨大なビッグデータを活用し、顧客ごとに最適化されたマーケティング施策を展開しているのが特徴です。
Amazonが実施している主なダイレクトマーケティング施策は次の3つです。
- メールによる案内の配信:ユーザーの購入履歴や閲覧履歴をもとに商品提案やセール・キャンペーン情報を不定期に配信
- 会員限定イベント・セールの開催:Amazonプライム会員向け「プライムデー」など、限定セールで顧客ロイヤルティを向上
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関連商品・購入履歴に基づくおすすめ表示:商品ページやトップページにパーソナライズされたおすすめ商品を提案。興味・関心に基づく表示による、購買意欲の刺激とクロスセル・アップセルの促進
Amazonは、顧客データの分析をもとに最適な商品を提案し、継続的な購入体験を提供することで、高い成果を上げています。
freee株式会社
クラウド型会計ソフトfreee会計は、上場企業の約3分の1が利用しているにもかかわらず、中小企業向けのイメージが強かったため、上場企業の経理部員に向けたダイレクトマーケティング施策を実施しました。
決算業務を終えた経理担当者へのねぎらいを込めて、テンキー型のチロルチョコを詰めた箱型DMを送付し、箱の底には「お仕事の合間にフリーなひとときを過ごせましたか」というメッセージを添え、印象に残る体験を演出しました。
また、同梱した冊子にはfreeeを導入している上場企業のロゴを掲載し、信頼性と利用実績を視覚的に訴求しています。
その結果、担当者への接続率は通常の5倍以上、DM認知率は50%を超える成果を達成しています。「チョコを送りました」という一言が会話のきっかけとなり、スムーズなヒアリングにつながるなど、印象に残るブランド体験によって認知拡大に成功しました。
株式会社DHC
化粧品やサプリメントで有名な株式会社DHCは、無料サンプルや試供品の提供を入り口としたダイレクトマーケティングを展開しています。実際に商品を試してもらうことで、購入への心理的ハードルを下げる効果があります。
さらに、無料サンプル提供時に取得した顧客情報を活用し、ダイレクトメールマーケティングやメールマーケティングを通じて、新規購入や継続・定期購入へとつなげる仕組みを構築しており、これにより売上拡大を実現しています。
まとめ
ダイレクトマーケティングは、無差別に行うのではなく、潜在顧客一人ひとりに適した方法でアプローチするマーケティング手法です。顧客の興味・関心・行動データをもとにパーソナライズされた提案を行うことで、高い反応率や成約率を実現できます。さらに、メールやLINE、SNSなど複数のチャネルを組み合わせて運用することで、顧客との長期的な関係を築くことも可能です。
企業規模に関わらず、顧客と直接つながるダイレクトマーケティングは、今後ますます重要な役割を果たしていくでしょう。
ダイレクトマーケティングに関するよくある質問
ダイレクトマーケティングの対義語は?
ダイレクトマーケティングの対義語はマスマーケティングです。顧客一人ひとりに合わせてアプローチするダイレクトマーケティングに対し、マスマーケティングはテレビや雑誌などのマスメディアを利用し、不特定多数の顧客に向けて認知拡大や販売促進を行います。
ダイレクトマーケティングが成功している身近な企業の事例は?
ダイレクトマーケティングが成功している身近な企業の事例は、Amazonやfreee株式会社、株式会社DHCなどです。
初期投資が少ないダイレクトマーケティングは?
初期投資が少ないダイレクトマーケティングは、メールマーケティング、SMSマーケティング、SNSマーケティング、LINEマーケティングなどです。
ダイレクトマーケティングの目的は?
ダイレクトマーケティングの目的は、ターゲット顧客層からの問い合わせや資料請求、購入など、特定の反応を得ることです。特に小規模ビジネスにとっては、限られたリソースを最も効果的に活用する手段として有効です。
文:Momo Hidaka





