EC事業を成長させるには、適切なECツールの活用が欠かせません。これらのツールは、サイトの構築から分析、在庫管理、マーケティング、注文フルフィルメントまで幅広く活用でき、日々の業務を効率化して売り上げの成長を後押しします。
本記事では、EC事業に役立つツールを種類ごとに紹介します。
ECサイトの構築ツール
ECサイト構築ツールを使えば、商品ページやカート機能、決済、デザインなどを一から開発することなく、本格的なストアを立ち上げられます。ここでは、ASP型とオープンソース型のものを紹介します。
1. Shopify
Shopify(ショッピファイ)は、世界中で利用されているオールインワンのECサイト構築サービスです。豊富なデザインテーマを使ってブランドに合ったストアを簡単に作成できるほか、100種類以上の決済方法に対応し、モバイル端末でも快適に買い物ができる環境を提供します。
在庫管理や配送設定、マーケティング機能を標準で備えており、必要に応じてShopifyアプリを追加して機能を拡張できます。国内外への販売にも強く、越境ECやSNSとの連携もスムーズに行えるのが特長です。
売り上げや顧客データの分析、クーポンやポイントの発行といった機能も揃っており、EC事業の成長を一元的にサポートするプラットフォームです。
2. EC-CUBE
EC-CUBE(イーシーキューブ)はオープンソースのECプラットフォームです。日本発のオープンソースCMSで、国内向けの豊富なプラグインやサポートが充実しています。テンプレートの編集やブロック単位でのデザイン調整など、細かな部分まで自分好みに変更できるのが魅力です。
公式サイトや開発者コミュニティ、専門のパートナー企業からのサポートが充実しています。
ただし、サーバーやドメインの用意を別途行わなければならず、高度なカスタマイズなどにはプログラミングの知識や手間も必要になります。リソースやスキルに応じて計画的に活用することで、コストを抑えながら自由度の高いECサイトを構築できます。
マーケティングツール
メルマガ配信やSNS運用、SEO対策などを自動化・効率化できるMA(マーケティングオートメーション)ツールを活用すれば、限られたリソースでオンラインストアの集客や売り上げを最大化できます。
3. うちでのこづち
うちでのこづちは、eコマースに特化したCRM(顧客関係管理)ツールです。ECカートなどと連携し、様々な分析ツールの利用やCRM施策、効果検証までをワンストップで実現できます。
たとえば、購入回数や最終購入日などをトリガーにした施策オートメーション機能により、メールやLINEなどの複数チャネルを組み合わせたアプローチを自動で実行し、効率的にLTV(顧客生涯価値)を向上させられます。
施策を実行した後のKPI(重要業績評価指標)はダッシュボードでリアルタイムに確認できるため、業務改善サイクルを素早く回せるのも魅力です。
4. カスタマーリングス
カスタマーリングスは、データを起点に自動でマーケティングを最適化するMAツールです。購買履歴やウェブ閲覧履歴など、あらゆる顧客データを基盤にしたメールマーケティングやシナリオ設計が可能です。
誕生日や会員登録日といったタイミングでのメッセージ配信、キャンペーン告知、カゴ落ちフォローなどの自動化により、リピート率やLTVを向上させます。
また、データ分析テンプレートやダッシュボードを通じて顧客像を多面的に把握できるため、施策の精度を高めながら継続的な改善が可能です。
導入後はトレーニングやオンラインサポート、活用相談などの支援体制も整っており、安心して長期的に運用できる点も特徴です。
5. オムニセグメント
OmniSegment(オムニセグメント)は、顧客一人ひとりに合わせた最適なタイミングとチャネルでのアプローチを可能にするMAツールです。
20種類以上のベストプラクティスシナリオが標準搭載されており、カゴ落ちの防止や休眠顧客の掘り起こしなどを自動化できます。複数のトリガーや条件を組み合わせるなど、従来は人手が必要だった複雑なマーケティング施策を効率化できます。
さらに、顧客ごとの購買可能性を予測するオーディエンススコアや、パーソナライズした商品レコメンドなど、AIによる高度な分析機能も搭載しています。
アクセス分析ツール
アクセス分析ツールを活用することで、ECサイトを訪れたユーザーの行動や流入経路を可視化し、施策を改善できます。
6. Googleアナリティクス
Googleアナリティクスは、Googleが提供する無料のアクセス解析ツールで、多くのEC事業者に利用されています。自社サイトの顧客行動を分析し、集客や売り上げの改善に役立てられます。
従来のページ単位の分析に加え顧客単位での計測が可能で、スマートフォンで商品を探し、PCで購入に至るといったマルチデバイスの行動も一貫して把握できます。さらに、動画視聴やスクロールといった行動データを自動で取得できるため、設定の手間を大幅に省けます。
Google広告やGoogleサーチコンソールとの連携により、広告効果や検索流入を統合的に確認できるのも強みです。
7. Clarity
Clarity(クラリティ)とは、Microsoft(マイクロソフト)が無料で提供するウェブ解析ツールで、ヒートマップやユーザー行動のレコーディングを通じてサイト改善に役立つデータを提供します。
ページ上のどこがクリックされ、どこまでスクロールされたかといった情報を可視化できるため、訪問者の関心を的確に把握できます。さらに、ユーザーが実際にサイトを操作する様子を動画で確認でき、数値だけでは分からない離脱の要因を発見できます。
セッション数やデータ保存期間には制限がなく、完全に無料で利用できるのも魅力です。
8. Ahrefs

Ahrefs(エイチレフス)は、世界的に利用されているSEOマーケティング分析ツールです。Ahrefsで競合分析をすることで、他社サイトの被リンクや流入キーワード、上位ページなどを詳細に把握でき、コンテンツマーケティングや検索順位、SEO施策改善に役立ちます。
直感的に使えるインターフェースやCSV出力機能も備えており、社内外での情報共有もスムーズです。
在庫管理ツール
ECに在庫管理システムを導入することで、業務効率を上げたり、余剰在庫を減らして利益率を上げたりできます。
9. ロジクラ
ロジクラは、複数の販売チャネルを展開する事業者向けの在庫管理システムで、店舗や委託倉庫など複数拠点の在庫をリアルタイムで連携できます。
ECと実店舗の在庫も一元管理でき、過剰在庫や販売機会の損失を防止できます。また、倉庫と店舗間の在庫移動も管理可能です。
スマホと専用アプリを活用することで、どこでも手軽に利用できる点も大きな特徴です。また、専任のカスタマーサクセスチームが初期設定から運用、改善提案までサポートしてくれるため、初めての在庫管理システム導入でも安心です。
10. ネクストエンジン
ネクストエンジンはクラウド型の在庫管理ECツールで、入庫時の反映や返品による在庫変動への自動対応など、在庫管理業務を効率化できます。
5分間隔でネクストエンジンとECサイトの在庫数を連動させるため、売り切れたのに販売してしまうなどのトラブルも防げます。また、指定した在庫数を下回ると通知されるなど、機会損失リスクも減らせます。
Shopifyなど様々なシステムと連携し、アプリで機能を追加することもできます。
物流・配送ツール
出荷管理などのECツールの活用も、スムーズなサイト運営や顧客体験の向上につながります。
11. LOGILESS
LOGILESS(ロジレス)は、EC事業に不可欠な受注管理システム(OMS)と倉庫管理システム(WMS)を一体化したクラウドサービスです。EC事業者と倉庫事業者が同じシステムを利用することで、受注から出荷までの人手作業を大幅に削減し、スピーディかつ正確な出荷を実現します。
たとえば、注文データは10分ごとに自動で倉庫へ連携され、出荷指示もシステム上で完了します。全注文の90%以上を自動出荷できるため、日常の出荷オペレーションにほとんど手間がかかりません。
Shopifyをはじめとする主要ECカートとのAPI連携にも対応しているため、販売チャネルが増えても安心して運用を拡大できます。
12. eLogi
eLogi(イーロジ)は、eBay(イーベイ)セラー向けに提供されていた出荷ツールで、現在は一般公開されています。FedEx(フェデックス)のディスカウントレートを活用でき、割安で海外配送を行える点が大きな魅力です。
eLogiで注文データを入力し、箱のサイズと重さを入力すれば、ラベルやインボイスをすぐに発行できます。複数注文の同梱発送、返送ラベルの作成、再発送などもシステム上で完結し、出荷作業を効率化できます。
さらに、eLogiユーザー向けにフルフィルメントサービスのLogihouse(ロジハウス)も提供されています。商品保管から出荷代行までを一括で任せられるため、事業者は物流の手間を省けます。
カスタマーサービス
ECサイトにカスタマーサービスツールを導入することで、迅速なサポート体制を築き、顧客満足度を高められます。
13. Zendesk
Zendesk(ゼンデスク)は、複数チャネルからの問い合わせを一元管理できる、統合型カスタマーサービスツールです。問い合わせをチケットとして管理する仕組みで、抜け漏れのない効率的なサポート体制を整えられます。
FAQページやヘルプセンターを簡単に構築できるため、顧客が自ら問題を解決できる仕組みを整備でき、問い合わせ数も削減できます。さらに、チャットボット機能を利用すれば、対応スピードを高めつつ担当者の負荷を軽減できます。
レポート・分析機能もあるため、顧客満足度や担当者の生産性を可視化して、サポート品質の向上も図れます。
14. メールディーラー
メールディーラーは、チーム全体のメール対応状況を見える化し、返信漏れや二重対応を防ぐECツールです。
メールアドレスやサーバーをそのまま使えるため、導入に大きな手間がかかりません。また、テンプレートやQA機能を活用することで、個人スキルに依存しない安定した顧客対応を実現できます。
さらに、AIエージェント機能により、メール内容をもとに適切な返信文を自動生成できます。メール作成時間を大幅に削減し、経験の浅い担当者でも自然で適切なメールを効率的に作成できます。
コンテンツ作成ツール
テキストや画像、動画を簡単に整えられるツールを導入することで、質の高いコンテンツを作成して集客や購買につなげられます。
15. Canva
Canva(キャンバ)は、初心者でも直感的に扱えるオンラインデザインツールです。豊富に用意されたテンプレートを活用すれば、商品画像や広告バナー、SNSマーケティング用素材を簡単に作成できます。
操作はドラッグ&ドロップ中心で、特別なデザインスキルがなくても短時間でプロ品質のビジュアルを制作可能です。チームでの共同編集やクラウド保存機能も備わっているため、複数人での制作・修正作業がスムーズに進みます。
16. WordPress
WordPress(ワードプレス)は世界的に利用されているCMS(コンテンツ管理システム)で、専門知識がなくても記事やブログを簡単につくれます。
プラグインによる機能拡張やデザインの柔軟性も高く、ECサイトとあわせて導入すれば、長期的な顧客育成と売り上げの安定化に貢献します。
ブログコンテンツを作成することで、商品ページだけでは伝えきれないストーリーを発信できます。さらに、役立つ情報を継続的に提供することで、既存顧客のロイヤルティを高め、リピート購入も促進できます。
17. Vrew
Vrew(ブリュー)は動画編集ソフトで、自動文字起こし機能を備えたコンテンツ作成ツールです。動画をアップロードするだけでAIが自動で字幕を作成してくれます。
商品紹介や使い方を説明する動画に字幕を入れる作業を効率化できるため、専門知識がなくても短時間で見やすいコンテンツを制作できます。
動画マーケティングに取り組む企業にとって、TikTok動画やInstagram動画など、短尺でインパクトのある映像を手軽に完成させられるのは大きな魅力です。
コミュニケーションと組織運営ツール
社内の情報共有やタスク管理を効率化するツールを導入すれば、リモートワークや複数部署をまたぐ業務でもスムーズに進められます。
18. Slack
Slack(スラック)は、国内外で広く利用されるビジネスチャットツールです。部署や案件ごとに「チャンネル」を分けて会話を整理できるため、メールのように情報が埋もれる心配がありません。
過去のやり取りや共有ファイルも検索しやすく、プロジェクトの途中参加者もスムーズにキャッチアップできます。日々の情報共有からタスクの進行管理まで、EC事業のチーム運営を効率化してくれるツールです。
19. Backlog
Backlog(バックログ)は、日本の企業が提供するプロジェクト管理ツールです。直感的に操作できるインターフェースと、日本語でのサポート体制が整っています。
ECサイト運営では、商品ページ制作やキャンペーン準備、在庫や物流に関わる調整など、複数のタスクが並行して進みます。Backlogを使えば、ガントチャートやカンバンボードで進捗を可視化し、優先順位を整理できます。
また、タスクを小さな単位に分割して担当者を割り振れるため、効率的に業務を進められます。
まとめ
ECツールは、事業を成功に導くために欠かせない存在です。単にECサイトの作り方を学ぶだけでなく、ECツールについても理解し効果的に活用することで、在庫管理や出荷業務の効率化、マーケティング活動の自動化、顧客サポートの向上が実現できます。その結果、売り上げ拡大や顧客満足度の向上につながり、競争力のあるEC運営が可能となります。
また、Shopifyのように複数のECツールや外部サービスと連携できるプラットフォームを利用すれば、EC事業にまつわる業務全体を最適化できます。
ECツールに関するよくある質問
ECツールはどのような場面で役立つ?
- ECサイトの構築
- コンテンツ作成
- コミュニケーションと組織運営
- 配送と物流
- マーケティング
- アクセス分析
- カスタマーサービス
ECサイト構築ツールとは?
ECサイト構築ツールとは、オンラインで商品を販売するために必要な仕組みをまとめて提供してくれるツールです。商品ページやショッピングカート、問い合わせフォームなどの基本機能が揃っています。
ECサイト分析ツールとは?
ECサイト分析ツールとは、サイトを訪れるユーザーの行動や成果を数値化し、改善のヒントを与えてくれるツールです。どのページがよく見られているか、どの流入経路から売り上げにつながっているかなどの情報を可視化することで、課題を発見・改善できます。
ECサイトのMAツールとは?
ECサイトのMAツールとは、顧客との接点から購入に至るまでのマーケティングプロセスを自動化し、効率化するツールです。メールやLINEなど複数のチャネルを活用し、顧客一人ひとりに合わせたアプローチを行うことで、売り上げの安定化とLTVの最大化を実現します。
ECツールを導入するコツは?
ECツールを導入する際は、自社の課題や成長段階に応じて必要なツールを選定し、段階的に導入するのがコツです。
文:Hisato Zukeran





